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ゴキの恩返し  作者: のんびり+
6/6

・お泊まり会②

 遠い親戚が、夏休みという事で遊びに来ている。正直かなり不安だった琴羽の従姉設定はあっさりと通用し、二人は和気あいあいと琴羽と談笑している。

 ここさえ切り抜ければもう勝ちだ。とりあえずこれで、変な情報をばらまかれなくて済むだろう。

 四人分の麦茶が入ったコップを盆に乗せ、賑やかなリビングへ戻る。談笑は盛り上がっている様だった。

「へぇ。なら夏休みの間はずっとこっちにいるんだ」

 輪が麦茶を手に取りながら言うと、琴羽も麦茶を取って、

「はい、そうですね。とりあえずは」

「じゃあ女の子同士、仲良くしましょう」

 乾杯と、二人のコップがぶつかり合い小さく音を立てる。

「にしても羨ましいぜ、こんな可愛い娘と同居なんてよ。いつ間違いが起きるかわからないし、ここは俺も一緒に――」

「間違いなんか起こらんし、起こすとしたらそれはお前だ」

 もしくは……いや、ないか。いくらあいつが俺の事を好いていようと、流石にそんな。チラッと琴羽の方を見ると、目が合った。

「安心して下さい翔太さん! 私、自分からするよりされる方が好きですから!」

 ゲホッ! 思わず麦茶を吹き出しそうになるのを必死に堪える。お前はなにを言っているんだ?

「ワオ、琴羽ちゃんったら大胆ねぇ」

 口笛を吹かしてにやつく輪。

「黒光さんってもしかして、翔太の事好きなの?」

 ワナワナと狼狽うろたえる和真に対して、

「はい」

 琴羽は間髪入れずに即答。

 和真はまるで、鳩尾みぞおちにボディーブローを食らったかのように膝から崩れ落ちうずくまった。その姿があまりに惨めなので、俺も少なからず同情してしまう。

「あの、和真さん? 大丈夫ですか? ひょっとして具合悪いんですか?」

 うずくまった和真に駆け寄り、心配そうに背中を擦り始める琴羽。天然過ぎだろ。

「うぅ……黒光さん、ありがとう」

「いえ、そんな。あ、ちょっと失礼します」

 そう言って琴羽は自身の額を和真の額にくっ付ける。

「熱は……ないようですね」

 瞬く間に和真の顔が茹で上がり真っ赤に染まる。琴羽、もう止めてやれ。そいつはもう限界だ。

「ありがとう! もう大丈夫だから!」

 勢い良く立ち上がると、和真は慌ててリュックサックから筆記用具やらプリントやらワークノートを取り出し、テーブルに広げた。強引に流れを変えたな。

「それよりよ、まずは宿題だろ! さっさと終わらせようぜ!」

「そうね、賛成~」

 続いて輪も、のんびりと手提げバッグを漁り始めた。

 仕方ない、俺も手伝ってやるか。

「え、なにお前。もう終わってんの!?」

「嘘でしょ!?」

 さも驚いた様に、和真と輪が顔を見合わせる。君達、少し失礼じゃないかな。

「頼む翔太、手伝ってくれ! ほんのちょっと! 一瞬! 一摘まみ!」

「翔太、私もお願い!」

 二人は手を合わせて必死に訴え掛ける。凄い迫力だ。まあ無理もないか。わらにもすがりたいという時に、俺という名の救命具が投げ込まれたのだからな。

「わかったから、ちょっと待ってろ」

 こんな状態にある二人の頼みを断れる訳もなく、俺は自室に置いてある既に終わらせた課題を取りに行こうと、階段を上るのだった。

 

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