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第6話 入門

おそくなりました。

今回は一応会話を入れてみました。

やはりいつまでも無言ではあれですので。

ただまぁほとんど説明ばかりにはなってしまいましたがw

しかしまだ原稿用紙40枚ほどですのでいいかな? なんて思ったりもします。

なにか意見がある方いらっしゃいましたら是非感想欄に記載してください!

 マヤトは王都アリシヤードの境界線にある崖の上から街を一望する。

 その広さはマヤトの住んでいた街より遥かに広く、早朝にもかかわらず人々で賑わっていた。

 そしてマヤトの見据える遥か先、街の中央に圧倒的存在感を感じさせる建造物、アリシヤード王宮が映る。 


(遠いな。それに無駄にでかい)

『フ、お前なら一瞬で辿り着けるではないか』

(バカ言うな。そんなことしたら目立つだろうが。今はまだどうでもいい連中となれ合うつもりはない)

 マヤトはクロとの念話でそう静かに答え、王都へと降りて行った。


 王都は王宮を中心に円形状に造られた街並みになっており、マヤトがこれから向かうアリシヤード龍院は、王宮の後方の街半分を占めている。つまり街半分が神龍の使い手たちのために造られているのだ。

 そこには15歳から20歳までの神龍の使い手たちが生活をしており、龍院へと入った者たちはそれぞれに衣食住を国から約束され、金銭面に不自由なく生活できるようになっている。


 これは真の神龍の使い手を目指すために最大限の時間を使えるようにと、昔の王たちが定めた法律のようなものだ。したがって、その身から龍が消え去る20歳を迎えた者は龍院から出なければならない。

 そしてそういった者たち、またはその家族や現、龍院に住んで居る者の家族たちが住んでいるのが、現在マヤトが歩いている王都の前半分の街となる。


 ただ王都に残れるのは神龍の使い手たちの教育者、あるいは国王が許可を出した者たちだけ。

 邪龍がどの街に、いつ現れるか分からない以上、みなを残すわけにはいかないのである。


 『フン、どいつもこいつも感じられる龍気りゅうきが情けなさすぎるな』

 マヤトが指定時間に間に合わない、と乗った龍院行きの馬車で静かに流れる街を眺めているとクロがそう呟く。


(それは仕方ないだろ。こっちにいるのはすでに龍を宿していない奴だからな)

『フン。だからといって力がすべて消えるわけではない。己に宿した龍の力をある程度使い熟せさえすればこんな腑抜けた龍気になどにはならん』

 クロは呆れた口調で、だがどこか怒気を含んだ声音こわねで呟く。

 

 クロの言い分はもっともである。仮にも龍を宿したことのある者たちだ。

 その力をより使いこなした者にはその分、龍が消え去った時に残る恩恵、すなわち龍気がその身に残る。

 

 龍気とは龍の力の源である。己に宿る龍の力を使いこなすということは、宿った龍がもともと保持している龍気を引き出し、自分のものとするということ。すなわち引き出した分だけ龍が消え去ったあともその身に残るはずなのだ。

 だがマヤトとクロの視界に流れる有象無象の人間たちから感じられるそれは、欠片程度のちっぽけなもの。

 仮にも自分と同じ龍と呼ばれる存在を宿しておいて、ろくに使い熟せもせず終わった人間たちを見ては、クロの怒りも分かるというものだ。


(まあ、クロの言うことはもっともだな。今見えている連中はどうせ幼龍の具現化すらできなかった奴らだろうからな。具現化までできた連中は龍院の中で指導員でもやってるんだろうよ)

 マヤトは頭の中でクロを宥める様に答える。


 マヤトが答えた幼龍の具現化。それこそが身に宿る龍の力を使いこなす第一条件だった。

 己に宿る龍を、幼龍の姿で具現化出来たものは20歳の誕生日、龍が消え去る代わりに一振りの剣が残されるのである。もちろん己が使いこなした分の力を秘めた剣だ。

 

 だが具現化は当然、幼龍だけではない。

 その上に子龍こりゅうが存在する。その引き出せる龍気は幼龍の数倍とされる。

 約1年半前にマヤトが出会った少女はこの子龍を具現化していたのである。


 しかしこれでも真の神龍の使い手には物足りなかった。

 だがそれは各々の記憶を思い返せば簡単にわかることだった。

 なぜならあの日、龍が己の下に舞い降りた日、視界に移った龍の姿は子龍のそれとはまるで違ったのだから。


 あの姿こそが神龍であり、あの姿での具現化こそが真の神龍の使い手である、と先の子龍の具現化に至った使い手たちは確信した。そしておそらく子龍の上こそがそれであるとも。

 ただ、未だかつてだれも成し得ていないのでもちろん確定ではないが、子龍ですら人が背に乗るには十分すぎるほどの巨躯なのだ。

 まず間違いないだろうと云われている。


『フン、まあいい。中へ入ればそれなりに楽しめそうな者たちがいるだろうからな。あの娘、白龍の娘の龍気も感じることだしな。フハハハ』

(白龍か……。ふん、おれをこの世界に送り込んだやつはどれだけ人の記憶を抉れば気が済むんだろうな。あの女がクロとついの龍を宿している時点でいずれ嫌でも出会うことになるのが確定してるとはな)

 マヤトはクロの笑いを無視し、1人頭の中でそう呟き、その漆黒の眼を一度閉じて開け、目的地へ到着した馬車から降りる。

 そこにはまるでこちらの街と龍院の街を遮断するかのように街の端から端まで長く高い塀が建っており、王宮の門と龍院の門の2つが存在していた。

 

 マヤトはその龍院の門のアリシヤード龍院入門受付と書かれた看板の下へと歩るき、受付にいた女性に「ここへ入りたいんだが」と何とも礼儀知らずに声をかける。

 しかし女性は考え事をしているのかマヤトの声に全く反応せず、独り言のようなものを呟いていた。


「ん~、そろそろ時間ね。もう来ないかしら? まあ、今日は一応9人目になるとても優秀そうなが入ってくれたことだし、これ以上はさすがに――」

「おい」

 マヤトはもう一度、さらに無礼に声をかけ、ようやく女性はマヤトを認識する。


「え? あ、はい! すみません。少し考え事をしていたもので。入門希望ですね? ではお名前と年齢をこちらに。それと一応龍印を拝見してもよろしいですか?」

(うわぁ、びっくりした。この子まったく龍気の気配を感じないんだもの。こんな子初めてだわ。それにこの子、他の子とはまるで違った雰囲気。人を寄せ付けたくないとでもいうよな……え――?)

 受付の女性は名前と年齢を書き終えたマヤトが見せた龍印を目にし、驚愕の表情を見せる。

 マヤトは襟元をグッと引下げ、胸の中心にある龍印を見せている。


(うそ……、まさか一日で2人もだなんて……)

「もういいか?」

「え? は、はい! 結構です。で、ではこちらが、あなたが生活する部屋のカギと龍院生である証の龍院証になります。のちほど名前を記入しておいてください。こちらを見せればどのお店であっても無料になりますので。それでは隣の門よりご入場ください」

 そう女性に言われたマヤトは黙ってカギと龍院証を手に取り、そのまま門をくぐって行った。


「……はっ! いけない! 早く王宮にいる誰かに陛下に話してもらうように伝えないと! もしかしたら揃ったかもしれないものね!」

 小さな窓口から顔を覗かせてマヤトを見送った彼女は、慌てたようにそういってどこかへ駈けて行った。 



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