第5章
5 洋館
私にとって野梨子が来てからというもの毎日学校へ行くのが楽しみで、野梨子もまたわたしにしばしば話しかけてくれることが多かったのだ。
思えば私もまだ23歳になったばかりでしかもロマンティスト?だったから野梨子に対して永遠の少女像を投影してしまってもやむをえなかったことではあろう。
「先生、これ知ってる?もんちっちって言うんだよ。」とかわいいサル?の小さなぬいぐるみを見せてくれたり、「キャンディキャンディはね、丘の上の王子様といつかめぐりあえるかな」とか、
まさにたわいないといってしまえばそれまでだが、私はかわいい妹ができたかのように野梨子ばかりひいき?することとなったのだった。
そんなある日、私は宿直舎監で共同宿泊所に泊まることになった。
その日は休日で、しかし、生徒たちは残ってとまっているのだった。
午後、私が行くと、博士が「先生、しってますか?ここは、昔、避暑地としてにぎやかだったこともあるんですよ。その頃の洋館がまだあるからいってみませんか?」
確か、私も山下先生から聞いたような気がしたが、ここは某避暑地の隣接で明治大正頃から別荘なども作られていて、今はすっかり寂れてしまったが尚、いくつかの洋館が残されているということを。
「で、そこに行ってどうするんだい。」
「探検ですよ。探検。」
丁度野梨子も来て「ああ、あそこね、またいくの、博士も好きだね。わたしもいこうかな.先生もいこうよ」
というので、3人で行くことになった。
後で知ったことだがその洋館は某子爵家のもので、なんでもこの辺一体は元その人の御領地
だったのだそうだ。こんな山奥にあんなそぐわない洋館がまだあるなんてまるで夢のような体験ではあった。
だがそこで私は始めて野梨子の真の病状を知ることとなり
いいしれぬ運命の皮肉に胸張り裂ける思いになるとはその時まだ知る由もなかった
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