第99話:私の後悔
「さあ、王宮に着いたよ。疲れただろう。お茶にでもしようか」
「その前に、お庭に行きたいですわ。この2週間、ずっと来られなかったので、お花たちやスカイの様子を見たいのです」
私がお世話すると決めていたのに、ここ2ヶ月忙しくてろくにお世話が出来なかった。特にこの2週間は、全く何もできていなかったのだ。私の大切なお花やスカイたちは、大丈夫かしら?
私のお庭に着くと、すぐにスカイと子供たちが飛んできたのだ。
「スカイ、皆、元気だった?あら?」
なぜかいつも私の元にくるはずのスカイと子供たちが、一目散にファラオ様の元に向かったのだ。
ミャーミャーと鳴きながら、ファラオ様の足に巻き付いている。
「君たち、ここは空気を読んでソフィーナの元に行ってくれないと…仕方ないな、食事をあげるから待っていてね」
食事の器を手に持って待っている使用人たちから、ファラオ様が器を受け取った。
「はい、ソフィーナがあげて。最近ずっと、ソフィーナが来ていなかっただろう?だからきっと、この子たちがすねちゃったんだ。君から食事をあげれば、また懐くよ」
確かにずっとスカイたちに会いに来ていなかったから、すねてしまったのかもしれない。
「皆、ごめんね。今日からはちゃんと来るから、許してね」
そう伝え、食事をあげた。美味しそうにご飯を食べるスカイたち。食事を見守った後は、私が育てていたお花たちの元に向かった。
すると…
「なんて綺麗なのかしら?大きなダリアの花が咲いているわ。こっちには、カサブランカも。あなた達がお世話をしてくれたのでしょう?ありがとう。お庭もとても綺麗になっているし」
近くに控えていた庭師たちにお礼を言う。
すると
「いいえ、私共ではございません。全てお世話は殿下がなさったのです。忙しい合間を見つけては、せっせとお世話をなされて。スカイ様たちのお世話も、ずっと殿下がされていたのですよ」
なんと!私以上に忙しかったはずのファラオ様が、お庭のお手入れからスカイたちのお世話までしていたというの?
「ファラオ様、それは本当ですか?目が回るほど忙しかったはずなのに、どうして使用人に任せなかったのですか?」
お庭のお手入れやスカイたちのお世話は、忙しいときは庭師たちが率先してやってくれていたと聞く。それなのに、どうして?
「この園は、僕と君を繋ぐ大切な場所だろう?だからこそ、僕の手で手入れをしたかったんだ。それにこの2週間、ここに来るとなんだかソフィーナが傍にいてくれる気がして、心が落ち着くんだ。
ソフィーナの嬉しそうな顔を想像しながらお花やスカイたちの世話をしていると、心が温かくなって。ついここに足を運んでしまって…」
悲しそうに呟くファラオ様を見ていたら、胸が締め付けられた。
「ファラオ様、ごめんなさい。私が間違っておりましたわ。やはりあの時、ファラオ様に事情を話しておくべきでした。それなのに私は…」
私はあの時、アラン殿下とアイリ殿下2人への憎しみから、彼らを断罪する事ばかりを考えていた。その結果、一番大切なファラオ様に深い傷を負わせてしまったのだ。ファラオ様にとって、私から避けられていた10日間が、どれほど辛いものだったか。
「ソフィーナ、泣かないで。君は僕の為に、彼らを断罪しようと頑張ってくれていたのだろう。外に出る事が誰よりも大好きな君が、屋敷に10日間も引きこもるだなんて、どれほど辛かったか。だからどうか、もう謝らないで。僕は今、とても幸せだから。
だって大好きな君が、傍にいてくれるのだもの。君に会えない時間、僕は改めて気が付いたことがあるのだよ。君が僕にとって、どれほどかけがえのない大切な存在なのかを。
こんな事を言うと語弊があるかもしれないが、あの10日間は、僕にとってはソフィーナの大切さを改めて考える事が出来た、貴重な期間だったのかもしれないと思っているよ」
私の事を考える、貴重な期間…
※次回、最終回です。
よろしくお願いします。




