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最弱の戦争  作者: shin000
第一部 始まりの戦争
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第一章 出会い Beginning of The new Era 3

第一章の三部となります。

 兵士が引き金を引き、銃声が響く。


 鮮血が飛び散った。


 が、痛みはなかった。


 死ぬ時は痛みがないのかと思い、目を開けると、そこには鮮血に濡れた兵士がいた。兵士の腕は力なく垂れ下がり、兵士の胸を何かが貫き、そこから血が出ていた。鮮血は目の前にいた兵士のものだった。


 地面に落ちている銃を見る限り、俺に弾は当たらなかったようだ。


 もう一度、兵士の方を見ると、兵士の胸を貫くもの、それは人の手だと分かった。


 兵士の胸から手が引き抜かれ、兵士はその場に崩れ落ちる。


 兵士を殺したのは、一人の男だった。黒いズボンに青いシャツ、その上に黒いコートを着ていて、黒の手袋をはめてシルクハットを深く被っている。全身がほぼ黒で埋め尽くされていた。帽子を深く被っているので、この角度から顔は見えない。


 男の着ている服は大量の返り血で赤黒く濡れていた。


 残りの二人の兵士は何が起こったのか分からなかったのか呆然としていたが、我に返りすぐさま銃を抜く。銃口を男に向け、引き金を引いた。


 だが、男に弾は当たらない。()()()()()()()()()()()()ように見えた。


 実際、俺は銃弾は見えないが、弾が当たったであろう場所は大きな穴ができ、反対側に続いていた。


 兵士は困惑していたが、今度は連続で引き金を引く。


 だが、男はすでに先ほどいた場所から消えていた。


 ザンッと音が聞こえた。


 音がした方に目を向けると、男が兵士の首を切っていた。切り口から鮮血が飛び散った。


 それを見て、最後に残った兵士は銃を捨て、逃げ出した。


 男は必死で逃げる兵士を眺めつつ、何かを呟いた。


 それが何を言っているのか声が小さすぎて分からなかった。


 男が何かを呟き終わった瞬間、爆発が起こった。振り返って見ると、爆発が起こった場所は最後の兵士がいた場所だった。爆発が鎮まり見えてきたその場所は何もなく、焼け焦げた地面があっただけだった。


 俺はその光景を呆然と見ていることしか出来なかった。


 俺は突然現れた謎の男を怯えた目で見た。


 男は手に付いた血を拭き、自分が殺した兵士の死体に手を合わせて、一礼をしてこちらを向いた。


 男の顔が見える。見た目は三十代前半だろうか。若そうな男である。目つきは鋭く、額にはバツ印の傷が見えた。


 男は笑い、こう言った。



 「大丈夫か?そんなに怯えなくていいぜ。別にお前を取って喰おうってわけじゃねぇんだから」



 武器を持った大の大人三人を一瞬で葬り、かすり傷一つ負わなかった奴だ。そんなことを言われてもあまり信じられなかった。


 男は頭をかきながら一度大きなため息をつき。



 「まぁそんなこと言われても信じられねぇよな。でも、俺はお前に危害を加えるつもりはねぇってことは理解してくれ。俺はお前を助けようとしただけだ」



 助ける?何でだ?周りには誰にも助けられずに死んでいった人達がたくさんいるというのに、何で俺限定なんだ?



 「何故お前一人だけ助けたのか。まぁこんなこと言われたら理由、聞きてぇよな」



 え・・・・・・何で俺の考えてることが分かったんだ?偶然・・・・・・だよな?



 「偶然じゃねぇよ。人の考えてることや思ったことを読むことができる能力、俺の持ってる能力の内の一つだ」



 能力?何だそれは?しかもその内の一つって、他にもあるってことか?



 「ああ、他にも色々持ってるよ。だが、その話は後だ。さっきの話に戻すよ。そうじゃねぇと話が進まねぇだろ。もっと聞きてぇなら、後で俺についてこい。そうしたら話してやる」



 ついてこい?こいつ、まだ怪しいからな。どうしようか。



 「信じるかどうかはお前しだいだから、どうこう言うつもりはねぇよ。」



 その話はとりあえず後回しだ。話を戻さねぇと。



 「そうだったな。俺がお前を助けた理由だな」



 そこまで言うと、男は一度息を吐き、真剣な表情になった。



 「それはな、お前はこの戦場にいた他の奴とは、違っていたんだ。お前は他の奴と同じように、怒りや憎しみの感情はあった。さっきの三人にも向けられていた。だが、明らかに兵士達に対するその感情の大きさが小さかった。俺が一瞬、お前を見た時に感じられなかったほどにな」



 男はさっき殺した兵士の死体を見た。



 「じゃあどこに向けられていたか。お前自身は分かっていると思うが、お前自身に向けられていた。あの状況で、兵士にでもなく、この戦争に対するものでもなく、お前自身にだ。お前の何に向けられているのかまではわからなかったがな。俺はそんな奴を初めて見た。お前のあの眼差しを見ていたら、何故か死なせちゃいけねぇとまで思っちまった。そんな中、兵士がお前に銃を向けて引き金を引こうとするもんだから、咄嗟に助けたってとこかな。ま、そういうことだ。分かってくれたか?」



 男が言い終わると、俺は初めて口を開いた。いや、言わずにはいられなかった。



 「・・・・・・かった。何も、出来なかった。目の前で家族が死んでいるのに、あの兵士達に殺されたのかもしれないのに!あの兵士達を見て、恐かった。銃を向けられて、怯えて、何も出来なかった‼自分も死ぬかもしれないのに、怯えて何も出来なかった‼みんなの仇を取るどころか逃げることも出来なかった!俺はそんな自分を許せなかった‼」



 今まで抑えていた感情が爆発した。この男に言っても仕方がない。そんなことは分かっている。だが言わずにはいられなかった。



 「嘲笑(わら)えばいい。自分が死ぬ場面で、恐怖で縮こまっている俺を嘲笑(わら)えばいい」



 半ば自棄になっていた。だが、男は嘲笑わなかった。その代わりにこんなことを聞いてきた。



 「そうか。じゃあお前は何がしたい?家族を殺した者への復讐か?」



 俺は驚いた。俺は、嘲笑われると思っていた。だが、男は一切嘲笑わなかった。理由は分からないが、この男は俺を変えてくれる、そう俺は思った。


 そこで、俺は迷わずこう答えた。



 「戦争を終わらしたい。復讐とか、そんなことはしない。俺は、全ての戦争を終わらしたい。人がたくさん死ぬような戦争を。誰かに俺のような思いをさせる戦争を俺は終わらしたい。もう、こんな思いはしたくないから!」



 男はその台詞を聞くと笑いこう言った。



 「やっぱり、俺が見込んだ通りだ。恨みや復讐でまみれた他の奴とは違う、こんな奴を俺は待っていた。その望み・・・・・・戦争を終わらせたいか?」



 「・・・・・・させたい。けど、俺には無理だ。俺は弱いし、第一、俺は恐くて戦うどころか逃げることも出来ない臆病者だ。俺には向いてない」


 「ならば、力と強い心があれば実現させられるか?」


 「多分・・・・・・」


 「それだったら俺について来い。お前に強さを与えよう。俺が叶えられなかった願いを叶えて欲しい」



 そして、男は俺に手を差し伸べてこう言った。



 「俺の名は、ブラッド・レイ。悪魔だ」



 そう男が言うと、男、いや、ブラッド・レイの背中から一対の漆黒の翼が現れた。



 「悪・・・・・・魔?」



 俺は驚いていた。なにしろ、悪魔なんてのは空想の世界にしかないと思っていたからだ。



 「そういや、まだお前の名前を聞いてなかったな。名前、なんて言うんだ?」


 「・・・・・・アール。アースク・D・アール」


 「そうか、アール、どうする?俺について来るか?」



 目の前の悪魔は、再び俺にきいてきた。


 俺は戸惑っていた。なんせ、悪魔なんてのは悪いイメージしかないからだ。


 まさに、『悪魔の(ささや)き』だ。


 だが、俺はすぐに決心した。この悪魔について行かなくて、ここに留まっていても意味がない。例え、これが罠だとしてもいい。この悪魔が俺を変えてくれること、それを信じたい。


 俺は、悪魔の手を強く握りしめ、言った。



 「よろしく、お願いします‼」

次回は行間です。

色々と書き直しました。ご了承下さい。

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