それはスローモーション
ここでお別れだ
情けの雨が降っても
洗い流すものなど
残っていないのに
3番線に響く
アナウンスで着いた
電車は悲鳴をあげて
所定の位置に止まる
降りてくる人
乗り込む人
全ての流れが
スローモーションに映る
アスファルトを叩く音
僕はそこに紛れ込む
全てのことに背を向けて
乗り込むその一歩で
守られていたことを
雨に濡れて知ったよ
肩に着いた雨粒を
手で払って席に座る
壁にもたれかかって
ただ時間を持て余す
見慣れた月
知らない景色
全ての流れが
スローモーションに映る
等間隔で揺れる音
僕はそれに身を委ねる
行く先さえ決めないで
停車するアナウンスが
車内に響き渡って
居場所はどこにある
目と目が合う
行き交う人
全ての瞬間が
スローモーションに映る
列車は悲鳴を上げながら
僕たちを揺らして進む
全てを置き去りにして
窓に打ち付けられる雨粒
濡れることのない体で
今も守られ続けていると
気づいたよ
読んで頂き、ありがとうございました。