第3章
定禅寺通りの新緑の欅並木が夕暮れに淡く色づく。昼間はあれほど生命の息吹を放出していた樹々たちも、ようやく眠りに就こうとしていた。
ひとりの膝まであるだぶだぶの白いパーカーを着た少女が、定禅寺通りと国分町通りとのスクランブル交差点を渡ろうとしていた。ブラウンのミディアムヘアがほのかに赤く反射し、きょろきょろしながらも彼女は、交差点から中央分離帯の遊歩道へ入って行った。
夕映えた豊潤な葉叢が頭上を覆う。どこか神秘的な樹々を少女は見上げた。
──これがユッキーさんの言っていた大きく美しいケヤキたちなのね!
夕映えた赫く濃密な葉叢に覆われた少女は、信じられないようなやさしい眼差しを感じた。
そのまま彼女は、躊躇うことなく豊潤な葉叢に包まれた遊歩道を西へ向かった。
──央分離帯の遊歩道にある3つのブロンズ像のうち、真ん中の像のすぐ傍の南側ベンチの下を見てください!
少女はユッキーのことばを思い返していた。
少し歩くと高さが2メートル以上ある黒いブロンズ像が建っていた。息を吐きながら少女は立ち止まり、細身の少年の姿のブロンズ像を見上げた。
──このブロンズ像? おそらくここが真ん中のはず!
すぐに少女は、ブロンズ像傍の南側の木製ベンチに気づいた。
そしてそっと試すように木製ベンチに腰掛け、ふたたび濃密な葉叢のケヤキたちを見上げた……




