発覚
遅れてすみません
色々あったもんで……
そのかわり長くなっていますのでご勘弁を……
どのくらい走り続けただろうその変わり映えのしない岩肌の鉱山は永遠に続く出口のない迷宮のようにに思えてくる。ずっと走っているせいで心臓がはじけ飛びそうなほどのきつい感覚がハードを通じて脳に直接伝わってくる。現実世界ではどうもなっていないはずだ。心拍数くらいは上がっているのかもしれない。この世界にいる間は外の事はさっぱりわからないので確かめようもない。せいぜい物凄い疲労感が襲って来たり服があせでびしょぬれになっていたりする時があるぐらいだろう。そんな経験が時々あった。
そんなこんなで疲労にも五秒ルールは適用されるのだが、すこしでも休むと後ろの二人に殺されてしまうので五秒達するまで止まれていない。追いかけてくる二人は疲れという物を知らないのか走りが衰える様子は全くない。むしろ速くなっている気がする。ここまでくるのにモンスターに会わなかったのは幸運だと言えるのだろう。もしモンスターに目をつけられてもなお逃げ続けていた場合、モンスターが連なり自分についてくる。それはトレインという非マナー行為を犯してしまう事になる。
そんななか他のプレイヤーに会わないのもおかしい。モンスターが出ない場合、他のプレイヤーが狩りつくしていることになるのだがそんなプレイヤーは見ていない。
いつまで走り続ければいいんだろうか、自分が発端となったこの逃走劇に嫌気がさしてきたころようやく目の前には一パーティほどの人数のプレイヤー。しかしこちらは足が空回りしそうになるほど速いスピードで走っているうえ後ろには狂気の笑みを浮かべる女性二人。パーティーはこちらに気付いてないらしい。
「逃げろー!!」
そう叫ぶとふと尚春との会話を思い出す。
『逃げろ! って叫ぶと動揺するらしいから走れ―の方が反応しやすいらしいな』
――知るか!! どうでもいいの思い出したよ、てっきり打破できるものかと!!
そうこうしているうちにだんだんと楽しそうなパーティーと死に際の集団との差は縮まっていく。ついでに寿命も縮まっていく。別にうまいことを言いたいわけではない。
「あ、みんなー!」
「「へ?」」
今まで鬼のような形相を浮かべて狂い笑っていたとは思えないリーンは今までのようなほんわかとした雰囲気でパーティーに向かって自然な声で叫ぶ。あまりの豹変ぶりにリーン同様襲ってきていたエルも含め、なんとも間の抜けた声を漏らす。どうやらこの方々が探していた仲間らしいようだ。改めて見てみると全員がただでさえ少ない女性プレイヤー、そのなかでも特に珍しいとても美人・かわいらしい人たちがそろっていた。このなかにリーンが入るとなるともう今すぐにでもアイドルユニットが組めそうな感じだ。鎧さえ着てなければだが。
「え、っと……この人たちが探してた人たちですか……?」
「ん、そだよー」
フレンドリーだ、そしてフレンドリーだ。さっきまでの出来事がまさかの夢オチかと疑うくらいフレンドリーだった。恐る恐る尋ねてみたものの、頭をひっこ抜かれて鍋で煮えられることもなくひとまず命は救われたらしい。襲われないと思いほっと胸を撫で下ろす。ここで『撫で下ろすほどの胸をリーンは持ってないですけどね』と言ってしまうほど愚かではない。
「今回はありがとうございました」
パーティーから一人出てきておじぎする。そしてひとしきり頭をさげ終わった後リーンに向かいなおし罵倒を浴びせる。
「ギルマスがそんなのでどうするんですか!だいたい――」
この女の子はリーンと違いしっかりとしているらしい。
「って、え!?」
「えっ、って――二刀龍のリーンを知らないんですか!?」
「いや、俺ら二人とも製品版になって始めた新参者なんで……」
「初心者なら情報集めるために掲示板見たりするから普通知ってますよ!?」
「ごめん、情報収集はしてないんだ」
どうやらリーンは大がつくほどの有名人らしい。やはりβプレイヤーの線はあながち間違っていなかったことになる。そしてそんな有名人を知らない人を初めて見たらしくその女の子はひどく驚いていた。
「私たちは攻略ギルド《六人の色》といいます。そのなかでも我らがギルドマスターを務めているリーンはその使用武器、双剣の斬撃速度から二刀龍という通り名を持っておりトッププレイヤーに位置しています。私はアカハラです」
そんな大層なプレイヤー、リーンはハムスターのようにサンドイッチを咥えている。そんな様子だが高身長でスレンダーな体型のせいかとても小動物には見えない。しかしこんなにもほんわかとした彼女がトッププレイヤーだとは驚かないはずがない。人は見た目ではないことを痛感しつつリーンを眺める。そんな視線に気づいてか気づかずか一気に口の中に放り込みこちらへと近づいてくる。
――まさか、今度こそついに殺されるのか?
と思いつつ身構える。リーンもなにやらアイテムインベントリをいじっている。リーンは何かを見つけるとトレード画面を開く。ピロリン♪と軽快な効果音と共にトレードを要求するウィンドウが現れた。
「今回はありがとうございました、これはお礼です」
そういってリーンはインベントリからカードをトレードウィンドウへとかざす。お礼なんていいのに。なにかしたわけでもないし、とてもじゃないから返そう。あまり気に乗らずにトレードウィンドウをひらくよう促すウィンドウを閉じ、トレード画面を出す。そこにうつるのはあるカード、リーンから差し出されたあるアイテムを静かに受け取った。
「いいのか? これ」
「いいよいいよ、人数分くらいは手に入れたし」
ギルドというくらいだから数十人は所属しているだろうが、それほどの人数分を集めるのは可能なのだろうか。つまらないことを疑問に持ちつつも、嬉しくアイテムを受け取る。
「そうか、じゃあ遠慮なく」
先ほどまでの遠慮はどうしたのか。だが目的のものでもあったため手に入れたのはよしとする。
「七月中にイベントがあるらしいからその時にー」
そういって手をひらひらと振るリーン。そのうしろでは六人の色の五人がおじぎをしている。俺も軽く微笑み手を振っていると、エルがぼそりと『お前、キモいな』等と言ってきたので一発殴ってやった。そして例の脅し文句を浴びせる。すると威勢のいい声で『すみませんっしたー』とかえってきたので少しイラついた。
「今日はいろいろとありがとうな、まだ素材が必要だから集めるけど手伝うか?」
「誰が!」
「じゃあ買ってやんね」
「ひどい……」
「じゃ、じゃあ夜も遅いし落ちるか。じゃあな」
ステータスウィンドウを見るとデジタル時計が二つ表示されている。一つはここ、仮想現実世界内での設定時間が。そしてもうひとつは本当の俺がベットで寝ているはずの現実世界の時刻が表示されている。最初のころは戸惑いもしたが慣れてくると結構便利なものである。現実の時間は午前十二時を回っていた。そこまで遅いというわけではないがあくまで俺は高校に通う学生の身だ。夜更かししておいていいことは何もない。
「お疲れ」
そういってエルはウィンドウを操作する。同時にふわぁと淡い光に包まれ消えた。この仮想現実世界からログアウトしたのだ。
――俺も落ちるか。
ゲームをログアウトし、通信切断フェイズを抜けいつものパッとしない無機質な自室へと戻ってくる
。
次回はできるだけはやく
並行世界はいわゆる直列の方は終わっているのですぐ出せるかと




