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プロローグ
「迷子の仔犬の育て方」から3年後の話です。
弟みたいな子だと思ってた。
まだ子どもなのに、知らない間に我慢して。
とっても賢いのに、何も知らなくて。
たくさんのものを持っているのに、幸せそうには見えなくて。
もっともっと、色々なことを教えてあげたくなった。
楽しい事も、嬉しい事も。
段々と、柔らかくなっていくところを見るのは、嬉しかった。
もっと、幸せになって欲しいと思った。
――やっぱり、弟みたいな子だと思っていて。
でも、あの時。
まだ子どもだと思っていた腕に抱き締められて。
彼の腕は細いのに力強くて、堪えていたものが抑えきれなくなった。
頬に、唇が触れて。
わたしの中で、何かがざわめいた。
けれど、わたしは、今のままがいい。
――変わってしまうのは、怖い。
何故なら――