第1話 世界の違いと過去の誓い
よろしくお願いします。
血塗られた前世の記憶をもって生まれたマヤト。
マヤトは今日もまた、ただ流れるだけの時間を過ごしていた。
この世界の時間は地球のそれと全く同じものだった。
だが、過ごしてきた時間は同じでも、培ってきた技術はまるで違った。
簡単な話、この世界に科学の結晶と呼べる産物というものは存在しない。
ただ、それに勝るとも劣らない、地球で生きたマヤトにはとても信じることなどできないような、超常的力が存在していた。
この世界に生まれた者は10歳の誕生日に、最短でも丸3日の深い眠りにつく。
これはこの世界では最早常識だった。これだけでもマヤトからすれば信じられないこと。
だが当然それだけではない。
眠りについた少年少女たちは皆、同じような夢を見る。
その夢とは、己の下へ1体の龍、すなわちドラゴンが舞い降りる夢。
そしてその龍はそれぞれ言い回しは違えど、同じような言葉を少年少女たちへと投げ掛ける。
その言葉とは『我が身をその身に宿すか、それとも無力を良しとするか、選ぶがいい』というもの。
前者を選べばその身に龍が宿る。ただし絶対ではない。自身の器が龍を宿すに値しなかった場合、その者の魂は悪しき龍、邪龍と化して身体から抜け出る。
そして魂が抜けたその身は時が止まったかのように年をとることなく、最長で10年という長い眠りにつき、その後無惨にもその身は灰と化して消える。
だがその結末を回避する方法はあるにはあった。その方法とはタイムリミットである10年以内に邪龍となった魂を見つけ出し、討ち滅ぼすこと。
しかしこの世界のどこに潜んでいるかもわからない故、今の現状では非常に困難であり、邪龍を討ち滅ぼせる者はその身に龍を宿した者にしかできなかった。
故にそうなった者が目覚めることはまずないとされていた。
そして後者はそうなることへの恐怖から逃げるために用意された道だった。
ならなぜ皆が後者を選ばないのか。それは龍を宿した際に得られる力がとても魅力的だからだ。
もし己の下へ来た龍が炎を司るドラゴンだったら……、その身に宿した際には、自身の力量次第で炎を自在に操ることができるようになる。
そして実際にそんなことのできるものを間近で見てしまえば、10歳足らずの無垢な少年少女たちではたとえ親が後者を強制しようとも興味本位で前者を取ってしまうのは致し方ないことなのかもしれない。
マヤトはその地球では絶対にありえない話を、育ての親である、ミレット・アークライトによって聞かされた。
もちろん無関心で、無感情で、無表情であるマヤトに、ミレットが一方的に聞かせた話だった。
そして明日は、そんな信じられない現象が起こるはずの、マヤトの10歳の誕生日である。
ただ、育ての親であるミレットは正確なマヤトの誕生日を知らなかった。
マヤトが拾われたのがちょうどこの時期の1か月後だったため、10月6日、すなわちミレットがマヤトを拾った日が誕生日ということになっていた。
だがマヤトは自分の本当の誕生日を知っていた。
なまじ記憶が残っているせいかそれなりに知識もあり、その誕生日はマヤトにとっても決して忘れられないものだったため、より正確に覚えていた。
9月6日。
その日付はマヤトの本当の誕生日であり、また真夜人の決して忘れることのできない悲劇の誕生日でもあった。
普段は全く夢というものを見ないマヤト。だがその日だけは必ず毎年のように夢に出てくる、あの悲劇の夜。それがこの世界での9月6日だった。
そんな9月6日が今夜零時を以てやってくる。
マヤトはその日だけは眠りたくないと思っていた。だが如何せんいまだ子供であるマヤトの身体は、半日以上も起きていれば自然と眠くなってしまう。
しかし今回ばかりは眠ってしまってもいいと、マヤトは思っていた。
あの話が本当なら、今年だけはあの悲劇の夜の夢を見ずに済むのではないか、と考えていたのだ。
あんな悪夢をこの先も見続けなければいけないのなら、いっそのこと死んでしまいたいとさえ思っていた。だがマヤトは望んで死ぬことができない。
なぜならそんなことをすれば、最愛の恋人、美夜と交わした唯一絶対の誓いを破ることに繋がってしまうからだった。
真夜人が美夜と交わした誓い。
それは美夜の恋人となった最初の頃、美夜から持ちかけられた約束だった。
美夜は真夜人にこう言った。
「いい? 真夜人。これまでのことは水に流してあげる。けど今後、自分の都合で一方的に、理不尽に相手を傷付けることは許さない」と……。
真夜人はそれに対して静かに頷いた。そして美夜はそのあと、笑みを浮かべながらこうも言った。
「ただし、周りにそんな最低な奴がいたら、そん時はボコボコにしていいからね。だから頼りにしてるよっ! 私の真夜人クン!」と……。
それを聞いた真夜人は苦笑するしかなかった。
そんな誓い故に、マヤトは死ぬことができなかった。死ねばいつも心配そうに、ただひたすら優しくここまで育ててくれたミレットに、そしてそんな母親に似て、無表情なマヤトに恐れることなく優しく気遣ってくれる3つ年上の姉、リアラに悲しみという傷を植え付けてしまう恐れがあった。
そんな行為は美夜との誓いを破ることにほかならない。
それだけはマヤトにはできなかった。
そしてマヤトは静かに眠りについた。
あの悪夢を見ないことを願って……。
またしても会話がなかった・・・・・・w
でも仕方ないのかな?
次回は一応あると思いますよ! 少ないけど・・・・・・w
次次回はメインヒロインも出てきます!
早くマヤトの時が動きだせるといいなぁ。
っというより今の話書いてると先が浮かんでるせいか、切なくなります・・・・・・泣きそう!
皆様にもそんな気持ちを伝えられるよう描いていきたいと思います!
しかし第1話・・・・・・みじかっ!w