内見 ②
【闇堕ち少女、怨霊と化す!】
憎悪の炎は死んでも消えない!
呪い系バッドエンドサイコホラー。
営業マンが運転する車で不動産屋に戻る。地域密着型という感じの、こじんまりとした店舗だ。
恭弥がマコと並んでカウンター席に腰を下ろすと、事務員らしき中年女性が湯気の立つお茶を二人の前に置いた。
お茶をすすりながら二人で待っていると、営業マンが書類を手にして現れた。
二人の前に座った営業マンの表情が、ふいに硬くなった。
「……契約の前に、一つお伝えしておくべきことがありまして」
「え、なんですか?」
マコが少し身を乗り出してたずねた。
営業マンは少しためらいがちに口を開いた。
「実は、以前あの部屋に住んでいた方のもとに、こんなものが……」
そう言うと、営業マンは一枚の紙をカウンターの上に置いた。
それは新聞の切り抜きで作られた手紙で、恭弥には見慣れたものだった。
「そ」「の」「部」「屋」「は」「呪」「わ」「れ」「て」「い」「る」「。」「後」「悔」「し」「た」「く」「な」「け」「れ」「ば」「今」「す」「ぐ」「出」「て」「い」「け」「。」「こ」「の」「警」「告」「を」「無」「視」「す」「れ」「ば」「、」「お」「前」「だ」「け」「で」「な」「く」「身」「近」「な」「人」「間」「に」「も」「不」「幸」「が」「訪」「れ」「る」「だ」「ろ」「う」「。」
「きゃっ! やだ、怖い!」
マコが大げさに驚くふりをして見せる。
その迫真の演技に感心しながら、恭弥は営業マンに聞く。
「あの部屋で、何かあったんですか?」
営業マンは慌てて首を横に振った。
「いえいえ、そんなことはありません。まだ築浅ですし、あの部屋に限らず、他のどの部屋でも何も起こってませんよ」
「じゃあ、何でこんなものが?」
「おそらく、単なるいたずらじゃないかと……」
マコが不安げな様子を装って口を開く。
「恭弥君、やめたほうがいいかな?」
「うーん、いい部屋だったからなぁ……」
恭弥は悩むふりをしてから、営業マンに念を押すように聞いた。
「本当に、何もないんですよね?」
「ええ、それは断言できます」
営業マンは自信たっぷりに答えた。
「なら、だいじょうぶじゃね?」
「そうかなぁ……」
マコは不安げな演技を続ける。
恭弥は営業マンに顔を向けた。
「ちなみに、手紙のこともあるんで、家賃とか、もう少し安くなったりしません?」
営業マンは困った顔をして頭をかいた。
「これでも、かなり下げてるんですよね……。あの、少々お待ちいただけますか? 今からオーナーに確認してみますんで」
営業マンは軽く頭を下げると、オーナーと連絡を取るためにカウンターの奥へ消えた。
恭弥はマコとともに、お茶をすすりながら静かに待った。
五分ほどして営業マンが戻ってきた。
「お待たせしました。オーナーと話したところ、一万円ほどならお値引きできるとのことです。いかがですか?」
恭弥は、なおも不安げなふりをしているマコに言った。
「だいぶ格安だよ。あそこに決めちゃえば?」
「そうだね。恭弥君がそう言うなら、あそこにする」
マコの言葉に営業マンが満足げな笑みを浮かべるのを見て、恭弥は内心でほくそ笑んだ。
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