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夢見の丘  作者: きぎぬ
3/11

[合せ鏡の世界]編

[幸せの記憶・1]


父さんが死んでから、僕はずいぶん塞ぎ込んでいた。

まるで…世界が、灰色になったかのようで。

そして、いずれは僕も死ぬんだ、と考えては、眠れない夜を過ごした。


母さんは僕を慰めてくれた。

でも僕は、いずれは母さんも死ぬんだ、と考えては、嗚咽を漏らした。


そのときの世界は、きっと、灰色だった。



 パシンッ


平手で打たれた頬から、色がにじんだ。


「いつまでも泣いてるな!男でしょ!」

ルッツァだった。


思えばそのときだ。

ルッツァと初めて話をしたのは。






[評議世界・2 side.A]


夢見る旅人が、決して辿り着けぬ地…。


カルボモンドで出来た神経が、無限の演算要求を送り続ける。

女神を象った有機の像が、無限の演算結果を弾き出し続ける。

そこは異質な空間だった。


無より零れ落ちし闇の使徒たち。

彼らに言わせれば、そこは“いと尊き場所”である。


ふと、闇が蠢いた。

「さあ、始めよう」

紡がれた言葉。


宣言は、一度。

呼応は、無限。

そして世界は、震え出す…。



「深き大穴…浮かぶ大地…

落ちて来る現実…落ちて逝く理想…」






[合せ鏡の世界・1]


 ようこそ…ようこそ…

 理想の世界へ…ようこそ…


誰かの声が、うっすらと。


…懐かしい夢を見た気がする。

だけど、その前に…恐ろしい夢を見た気がする。


 ようこそ…ようこそ…

 理想の世界へ…ようこそ…


今も聞こえる誰か“たち”の声。

これは夢じゃない。現実だ。

そうだ、起きなきゃ…。


目を開けた。

「…め、目覚めたぞぉお!!」


 ぉぉぉおおおおお…


体を起こし、辺りを見回す。

儀式的な石造りの広場に、儀式的なかがり火の輪。

この場の中心は、疑いようもなく、僕だ。

「み、御子様…お加減はいかがですか…?」

「…最悪です」


叶うことなら、今までの悪夢が、文字通り、夢だったら良い。

目を覚ませば、そこは、あの日の風見丘で…。

そうだったらいいな、だなんて…思ったり…して…。


…ひょっとしたなら、あの赤と青の世界は、…そう、ひょっとしたなら、夢だったかもしれない。

でも、これは…間違いなく現実だ。


「な、なにか我々に至らぬ点がございましたか…御子様?」

広場を埋め尽くす人の群れ。その代表者らしき人が僕に尋ねた。

「無いですけど…強いて言うなら」


…僕はまた、変な世界へやって来てしまった。

「その“御子様”って言うの、やめて下さい」






[合せ鏡の世界・2]


「ようこそ! ようこそ!

理想の世界へ、ようこそ!

神の御子様!」



広場の代表者らしき人は、この国の大神官だということだった。

若いのに、なんだか凄そうな肩書きだ。

その大神官に引き連れられて、後ろを従者が付いてきて、周りの人垣から「ようこそ」コールが延々投げかけられて。


「どうして、僕は御子なんですか…?」

「御子様は天より降臨なされたのです。神の御子に違いありません」

「…“御子様”はやめて下さい。セルクでいいです」

「では、セルク様と」


シャルル・マナレイカは、僕の村と似たような家々が立ち並んでいた。

木を柱に、壁は煉瓦を用いた家。村と異なってた点は、二階建ての家が多かったことくらい。

…この街の家は、白い。煉瓦の赤色は全く見えない。

見慣れないそれが、どこか高級感を漂わせてる。


「僕をどこへ連れていくつもりですか?」

「お城です。国王に謁見して頂きます」

お城…。聞いたことはあっても、見たことはない。

「ああ、見えてきましたよ。あれがお城です」


「…大きい」


大きくて…、…、綺麗だった。

白と青を基調にした、清潔なデザイン。

上の方に、なにか意味ありげな図形が描かれた旗が、勢いよくはためいてる。

「風が強いとは縁起が良い。ええ、国旗の柄がよく見えますからね」

あれは国旗と言うらしい。


…?

お城の存在に圧倒されて、気付かなかったけど…。

空が、黒い…?

雷雲よりも、ずっと…。雲の黒さじゃない気がする。

「…空、黒いですね」

「…ええ、遠くの空は青いのに…。どうせなら、頭上の空は青く美しくあって欲しかったものです」

確かに、遠くの空は青かった。

少なくともここは、“あの世界”では無いんだと思う。


「ささ、こちらです。足下にお気を付けて」

長い階段の先に、お城の入り口が見えた。


「ようこそ! ようこそ!

理想の世界へ、ようこそ!

神の御子様!」


いい加減うるさい。






[合せ鏡の世界・3]


…いったい、何人の人間が肩車をすれば、あの天井に届くんだろう。

お城の中は、無闇にだだっ広い。

意味、あるのかな、この広さ。


「ようこそおいで下さいました、神の御子様」

頭を下げるのは、この国の王様。

さっきの大神官もそうだけど、とても若い。

特に王様なんか、僕と比べたって、大して年が離れてないんじゃ…?


「そんな、大げさな…」

「そう言うわけには参りません。天より来たる御子様に礼儀を欠いては、“理想の世界”の名折れです」

何度も出てくるフレーズ、“理想の世界”…。


「ここへ来てから“理想の世界”ってよく聞くんですけど…どういうことですか?」

「なんと、お気づきになられませんでしたか。真に残念です…」

すぐに気づくことらしい。町並みが綺麗だったけど…そういうことじゃないのかなぁ。

「よろしければ街を見学なさって下さい。じきに、お分かり頂けることでしょう」

「はぁ…じゃあ、散歩してみます」

「ええ、きっとお気に召しますよ」


「あ、そうだ。ひとつ、いいですか?」

「もちろんですとも」

「御子様って呼ぶの、やめてくれませんか」

この台詞、これで最後だと良いなぁ。






[合せ鏡の世界・4]


「ようこそ! ようこそ!

理想の世界へ、ようこそ!

セルク様!」



謁見の後、王様が、大神官に変な道具…ラッパみたいなもの…を渡して、なにかを命じてた。

僕が城を出たあとに

「国民の皆様! 御子様は御子様の呼び名を好まぬご様子!セルク様とお呼びするよう命じます!」

と超大音量で聞こえたのは、その変な道具が“拡声器”という、声を大きくする道具だからだそうだ。


呼びかけのおかげで、街を散歩する僕を“御子様”と呼ぶ人はいない。

…代わりにセルク様、と呼ばれるのも、こそばゆいんだけど。

だけど、これ以上はきっと、妥協してくれない。


「僕が“天より降臨した”…ってことですけど、詳しく教えてくれませんか?」

「はい、心得ました。しかし、申し訳ない、私は現場に居合わせなかったもので…。目撃者に直接訊きに参りましょう」


散歩の際にさえ、隣を歩く大神官、護衛なのかお目付役なのか…。

「“理想の世界”で、万に一つでも何かがあっては一大事。多少の息苦しさはご勘弁を」

どうもこの世界で、自由に羽を伸ばすことは…出来そうにない。


…さて、これから僕は、どうしよう。

この国で、神の御子として暮らしていくのか。

それとも、どうにか神の御子なんかじゃないと説得して、一市民として暮らしていくのか。



…うん、こうしよう。



他人事のように考えて、他人事のように結論したのは…

立て続けで起きた大事件に、精神が麻痺してしまったから?


ともあれ、結論はこうだ。


目撃者の話を聞いてから決める。






[合せ鏡の世界・5]


目撃者の少年は、こう語った。

「真っ黒な空から、セルク様がゆっくりと降りてきたんだ。

セルク様は眠ってて、だから、体はぐにゃんってなってて。

でも、ぐにゃんってなってても、青い光を出してて! すごく綺麗だったんだ!」


完全に脱力して眠っていた僕が、青い光を纏って、ゆっくりと空から降りてきた、と。


僕は、飛べない。

僕は、光れない。


「本当にこの顔? 別人じゃなくて?」

「ありえないよ! 降りてきたセルク様が、旅立ちの丘にフワッて降りて、それでボクが駆け寄って、お顔を見たんだ。うん、同じお顔だよ!」

間違いなく僕らしい。


「…少年よ。セルク様に対しては、敬語を使うように」

「あ、ご、ごめんなさい!セルク様!」

「いやいや」


…目撃者の話は、こんな有様。

嘘をついてるようには、到底、見えない。見間違いでもないらしい。

謎は残る…だけど…。

僕は、…無意識にしても、神々しいことをやらかしちゃったみたいだ。


…言い訳、どうしよう。


「それではセルク様。陽が落ちる頃合いです。お城に帰ると致しましょう」

…いや、これからの生き方を決めるのは、お城での生活を体験してみてからだって、いいかもしれない。

いつか、長老が話してくれたっけ。

お城では豪勢な食べ物がいっぱい出る、って…。


「さあ、セルク様」

「…あ、はい」

結論はまた先延ばしだ。


…まあ、急ぐ必要なんてないか。



 “時間だ”



幻聴は、あの昏い声。

僕の楽観を、打ち砕くように…。






[合せ鏡の世界・6]


歓迎会の規模は、僕の予想なんか軽々飛び越えた。


色とりどりの鮮やかな服で着飾った貴族が。

色とりどり匂いとりどりの豪奢な食事が。

…まるで異世界だ。

いや、間違いなく異世界なんだけども。


「お味の方はいかがでございましょう?」

「とても…美味しいです」

今まで僕が食べてきたものはなんだったんだろう。まるで次元が違う。

「ありがとうございます。そのお言葉を頂戴出来て、私は果報者です」

大仰に振る舞うコックたちは、満足したのか、再び厨房へと。



「セルク様。この“理想の世界”を気に入って頂けましたか?」

年若い王様の問いに。

「はい。綺麗な家々、美味しい料理。夢みたいです」

僕の本心を。


「…!! …ありがとうございますっ」

…王様、泣いてる?


「あの…僕、なにかまずいことでも…?」

「と、とんでもない! むしろ、最大の賛辞ですとも! 天にも昇る気持ちでございますとも!」

なんだか熱が入っている。

「“理想の世界”を目指し続ける我々にとって、かけがえのない…!」

…オーバーすぎて、反応に困る。話題を変えよう…。


「ところで…“理想の世界”って、どういうことですか?」

王様の目が、鋭く変わる。

「セルク様も、街を見て、この食卓を見て! お分かり頂けたはずです!」

お前はそんなこともわからないのか、と言いたそうな目で…。

「美しい街並! 贅を尽くした食事! 心清き国民! 老い無き世界!」

…ッ!

そうだ…今、気付いた…。


この世界で、老人を見ていない。

いや、老人どころじゃない。

中年の人さえ見ていないんだ。


「これこそが理想の世界! 完璧なる、美と調和を保った世界! これを“理想”と呼ばずして何と呼びましょうや!?」


年を取らない人々が暮らす世界…。

僕の常識なんか通用しない世界…。






[合せ鏡の世界・7]


翌朝、あてがわれた部屋で。

「今夜はダンスパーティを催します」

…昨夜の歓迎会じゃ足りない、って?

「お体の調子が優れないので無い限り、ご出席頂きますよう。なにしろ主賓がご不在では始まりません故」


ダンスパーティは夜に行われた。

昨日よりも人が多い。

それに、もっと色鮮やかだ。


ダンスが始まる。

華やかな人々が、華やかに踊ってる。

場違い感が凄まじい。

僕は、本当に、こんなところにいていいんだろうか。


「もし。セルク様」

声の主は、女の子。

たぶん、僕と同じくらいの年。


「セルク様さえよろしければ、わたくしと踊って頂けませんか?」

「あの、えと…」

…言葉がうまく出ない。

不意に話しかけられたから、ってのもあると思うけど、それ以上に…。

強い意志に圧倒される、と言うか…。


「セルク様」

女の子の手が、僕の手と重なる。

ルッツァやティナに手を握られるのは大丈夫だけど…この子の場合…

…すごく、どきりとする。

「わたくし、ミクシィと申します。よろしくお願い致しますね」


ちぐはぐなダンスが始まった。






[合せ鏡の世界・8]


服に着られてる、って、このことだ。

姿見に、ちぐはぐな僕の姿が映ってる。

言われるままに着せられた服とは言っても…

こんな格好で、さっきのダンスパーティに参加したんだ…。

恥ずかしくてたまらない。



ダンスパーティが終わったあと、僕は再び自室に案内されていた。

綺麗で、広くて、よそよそしい部屋。

長く暮らせば、よそよそしさはなくなるだろうか。


「失礼。よろしいでしょうか」

閉じられたドアから、ノックの音と、王様の声。

「どうぞ」の“ど”を発した途端、ドアは開かれ、王様が部屋に入ってきた。

「先ほどのダンスパーティ、とても優雅に振る舞っておいででしたよ」

ミクシィはね。


「さて、明日のご予定ですが」

…僕が御子として生きていく限り、この国のあらゆる行事に参加させられるらしい。

「御子様が降臨なされた場所でもございます“旅立ちの丘”にて、大変大事な儀式がございます」

…僕が、降りた場所…。

「この国が“理想”たる所以、是非ともご覧下さいませ」


…理想たる所以…?

神様にお祈りとか?



…頭の片隅に、くっきりと浮かびあがる“真っ赤な儀式”。

見ないように、見えないように、…信じないように。






[合せ鏡の世界・9]


今更、なにを驚くことがある?


赤い空と青い大地を見た。

黒い空と老いない人々を見た。


今更、驚くことじゃない。

この国が、空に浮かんでるなんて、驚くことじゃない…。


儀式が行われる“旅立ちの丘”は、崖っぷちにあった。

崖の上には、一面の黒い空。

崖の下には…一面の白い雲。

この世界に住む人々にとって、なにも不思議なことはない…。



人々は、旅立ちの丘を取り囲むように並んでいた。

僕が並ばされた場所は、貴族の人たちが集まるところ。

その中には、王様もいて、あ、ミクシィもいる。

遠くには真っ白な服装の人々。

一番目立つところに、大神官が見える。

そして右手には、…、…あれ?


この世界に来て、初めて見た。

中年の人たちが、たくさんいる。

その中に紛れて、小さな子供がちらほら見える。

中年の人たちと子供たちは、互いに抱き合ったりしていて。

…その光景は、まるで別れを惜しんでいるように見えた。


「静粛に」

大神官の一声。

水を打ったように静まりかえる。

そして、中年の人たちが、丘の上に上がって、一列に並んだ。


…なんだか、嫌な予感がする。


「それでは、儀式を始めます」






[合せ鏡の世界・10]


王様と大神官は、中年の列の前に出た。


「諸君。いよいよ、旅立ちの時が来た」

王様の、朗々とした声が、丘に響き渡る。

「ここまで理想の世界の構築に尽力してくれたこと。王として、一人の人間として、感謝している」

王様の口上は続く。

「しかし、諸君。いよいよ、旅立ちの時が来たのだ。天界にて疲れを癒し、いつか再び、この理想の世界へと戻ってきて欲しい」


これで王様の口上は終わる。

次は大神官が口を開いた。


「それでは始めましょう。あなた方の旅路が、穏やかなものでありますよう」


そう言うと、大神官は、列の先頭にいる人の肩に、手を置いて…


…突き落とした。


“落とした”って言うのは、もちろん崖の下に、って意味で…。

崖の下は、一面の雲で…。


「ま、待てよッ!!」

叫んだ。駆けだした。

みんなの顔が、僕を向く。

でも、大神官の動きは変わらない。列に並んだ人たちは、次々と、崖の下へ、落ちていって…。


思うように足が前へ進まないのがもどかしい。

夢の中みたいに、もどかしい。


動け、動けよ、足。

早く“これ”を止めないと…!


「如何なさったのですか!? セルク様!?」

王様が立ちふさがる。

大神官の所へ行かせまいと。

いや、脇をすり抜けて…


 がしっ


…捕まってしまった。

「…早く! 早く止めないと!」

振りほどけない。足掻いても、足掻いても。

「どうか落ち着いて! 大切な儀式の最中なのです! これこそが、老い無き世界の構築なのです!」


「セルク様! おやめ下さい!」

後ろからミクシィの声。

「うるさい! 僕は御子だぞ! 僕の言うことを聞けよッ!」

命令は空回りする。誰も言うことを聞こうとしない。

“御子様”の箔は、肝心なときに無力だ。

揉めてる間にも、大神官は、みんなを、掴んでは、投げ落として…!


直後。



 「「バリィンッ」」



鏡が割れるような音が、頭上から降り注いだ。

僕も、みんなも、天を仰ぎ見た。


空が…割れた。






[合せ鏡の世界・11]


空が…割れた。

そうとしか形容できない。

大きな鏡の欠片のようなものが、キラキラと、空一面に散らばって。


同時に、頭上の黒い空が、みるみる大きくなっていく。

黒い空は、次第にその色を変えていく。

黒は、灰色を経て、白に移ろう。

黒い粉が散らばって、中にあった白い“なにか”が、姿を現した。

“白いなにか”は、みるみる、みるみる…大きくなっていく。


惚けたように空を見上げる僕、みんな。

ここでようやく気づく。

黒い空は、“落ちてきている”、って…。


 「うわぁぁあああああ!!!!」

ようやく、悲鳴が上がった。



「皆様!! 落ち着いて下さい!! 落ち着いてェッ!!!」

大神官の絶叫。

混乱に拍車がかかる。


「セルク様!! こ、これは、ど、どういうことですかッ!?」

「そんなの、僕が知りたいよ!」

王様の問いに答えられる人なんて、居るわけがない。


“白いなにか”は、すぐそこまで。


 ドスッ


足下に、何かが落ちた。


…それは人骨だった。


“白いなにか”は、“人骨”だと分かる位置まで。



そして…。



 バラバラバラバラ…


人骨の山が、僕らを襲った。






[合せ鏡の世界・12]


世界が暗転した。

僕、死んだんだ…。


………

……


死んでない…。


唐突に終わりを告げる、真っ暗闇。

“黒”の代わりに“青”が広がる。


 ごぱあっ


轟音、共に、こびり付く人骨の山が、すべて吹き飛んだ。



周囲の状況がわかる。


黒い空は消えていて…

“理想の世界”は粉々になっていて…

僕は雲の下へと落ちていた…。


…青い光を纏って…。



挿絵(By みてみん)



再び僕は、世界から消え去る。

この世界の残骸たちを残して。






[評議世界・2 side.B]


「評議を始めよう」

虚無に声が響いた。


有り得ない?

いいや、有り得ない。


ここは評議世界。

あらゆる下位概念は、評議の前に無力だ。


「対象世界は」

夢見る旅人が歩んだ軌跡。

「合せ鏡の世界」



   理想を目指し、現実から目を背けた人々。

   落とされた現実は、空の上から理想を睨み、やがて降り注ぐ。

   粉々になった大地。

   加害者は理想。被害者は現実。

   己が業に潰された人々も、今は亡し。

   夢の跡だけが落ち続ける世界に、存在意義は…。



「消去」

そして、その通りになった。


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