クリスマスの奇跡・・・After
昨年書いたクリスマスSS「クリスマスの奇跡」の続編です
今回はサクっと読めるようにファイルサイズが5kb前後にに収まる範囲で書きました
―僕が死んでから何回もの季節が巡った。
大切な恋人―ヒナはそれから僕の大切な形見―洵君を大切に育てて・・・クリスマスの季節がやって来た。
死ぬ直前の僕はクリスマスパーティの夜から朝に掛けて、何度も何度も・・・体を重ねた。
あの時ヒナは僕の生きた証を残したかったと言っていたっけ・・・・。
・・・その事があったから、僕はヒナの夢の中に何度も現れた。
勿論、霊体としてそっと見守る事はほぼ毎日していたけど、現実世界に居ない分どうする事も出来なかった。
それでも、「夢」と言う「媒体」を使ってヒナと一時の安らぎを得た。
少し前の夢の中で、「今度・・・夢の中じゃなくて実際に逢いたいなぁ」と言っていた。
夢の中で僕は「・・・そう出来ればいいな」とは言ってみたけど、僕もその気持ちが日に日に強くなっていた。
勿論、霊体のまま出て来ても多分見えないだろう。
実際に出るには誰かの肉体を少しだけ借りる他ない。
僕は洵君の体を借りて「大切な人との時間」を久々に過ごす事にした。
「ヒナ・・・?起きて・・・」
久々に動かす肉体はどう重たいものがあったけど、何とかヒナの眠るベッドに辿り着いた。
「んっ・・・、洵・・・どうしたの?」
そりゃあ、勘違いするよね・・・、見た目上は僕じゃないもん。
「違うよ。洵君じゃないよ」
上体を起こして僕の事を見つめる。
「ジュン・・・なの・・・?」
「そうだよ・・・・」
彼女が気が付くまでそんなに時間は掛からなかった。
「本当に本当?」
疑い深いなぁ。
「そうだってば・・・。ヒナに逢いたくなって・・・戻って来ちゃった・・・。駄目だった?」
「ううん・・・?そんな事ないよぉ~。突然だったから・・・あたし・・・・」
ヒナはあの時と同じように涙を目元に溜め、僕に擦り寄る。
「・・・また泣きたくなったの?」
そっと接する。
「ううん・・・、今回は泣かない!」
「僕知ってるんだ。ずっと見てたよ?僕絡みの事で何かあったらずっと泣いていたんだよね?」
少しからかう。
「・・・意地悪」
「ごめんごめん。でも、もう泣いちゃ駄目だからね?」
「うん・・・!」
・・・とは言え、多分ヒナはまたすぐ泣くんだろうなぁ、と言う予測は簡単に出来た。
「ジュン、今夜は・・・ずっと一緒に居てくれるよね・・・」
「そうじゃなかったらこんな事しないって」
「・・・・っ」
ヒナはまた泣きそうになってる。
「だから、泣くなって。それとも、泣いてすっきりする?」
「泣かないけど・・・ぎゅってして?」
僕は黙ってベッドサイドに座り、ヒナの事をそっと胸に抱き寄せた。
暫くしてから、あの時とはまるで逆の状況―僕が涙を流すヒナを慰める。
「・・・ヒナの嘘吐き。泣かないって言ったじゃん・・・」
「だってぇ・・・・んっ!」
理由は訊きたくない。
言い訳をしようとするヒナの唇を僕の唇で塞いだ。
そしてそのままベッドに倒れ込んだ。
お互いがお互いを求め合っている証拠だ。
その欲求は、長い時間を越えて2人の心が満たされるまで続けられた。
「満足したかい?」
「うん・・・。ずっと逢いたかったんだよ?」
心も満たされたヒナはすっかり元気になっていた。
「あのねあのね!あたしね!・・・毎晩寝る前ね!」
「うんうん」
「ジュンの写真にキスしてるんだよ!」
・・・死んでからこんなに時間が経って尚、僕の事を思ってくれるなんて・・・。
「ヒナ、僕も嬉しい・・・。けど、ずっとべたべたされるのも、ねぇ・・・」
「そう・・・?じゃあ、次からはぎゅーって抱き締めてあげるね!」
「そんなに変わらないよ」
「むー」
頬を膨らませる。
「ごめんごめん。もう何も言わないよ」
「・・・もう」
呆れた表情で僕の事を見る。
「でも、そんなジュンがあたしは大好きなんだよ?」
「僕も」
「そう言えば、今日クリスマスイブなんだよね」
「あぁ、そうだね・・・。僕が死ぬ前のクリスマスパーティの事、覚えてる?」
ヒナにあの日の事を振ってみた。
「勿論よ。あの日、ジュンは急いで食べてたりしたよね」
「そんな事もあったね」
そうそう、料理をがっついて食べたから咽ちゃったんだよね。
「ごめんね。今年は何もご馳走とかはないんだけど・・・」
「いいよ。だって、肉体は洵君の物だから。もう食べられないよ・・・何か食べたのかな?」
「食べたよ?あの日と同じメニューだったんだ・・・。もうずっとそう。ジュンを忘れないようにね」
「そっか・・・。ヒナの中では僕がずっと生きているんだね・・・」
そう、ヒナの中ではずっと僕は生きているんだ。
「今日も・・・、ヒナの前にこうやって来たのは・・・・ヒナに向けてのクリスマスプレゼントなんだよ」
「・・・嬉しい・・・」
「思い返してみたら、洵君も・・・クリスマスプレゼントって考え方も出来るんだよね」
実際にそうなったからね・・・。
ある意味で「ホワイトクリスマス」だったなぁ。
「あぁ・・・。そうだね・・・。シよっか」
「唐突だね。・・・いいよ」
・・・それからあの時の同じように・・・、朝までずっと・・・。
―翌朝。
ベッドの周りには僕らが脱ぎ捨てた衣服が散乱していた。
何回達したかも分からない位・・・ずっとお互いがお互いを求め合った。
・・・無論、全裸のまま眠っていた訳で、2人でベッドの中で暖めてあっている。
「んー・・・!ジュン・・・おはよう」
背伸びをするヒナ。
「おはよう・・・。昨日は凄い事になっていたんだね・・・」
「だって・・・それはあの時のように・・・んっ!」
「これ以上は何も言わせない」と言う意味を込めて・・・何度もしたキスをまたする。
でも、・・・そろそろ・・・。
「ねぇ、ヒナ?」
「もう・・・帰っちゃうの?」
「そうなんだ・・・。ごめんね・・・?でも、また夢の中で逢えるから・・・!」
「うん・・・・」
・・・また泣きそうになってる。
「泣かないって言わなかったっけ?」
「言った!だから泣かない!笑顔で見送る!」
「じゃあね・・・・、ヒナ」
「バイバイ、ジュン!」
そうして、僕を服を着てヒナの部屋を出た。
今回あった事を思い出しながら・・・洵君のベッドの上で横になって肉体から離脱した。
僕が生きていれば、きっと・・・・―いや、考えるのはそしておこう。
逆に、こうして夢の中でヒナに逢えるのだから。
今度は・・・いつ逢いに行こうかな・・・・。