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女相撲のくだらない話から発展したおっぱいとかのくだらない話

「知ってっか? 昔の女相撲ってよ、男と同じでまわし以外はつけなかったんだってよ。つまりはおっぱいだ! おっぱいが見えたんだよ、昔の女相撲ってのは!」

 そう語るはボンクラ少年のA氏だが、この馬鹿さを攻めちゃあいけないよ。だって男だ、そして男は全て、いや大抵かね。おっぱいが好きだからなぁ! それが小さくても大きくてもおっぱいはおっぱい。

「何と正に、本当かいそれは? それはすばらしいなぁ! 僕は生まれてくる時代を間違えた。女相撲、何と見たいことか」

 それを言うはB氏。A氏に負けず劣らず性欲性愛旺盛、現実億劫。A氏との話ならその現実も突き破って旺盛になるという、正に二人は心の友ときたもんだ。

「しかし、おっぱいって響きは素晴らしいな。この響きの柔らかさ。思わず、こう手がつるんと滑っておっぱいのせる、そんな事をしたくなる素晴らしい言葉じゃないかね」

「そうだなぁ。全くもって同意だよ。何て言ったて、まずは「おっぱい」の「っ」。この促音がおっぱいの感じをシュッとまずさせる。これだけなら少し尖った感じがして、いかにもおっぱいの柔らかさというのは表現できていない。しかしだ。しかしだよ。その次の「ぱ」が素晴らしい! 「は」でもなく「ば」でもない。「ぱ」、「ぱ」だよ「ぱ」! 天才じゃないかね、この言葉を考えた人は」

「いやいや、同意。同意しかできないよそれは。「ぱ」。この半濁点が素晴らしい! 半濁点の丸部分のあの丸い感じで、そして柔らかくさせる語感。いやはや、これはしてやられたよ。つまりだね。まずは「お」。少し堅めでは四角っぽい感じはあるもののそれでいて何だか丸みを帯びてやがる。そこで次に来るは「っ」、これでシュッとした感を出す。これはアレだね。乳頭から乳房までのあの感。これが全体の形を少し感じさせる布石。そして次に来るは我らの「ぱ」! これでシュッとしたものに丸みを帯びさせて、それでいて柔らかさを出す。そして最後の締めの「い」。いやぁ、これも見事だよ君。「い」によりその丸みを締める。つまりはおっぱいの形を締める。これにでおっぱいの全体像が「おっぱい」という言葉の中で出来上がるんだよ!

「うん、その通りだ! いやはや古今東西、ここまで見事な言葉は在るだろうか。いや、無い。正に反語を使うに相応しい素晴らしい言葉だねぇ。それに比べて「バスト」なんかは語感が丸くないから駄目だねぇ」

「うん、そうだ。やっぱり「ぱい」、つまりは「P」それが重要だ」

 と、こんなバカ話を延々とするわけだ。知能指数の非常にい低い言葉ではありはするけれども、知能指数の低い話はえてして気楽で楽しいモノってなわけで、続くは続く。この駄会話はまだまだ続く。それをするのは狭っくるしいA氏の部屋。内心二人はおしゃれな喫茶店で大声あげて、麗らかな女性や特に女子大生、いや女子高生に聞かせたいという欲望在れども、その意気地は無し。あの喫茶店で見た女子高生がゴミ虫を見る様な目でこっちを見る。あゝ、それを想像するだけでゾクゾクっとするもんだ。そう二人は当然の如く思う。

「ぱい、その話をして思ったが「P」はどう思う」

「まさかまさかまさか! それは僕もきり出そうと思っていたんだよ。だってそうじゃないか君」

 P、これを読む読者諸君でもそれを思った人間はいるはずだ。それはありうべきことだ。近い字には「8」もあるが、いやはやこの話ではやっぱりPが妥当よいうものだろう。何、気付かない。それは幸せな生活を送っているが君、我々持たざる者は持たぬ故に持つのであるよ。広大な宇宙にも広がるその想像力を。全ての創造は想像力から始まる。現実を持たざる故に我らは持つのである。妄想と想像の生み出す奇跡を見る力を!

「しかし罪なものだよ、Pは。見たまえこのPのでっぱり部分」

「あゝ、何て巨乳だ! Pは!」

「そうだ! そうなのだよ! やっぱりPは触りたくなる巨乳だ。この凛とした感じに立つ姿に見える縦線、そしてそこにつくこのでっぱりとカーブ。凛とする故に張るおっぱい。この曲線、触りたい。Pは何て罪なアルファベットなのだろうか」

 馬鹿と侮るなかれ! 彼らは性に正直なだけだ! いや、我らはこの想像力を学ぶべきである。突拍子の無い発想からこそ芸術は生まれるのかもしれないのだからな。

「して君。すこし話を変えてみようか。性的思考対象が女の奴ってえのは大抵おっぱいが好きだろう」

「そうだが、あまり話の内容が変わっていないんじゃないのかね」

「もう少し聞き給えよ。何、性的思考対象が男の場合はと言う話だ。男のおっぱいが好きなのだろうか」

「うーん、僕の性愛は女性が専門だから良く分からん。しかしそうだな。男の胸はおっぱいとは言わん。胸板、板だよ板。こんな表現があるかね。如何にも堅いじゃないかね。しかしそこにこそこの言葉の真意がある」

「ほう、何かね」

「つまりはだ。男のおっぱいは好きじゃない。男に求められるのはおっぱいじゃなくて、胸板なのだよ。やわらかさより、堅さ。それが求められるからこそ、板という字が使われているんじゃないかね」

「成る程! 確かにそりゃあ納得いく。成る程、板ねえ。つまり女はおっぱい、男は胸板。女はやわらかさ、男は堅さを求むると。こりゃあお前、この言葉を作った人らは天才だなぁ」

「確かに僕ら程度の頭の出来じゃあこの言葉を作り出すのは無理だ。お手上げだよ。先人の知恵に感謝!」

 言葉とは生き物だね。語感ってえのは言葉で表すには難しいってなもんだが、確かに多くの人がその語感を何となく共感できる。いやはや、その言葉をつくった先人、そして今もつくって定着させる言葉の数々を作る人ってのは正に偉人ですよ。私もそんな言葉を作ってみたいものだが、恐らく無理というものだね。

 さてさて、この二人まだまだ話は続くよ、何処までも。本当に何処に行きつくのかねB氏は言葉を少し鎮めて、しかし明瞭な言葉でその言葉を言う。

「しかし何だな。僕らはおっぱいをこんなに愛している。おっぱいという言葉も実物も愛している」

「ど、どうしたっていうんだ、急に」

 先ほどよりも明瞭でそして少し荒めの言葉で言う。

「目を覚ませ! お前はおっぱいに愛をしているが、おっぱいはお前に恋もしない!」

 静まり返る空気、部屋中の空気が引っ張られてゴムの様にギリギリまで引っ張ったくらいに空気が張る。静かだ。しかしこの静けさは睡眠には適しない。その静寂を、張り切った空気を破ったのはA氏。

「そんなの、分かっているさ。おっぱいは俺を愛してくれない。それは分かっていたさ。じゃあ、俺は何を愛せばいいんだ」

 これを聞く人の思考を、こちらの文を作る速度が遅くなる位に重い言葉を放つ。まかり間違っても、おっぱい愛せばいいんじゃない、というのも何だかはばかられる。重い、重い、ウェイトリフティングだってこんなに重くやしないやい。そんな重い言葉、B氏は持ち、えいやっと体のバネを利用して持ち上げるようにして口を開く。

「君は何を愛すんだ。おっぱいを愛すことは良い。しかし、それはおっぱいを愛しているんであって、その相手の女性を愛してはいないんじゃないか」

「おっぱいだってその人自身。おっぱいを愛すことはその人を愛すことに繋がるはずだ」

「じゃあ、その人におっぱいがなければ」

「おっぱいが無いだなんて、あり得ないだろ!」

「あり得るかもしれないじゃないか。実は君はデカいおっぱいが好きだ。つまり、小さいおっぱいの女性を君は愛さない」

「あり得ない! おっぱいに優劣何て!」

 そうだ、おっぱいに貴賎なし。小さいのも大きいのもそれはおっぱいであるはずおっぱい。

「なら、おっぱいの事は少し置いておこう」

 A氏の頭の中で台所の机の上に置かれたおっぱいが見えた。しゃぶりつきたくなるくらいにたゆんたゆんしているおっぱいが皿の上に乗り、A氏の頭の中を少し支配する。たゆんたゆんとA氏の脳も揺れる。その脳の揺れを止めるはB氏の言葉。

「愛する対象って何だ?」

 A氏の脳にそれは全てカタカナで入ってくる。つまりは意味不明、わからない、こいつ何言ってんだ、ああ危険ドラッグをやっているのかもしれんな、と。

「それはやっぱり女だよ」

「チンコがついていない相手しか愛せないと」

「何だ、その言い方は。やけにトゲがある言い方じゃないか」

「つまり君の愛はチンコのあるなしで左右されるんだね」

 は? は? は? その一文字が三個に留まらず、数千個の「は?」が脳の中を埋まる。だってB氏の言葉は意味分からない。いつもはこんな話にならならい。いつもならおっぱいの話で三時間は軽い。いやいや、徹夜だって出来はする。それが今日はどうした。楽しい楽しいおっぱいの話をしていたじゃないか。それなのに何で今はチンコの話をしている。いや、それ自体は馬鹿話ではありふれた題材だ。チンコはおっぱいに並ぶ駄話の王道。いや、おっぱいにも勝る王様だからな。

「当たり前じゃないか。どうしたんだい、一体今日は? チンコの話をするなら、包茎の話だったり、大きさの話だったりするのが俺らの常だろう」

「確かにそれが僕らの常だ。しかし常とは常に非ずだよ。いつかは常を破る何かがやってくる。それが今なんだよ」

 そう、そうだ。永遠に続く日常などない。それはいつか終わる事がある、長い日常でしかない。この彼らの長い日常は今ここに終わりを迎えたのだ。そしてこの話が終わればきっとまた一つの長い日常が始まるはずだ。はず、だ。

「チンコのあるなしじゃない。そんなもので愛の対象は変わらないはずだ。だってそれじゃ、チンコ如きに性愛の対象が縛られているって事じゃないか。それじゃあ変じゃないか。チンコがある人間はチンコをない人間しか愛さない。チンコがない人間はチンコのある人間しか愛さない。こんなとっても物理的な縛りで愛の対象を決めるなんて」

「その物理的なものがとっても、いやとっても所じゃないよ、君! それが全てだ。だってそれじゃあ、凸凸と凹凹じゃあ子供は出来ないわけだよ」

「子供の出来る出来ないは確かに生物である限り縛られる事象だとは思う。しかし人間はそれすらも逸脱する権利を持っているはずだ」

「君は何を言いたいんだね!」

「愛の対象とは物理的なものに縛られるに非ず。精神を愛するものだよ」

「当たり前の事を言うな!」

「僕はそう思う」

 少しだけ一瞬、B氏の目が異様に艶めかしく、まるで獲物を狙る様な目で、しかしそこには何か悲哀めいたものを宿した目でA氏を見つめる。こんな目をA氏が見るのは初めてだった。そう、初めてだった。そして、最後たった。

「それでも俺はおっぱいが好きなんだ!」

 次の日から彼らの新しい長い長い日常が始まる。それはきっと彼らが死ぬまで変わらない、限り無く永遠に近い日常だ。

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