[合せ鏡の世界]編
[幸せの記憶・1]
父さんが死んでから、僕はずいぶん塞ぎ込んでいた。
まるで…世界が、灰色になったかのようで。
そして、いずれは僕も死ぬんだ、と考えては、眠れない夜を過ごした。
母さんは僕を慰めてくれた。
でも僕は、いずれは母さんも死ぬんだ、と考えては、嗚咽を漏らした。
そのときの世界は、きっと、灰色だった。
パシンッ
平手で打たれた頬から、色がにじんだ。
「いつまでも泣いてるな!男でしょ!」
ルッツァだった。
思えばそのときだ。
ルッツァと初めて話をしたのは。
[評議世界・2 side.A]
夢見る旅人が、決して辿り着けぬ地…。
カルボモンドで出来た神経が、無限の演算要求を送り続ける。
女神を象った有機の像が、無限の演算結果を弾き出し続ける。
そこは異質な空間だった。
無より零れ落ちし闇の使徒たち。
彼らに言わせれば、そこは“いと尊き場所”である。
ふと、闇が蠢いた。
「さあ、始めよう」
紡がれた言葉。
宣言は、一度。
呼応は、無限。
そして世界は、震え出す…。
「深き大穴…浮かぶ大地…
落ちて来る現実…落ちて逝く理想…」
[合せ鏡の世界・1]
ようこそ…ようこそ…
理想の世界へ…ようこそ…
誰かの声が、うっすらと。
…懐かしい夢を見た気がする。
だけど、その前に…恐ろしい夢を見た気がする。
ようこそ…ようこそ…
理想の世界へ…ようこそ…
今も聞こえる誰か“たち”の声。
これは夢じゃない。現実だ。
そうだ、起きなきゃ…。
目を開けた。
「…め、目覚めたぞぉお!!」
ぉぉぉおおおおお…
体を起こし、辺りを見回す。
儀式的な石造りの広場に、儀式的なかがり火の輪。
この場の中心は、疑いようもなく、僕だ。
「み、御子様…お加減はいかがですか…?」
「…最悪です」
叶うことなら、今までの悪夢が、文字通り、夢だったら良い。
目を覚ませば、そこは、あの日の風見丘で…。
そうだったらいいな、だなんて…思ったり…して…。
…ひょっとしたなら、あの赤と青の世界は、…そう、ひょっとしたなら、夢だったかもしれない。
でも、これは…間違いなく現実だ。
「な、なにか我々に至らぬ点がございましたか…御子様?」
広場を埋め尽くす人の群れ。その代表者らしき人が僕に尋ねた。
「無いですけど…強いて言うなら」
…僕はまた、変な世界へやって来てしまった。
「その“御子様”って言うの、やめて下さい」
[合せ鏡の世界・2]
「ようこそ! ようこそ!
理想の世界へ、ようこそ!
神の御子様!」
広場の代表者らしき人は、この国の大神官だということだった。
若いのに、なんだか凄そうな肩書きだ。
その大神官に引き連れられて、後ろを従者が付いてきて、周りの人垣から「ようこそ」コールが延々投げかけられて。
「どうして、僕は御子なんですか…?」
「御子様は天より降臨なされたのです。神の御子に違いありません」
「…“御子様”はやめて下さい。セルクでいいです」
「では、セルク様と」
シャルル・マナレイカは、僕の村と似たような家々が立ち並んでいた。
木を柱に、壁は煉瓦を用いた家。村と異なってた点は、二階建ての家が多かったことくらい。
…この街の家は、白い。煉瓦の赤色は全く見えない。
見慣れないそれが、どこか高級感を漂わせてる。
「僕をどこへ連れていくつもりですか?」
「お城です。国王に謁見して頂きます」
お城…。聞いたことはあっても、見たことはない。
「ああ、見えてきましたよ。あれがお城です」
「…大きい」
大きくて…、…、綺麗だった。
白と青を基調にした、清潔なデザイン。
上の方に、なにか意味ありげな図形が描かれた旗が、勢いよくはためいてる。
「風が強いとは縁起が良い。ええ、国旗の柄がよく見えますからね」
あれは国旗と言うらしい。
…?
お城の存在に圧倒されて、気付かなかったけど…。
空が、黒い…?
雷雲よりも、ずっと…。雲の黒さじゃない気がする。
「…空、黒いですね」
「…ええ、遠くの空は青いのに…。どうせなら、頭上の空は青く美しくあって欲しかったものです」
確かに、遠くの空は青かった。
少なくともここは、“あの世界”では無いんだと思う。
「ささ、こちらです。足下にお気を付けて」
長い階段の先に、お城の入り口が見えた。
「ようこそ! ようこそ!
理想の世界へ、ようこそ!
神の御子様!」
いい加減うるさい。
[合せ鏡の世界・3]
…いったい、何人の人間が肩車をすれば、あの天井に届くんだろう。
お城の中は、無闇にだだっ広い。
意味、あるのかな、この広さ。
「ようこそおいで下さいました、神の御子様」
頭を下げるのは、この国の王様。
さっきの大神官もそうだけど、とても若い。
特に王様なんか、僕と比べたって、大して年が離れてないんじゃ…?
「そんな、大げさな…」
「そう言うわけには参りません。天より来たる御子様に礼儀を欠いては、“理想の世界”の名折れです」
何度も出てくるフレーズ、“理想の世界”…。
「ここへ来てから“理想の世界”ってよく聞くんですけど…どういうことですか?」
「なんと、お気づきになられませんでしたか。真に残念です…」
すぐに気づくことらしい。町並みが綺麗だったけど…そういうことじゃないのかなぁ。
「よろしければ街を見学なさって下さい。じきに、お分かり頂けることでしょう」
「はぁ…じゃあ、散歩してみます」
「ええ、きっとお気に召しますよ」
「あ、そうだ。ひとつ、いいですか?」
「もちろんですとも」
「御子様って呼ぶの、やめてくれませんか」
この台詞、これで最後だと良いなぁ。
[合せ鏡の世界・4]
「ようこそ! ようこそ!
理想の世界へ、ようこそ!
セルク様!」
謁見の後、王様が、大神官に変な道具…ラッパみたいなもの…を渡して、なにかを命じてた。
僕が城を出たあとに
「国民の皆様! 御子様は御子様の呼び名を好まぬご様子!セルク様とお呼びするよう命じます!」
と超大音量で聞こえたのは、その変な道具が“拡声器”という、声を大きくする道具だからだそうだ。
呼びかけのおかげで、街を散歩する僕を“御子様”と呼ぶ人はいない。
…代わりにセルク様、と呼ばれるのも、こそばゆいんだけど。
だけど、これ以上はきっと、妥協してくれない。
「僕が“天より降臨した”…ってことですけど、詳しく教えてくれませんか?」
「はい、心得ました。しかし、申し訳ない、私は現場に居合わせなかったもので…。目撃者に直接訊きに参りましょう」
散歩の際にさえ、隣を歩く大神官、護衛なのかお目付役なのか…。
「“理想の世界”で、万に一つでも何かがあっては一大事。多少の息苦しさはご勘弁を」
どうもこの世界で、自由に羽を伸ばすことは…出来そうにない。
…さて、これから僕は、どうしよう。
この国で、神の御子として暮らしていくのか。
それとも、どうにか神の御子なんかじゃないと説得して、一市民として暮らしていくのか。
…うん、こうしよう。
他人事のように考えて、他人事のように結論したのは…
立て続けで起きた大事件に、精神が麻痺してしまったから?
ともあれ、結論はこうだ。
目撃者の話を聞いてから決める。
[合せ鏡の世界・5]
目撃者の少年は、こう語った。
「真っ黒な空から、セルク様がゆっくりと降りてきたんだ。
セルク様は眠ってて、だから、体はぐにゃんってなってて。
でも、ぐにゃんってなってても、青い光を出してて! すごく綺麗だったんだ!」
完全に脱力して眠っていた僕が、青い光を纏って、ゆっくりと空から降りてきた、と。
僕は、飛べない。
僕は、光れない。
「本当にこの顔? 別人じゃなくて?」
「ありえないよ! 降りてきたセルク様が、旅立ちの丘にフワッて降りて、それでボクが駆け寄って、お顔を見たんだ。うん、同じお顔だよ!」
間違いなく僕らしい。
「…少年よ。セルク様に対しては、敬語を使うように」
「あ、ご、ごめんなさい!セルク様!」
「いやいや」
…目撃者の話は、こんな有様。
嘘をついてるようには、到底、見えない。見間違いでもないらしい。
謎は残る…だけど…。
僕は、…無意識にしても、神々しいことをやらかしちゃったみたいだ。
…言い訳、どうしよう。
「それではセルク様。陽が落ちる頃合いです。お城に帰ると致しましょう」
…いや、これからの生き方を決めるのは、お城での生活を体験してみてからだって、いいかもしれない。
いつか、長老が話してくれたっけ。
お城では豪勢な食べ物がいっぱい出る、って…。
「さあ、セルク様」
「…あ、はい」
結論はまた先延ばしだ。
…まあ、急ぐ必要なんてないか。
“時間だ”
幻聴は、あの昏い声。
僕の楽観を、打ち砕くように…。
[合せ鏡の世界・6]
歓迎会の規模は、僕の予想なんか軽々飛び越えた。
色とりどりの鮮やかな服で着飾った貴族が。
色とりどり匂いとりどりの豪奢な食事が。
…まるで異世界だ。
いや、間違いなく異世界なんだけども。
「お味の方はいかがでございましょう?」
「とても…美味しいです」
今まで僕が食べてきたものはなんだったんだろう。まるで次元が違う。
「ありがとうございます。そのお言葉を頂戴出来て、私は果報者です」
大仰に振る舞うコックたちは、満足したのか、再び厨房へと。
「セルク様。この“理想の世界”を気に入って頂けましたか?」
年若い王様の問いに。
「はい。綺麗な家々、美味しい料理。夢みたいです」
僕の本心を。
「…!! …ありがとうございますっ」
…王様、泣いてる?
「あの…僕、なにかまずいことでも…?」
「と、とんでもない! むしろ、最大の賛辞ですとも! 天にも昇る気持ちでございますとも!」
なんだか熱が入っている。
「“理想の世界”を目指し続ける我々にとって、かけがえのない…!」
…オーバーすぎて、反応に困る。話題を変えよう…。
「ところで…“理想の世界”って、どういうことですか?」
王様の目が、鋭く変わる。
「セルク様も、街を見て、この食卓を見て! お分かり頂けたはずです!」
お前はそんなこともわからないのか、と言いたそうな目で…。
「美しい街並! 贅を尽くした食事! 心清き国民! 老い無き世界!」
…ッ!
そうだ…今、気付いた…。
この世界で、老人を見ていない。
いや、老人どころじゃない。
中年の人さえ見ていないんだ。
「これこそが理想の世界! 完璧なる、美と調和を保った世界! これを“理想”と呼ばずして何と呼びましょうや!?」
年を取らない人々が暮らす世界…。
僕の常識なんか通用しない世界…。
[合せ鏡の世界・7]
翌朝、あてがわれた部屋で。
「今夜はダンスパーティを催します」
…昨夜の歓迎会じゃ足りない、って?
「お体の調子が優れないので無い限り、ご出席頂きますよう。なにしろ主賓がご不在では始まりません故」
ダンスパーティは夜に行われた。
昨日よりも人が多い。
それに、もっと色鮮やかだ。
ダンスが始まる。
華やかな人々が、華やかに踊ってる。
場違い感が凄まじい。
僕は、本当に、こんなところにいていいんだろうか。
「もし。セルク様」
声の主は、女の子。
たぶん、僕と同じくらいの年。
「セルク様さえよろしければ、わたくしと踊って頂けませんか?」
「あの、えと…」
…言葉がうまく出ない。
不意に話しかけられたから、ってのもあると思うけど、それ以上に…。
強い意志に圧倒される、と言うか…。
「セルク様」
女の子の手が、僕の手と重なる。
ルッツァやティナに手を握られるのは大丈夫だけど…この子の場合…
…すごく、どきりとする。
「わたくし、ミクシィと申します。よろしくお願い致しますね」
ちぐはぐなダンスが始まった。
[合せ鏡の世界・8]
服に着られてる、って、このことだ。
姿見に、ちぐはぐな僕の姿が映ってる。
言われるままに着せられた服とは言っても…
こんな格好で、さっきのダンスパーティに参加したんだ…。
恥ずかしくてたまらない。
ダンスパーティが終わったあと、僕は再び自室に案内されていた。
綺麗で、広くて、よそよそしい部屋。
長く暮らせば、よそよそしさはなくなるだろうか。
「失礼。よろしいでしょうか」
閉じられたドアから、ノックの音と、王様の声。
「どうぞ」の“ど”を発した途端、ドアは開かれ、王様が部屋に入ってきた。
「先ほどのダンスパーティ、とても優雅に振る舞っておいででしたよ」
ミクシィはね。
「さて、明日のご予定ですが」
…僕が御子として生きていく限り、この国のあらゆる行事に参加させられるらしい。
「御子様が降臨なされた場所でもございます“旅立ちの丘”にて、大変大事な儀式がございます」
…僕が、降りた場所…。
「この国が“理想”たる所以、是非ともご覧下さいませ」
…理想たる所以…?
神様にお祈りとか?
…頭の片隅に、くっきりと浮かびあがる“真っ赤な儀式”。
見ないように、見えないように、…信じないように。
[合せ鏡の世界・9]
今更、なにを驚くことがある?
赤い空と青い大地を見た。
黒い空と老いない人々を見た。
今更、驚くことじゃない。
この国が、空に浮かんでるなんて、驚くことじゃない…。
儀式が行われる“旅立ちの丘”は、崖っぷちにあった。
崖の上には、一面の黒い空。
崖の下には…一面の白い雲。
この世界に住む人々にとって、なにも不思議なことはない…。
人々は、旅立ちの丘を取り囲むように並んでいた。
僕が並ばされた場所は、貴族の人たちが集まるところ。
その中には、王様もいて、あ、ミクシィもいる。
遠くには真っ白な服装の人々。
一番目立つところに、大神官が見える。
そして右手には、…、…あれ?
この世界に来て、初めて見た。
中年の人たちが、たくさんいる。
その中に紛れて、小さな子供がちらほら見える。
中年の人たちと子供たちは、互いに抱き合ったりしていて。
…その光景は、まるで別れを惜しんでいるように見えた。
「静粛に」
大神官の一声。
水を打ったように静まりかえる。
そして、中年の人たちが、丘の上に上がって、一列に並んだ。
…なんだか、嫌な予感がする。
「それでは、儀式を始めます」
[合せ鏡の世界・10]
王様と大神官は、中年の列の前に出た。
「諸君。いよいよ、旅立ちの時が来た」
王様の、朗々とした声が、丘に響き渡る。
「ここまで理想の世界の構築に尽力してくれたこと。王として、一人の人間として、感謝している」
王様の口上は続く。
「しかし、諸君。いよいよ、旅立ちの時が来たのだ。天界にて疲れを癒し、いつか再び、この理想の世界へと戻ってきて欲しい」
これで王様の口上は終わる。
次は大神官が口を開いた。
「それでは始めましょう。あなた方の旅路が、穏やかなものでありますよう」
そう言うと、大神官は、列の先頭にいる人の肩に、手を置いて…
…突き落とした。
“落とした”って言うのは、もちろん崖の下に、って意味で…。
崖の下は、一面の雲で…。
「ま、待てよッ!!」
叫んだ。駆けだした。
みんなの顔が、僕を向く。
でも、大神官の動きは変わらない。列に並んだ人たちは、次々と、崖の下へ、落ちていって…。
思うように足が前へ進まないのがもどかしい。
夢の中みたいに、もどかしい。
動け、動けよ、足。
早く“これ”を止めないと…!
「如何なさったのですか!? セルク様!?」
王様が立ちふさがる。
大神官の所へ行かせまいと。
いや、脇をすり抜けて…
がしっ
…捕まってしまった。
「…早く! 早く止めないと!」
振りほどけない。足掻いても、足掻いても。
「どうか落ち着いて! 大切な儀式の最中なのです! これこそが、老い無き世界の構築なのです!」
「セルク様! おやめ下さい!」
後ろからミクシィの声。
「うるさい! 僕は御子だぞ! 僕の言うことを聞けよッ!」
命令は空回りする。誰も言うことを聞こうとしない。
“御子様”の箔は、肝心なときに無力だ。
揉めてる間にも、大神官は、みんなを、掴んでは、投げ落として…!
直後。
「「バリィンッ」」
鏡が割れるような音が、頭上から降り注いだ。
僕も、みんなも、天を仰ぎ見た。
空が…割れた。
[合せ鏡の世界・11]
空が…割れた。
そうとしか形容できない。
大きな鏡の欠片のようなものが、キラキラと、空一面に散らばって。
同時に、頭上の黒い空が、みるみる大きくなっていく。
黒い空は、次第にその色を変えていく。
黒は、灰色を経て、白に移ろう。
黒い粉が散らばって、中にあった白い“なにか”が、姿を現した。
“白いなにか”は、みるみる、みるみる…大きくなっていく。
惚けたように空を見上げる僕、みんな。
ここでようやく気づく。
黒い空は、“落ちてきている”、って…。
「うわぁぁあああああ!!!!」
ようやく、悲鳴が上がった。
「皆様!! 落ち着いて下さい!! 落ち着いてェッ!!!」
大神官の絶叫。
混乱に拍車がかかる。
「セルク様!! こ、これは、ど、どういうことですかッ!?」
「そんなの、僕が知りたいよ!」
王様の問いに答えられる人なんて、居るわけがない。
“白いなにか”は、すぐそこまで。
ドスッ
足下に、何かが落ちた。
…それは人骨だった。
“白いなにか”は、“人骨”だと分かる位置まで。
そして…。
バラバラバラバラ…
人骨の山が、僕らを襲った。
[合せ鏡の世界・12]
世界が暗転した。
僕、死んだんだ…。
………
……
…
死んでない…。
唐突に終わりを告げる、真っ暗闇。
“黒”の代わりに“青”が広がる。
ごぱあっ
轟音、共に、こびり付く人骨の山が、すべて吹き飛んだ。
周囲の状況がわかる。
黒い空は消えていて…
“理想の世界”は粉々になっていて…
僕は雲の下へと落ちていた…。
…青い光を纏って…。
再び僕は、世界から消え去る。
この世界の残骸たちを残して。
[評議世界・2 side.B]
「評議を始めよう」
虚無に声が響いた。
有り得ない?
いいや、有り得ない。
ここは評議世界。
あらゆる下位概念は、評議の前に無力だ。
「対象世界は」
夢見る旅人が歩んだ軌跡。
「合せ鏡の世界」
理想を目指し、現実から目を背けた人々。
落とされた現実は、空の上から理想を睨み、やがて降り注ぐ。
粉々になった大地。
加害者は理想。被害者は現実。
己が業に潰された人々も、今は亡し。
夢の跡だけが落ち続ける世界に、存在意義は…。
「消去」
そして、その通りになった。