世界の中の響き音
シャナリシャナリと鈴が鳴る。
下駄についている鈴の音が響く。
残酷なまでに美しく。
綺麗な化粧の裏側に見えない、見せない顔がある。
誰を求めて歩くのか。
何を見つめて歩くのか。
「美しい」と言われても
「愛している」と言われても
私の心に響かない。
「美しい」の意味も
「愛している」の意味も
私には意味がわからない。
わからないまま微笑み返す。
優しく髪を撫でられても
肩を抱き寄せられても
温もりを感じない。
シャナリシャナリと鈴が鳴る。
下駄についてる鈴の音だけが私の心に響き渡る。
誰も求めず、何も見つめず、目の前にあるものさえも。
鈴の音が聞こえなくなる時は私の命が尽きる時。
「遊女」という世界の中で。




