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恋刻ノ御伽草子  作者: 逢葵 秋琉
7/9

静まる校舎に、暗躍する校長。

「なあ、静か過ぎないか?」


 靴を上履きに履き替えて、隣で同じように履き替える侑奈に話し掛けるのは空。


 空は、校舎に入ってすぐに違和感を(おぼ)えたのか。眉間に(しわ)()せて気難しそうな顔をしながら、侑奈はどう感じてるのか。或いは違和感を憶えたか。を知るために聞く。


「そう?空の気のせいじゃない。....あ、ちょっと後ろ向いてくれる?」


 空の問いに、首傾げて意識を周りに集中させるが日頃から煩いとか静か。だとか気にもしてなかったからか、何時もはどんな感じだったか侑奈には分からなかった。


 云われてみたらちょっと静かだとは思うも、違和感はない。寧ろ、(いぶか)しげな空の方が気にはなるが、同意したりしたら余計に仏頂面(ぶっちょうづら)になると感じて気のせいだ。と()げる。


 しかし、鈍感な空が色々勘繰って。否、何か考えているような様子が見られたので、嫌な予感がした。


 空が空じゃなくなる。そんな気分に。そんな錯覚になる。


 だから、念の為に。と持ってきた記憶を維持するネックレスを空の首に掛けようと思い立ってそう口にする。


「気のせい、か。....あ、何でだよ?」


 侑奈の言葉を噛み締めるように云う空は、仏頂面から浮かない顔をしていたが、唐突に後ろ向けと云われて再び仏頂面。


 否、訝しげな顔をして聞き返すも、一応侑奈に背を向ける。


「でっかい虫が居たから、ちょっと取ってやろうと思って......良いから前向く!」


 頭を動かして横目で自分を見てくる空に、空気読めや。と言わんばかりにきつく睨みつけてぷんすか。と逆ギレではないがきつめの口調で云い、さっと空の首にネックレスを掛けた。


 シルバーネックレス。付いてるものは棒状の水晶。両先端が六角形になっているものだ。


 水晶の中には記憶を維持、その人の人格を守ってくれる能力【守巫(しゅふ)】が込められている。


 侑奈は、掛け終わった後。居もしない虫を思いっきり叩き落とすように背をばしんっと叩く。


 何となくネックレスを掛けた。なんて気付かれたくなかった。断られた、拒否られた手前(てまえ)だから、かもしれない。


「いって! おま、お前......」


 (李紅と同じ事すんのか。)と思いっきり叩かれた背に手を回して(さす)りつつもこれで二回目になると流石に云う気力がなくなる。


 首に掛けられたネックレスには、侑奈の思惑通りに気付いてないようだった。


「これぐらい痛くないでしょ。虫、殺してあげたんだから別に良いじゃんっ」


 空が痛そうに背中を擦っているのが目に入る。


 もう少し加減したら良かったかも。と強く叩いた事に対して悪気がしたのか侑奈は、罰の悪そうにそっぽを向きながらそう云い(つら)ねて、空が此方を見ても大丈夫なように居もしない虫が手に付いたから払うように両手を叩いた。


「分かった、悪い。教室行くぞ」


 手を叩く音にもう向き直っても大丈夫だろう。と侑奈が居る方に向き直って、肩を(すく)めると痛かったのは事実でも声に出してしまったことに詫びを入れれば教室へ向かう。


「空の馬鹿......」


 ぽつりと空に聞こえないように空との距離がある程度離れた所で呟く。


 (悪いじゃなくありがとうって何で云えないの、かな)


 悶々とした思考で、心の中で云いつつも空の姿が見えなくなる前に少し小走りで空の隣に来て一緒に教室へ向かった。


 教室へ続く廊下に来て静か過ぎないか?と聞いたのが、侑奈は分かった。


 自分たちが行く教室はまだどうか分からないが他の教室を覗いて見れば、まだ来ていない生徒を除いた生徒全員が安らかに寝ている。


「どの教室も、寝ているな」

瞑想(めいそう)にしては不自然ね、死んでたりしないよね?」


 瞑想する時間は、確かにこの学園にはあった。


 しかし、中には席に着かず床で寝ている生徒も居る為にそう断言出来ずに何か可笑しい。と得体の知れない恐怖のようなものが込み上げてくる。


 一人じゃなくて良かった。と侑奈は思うも、あまりにも動く様子がない生徒達を見て思わず聞いてしまう。


「縁起でもないことを云うな。寝息は(かす)かに聞こえるんだ、生きてるから安心しろ」


 侑奈の思いもしない言葉に面を食らう空は、間を空けてから切り返す。死んではいない。ただ皆が皆寝ているとなると違和感は拭えない。


 今は、とりあえず教室へ行こう。と他の教室で立ち止まっていた空は、一緒に立ち止まっていた侑奈の手。正しくは手首を掴んで足早に歩き出す。


 千早と李紅が、気がかりだ。同じように寝ているのだろうか。彼奴(あいつ)らはこの違和感に気付いてるのか。


 寝ているだけなのだから、無事なのだろうがそれだけじゃない。建物と云い、着物と云い、複写された人達と云い、あの夢と云い......全てがモヤモヤして(かすみ)が掛かったようにさせる。


_____守らねえと。


 もう二度と、あんな事させちゃならねえ。とくしゃり。と侑奈の手首を掴んでいる手とは反対の手で持っていた番号札を握り潰してしまう。


 沸々と込み上げてくる止めどない感情が表に出ているかのように無意識に番号札をくしゃくしゃにする、

 

「___空、空!」

「っえ、わ....悪い!」


 侑奈の何度目かの名を必死に呼ぶ声に、はっと我に返ったように意識を侑奈に戻す。そこで番号札ならず侑奈の手首まで強く握っていたのか、侑奈の目は今にも泣きそうになっていた。


 それに気付き、ばっと手首を放して焦ったように謝る。


「別にた、大して痛くなかったから別にいいけど。....少し....」

 

 放してくれたことより空が掴んだ自分の手首が痛くなったと思ったら別人だったからそれが今はなくなったため、安堵はするも、涙目を見られたくないのか空から顔を逸らして云い連ねていたが、唐突に瞼が重くなって次第に呂律が回らなくなる。


 強烈な眠気が襲ってきて意識を保つことが出来ず、崩れるように倒れ


「お、おい! 大丈夫か!?」


 咄嗟に倒れそうになる侑奈を支えるように腰に手を回し手首じゃなく手を掴んで聞く。


 返事はない。代わりに規則正しい寝息が聞こえて、ほっとする。


 否、違う。侑奈も、皆と同じように寝てしまった。皆が寝る。これは、もしかするとこの番号札が原因。


 空は徐にポケットに入れたくしゃくしゃになっている番号札を取り出す。


「......能力が付加されてんのか? でも、何で」


 ドカッ。考えていると、後ろから強烈な衝撃と痛みが首に来て、誰かに手刀を首に打たれたと空は思うが、くらくらと視界が明滅して閉ざされ気を失う。





「おやおや、駄目じゃないですか。ちゃんと寝て下さい、鴇永空君」


 上手くいった。と自画自賛する校長は、満足そうに気絶した空を見下ろす。


 中々作動しなかった番号札にイライラしたものだが、自分で手を出すのも悪くはない。とほくそ笑むのだった。

アトガキ。


 読んで頂きありがとうございます!


 侑奈ちゃんは、ツンデレです。一応。←


 ちゃんとツンデレになっているのか、分かりませんが後々、出たキャラの容姿やら何やらを地の文に書くので宜しくお願い致します!


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