呪いの原因 ①
「綾、おはよ」
教室で声をかけると、綾は露骨に顔をしかめた。
親友のあからさまな拒絶に、華菜子は唖然とする。目に軽蔑の色を浮かべて綾は無言で離れていく。
華菜子の胸に、鋭いナイフが突き刺さったかのような痛みが走る。すぐに、教室の空気がおかしいことに気づく。周囲の視線が自分に集まっている。怖々と目をやると、彼らは異物でも見るような目つきでこちらを見ていた。
「なんなのこれ……」
まるで教室で一人だけ裸にされたような羞恥心が襲いくる。華菜子は震える身体を両手で抱きしめて席に着く。ヒソヒソと話す声が耳に届いてくる。内容は聞き取れなかったが、間違いなく自分のことだ。
朝礼が始まると、華菜子はさらに驚かされる。担任教師までもが気まずそうな表情を浮かべていたからだ。何か良からぬことが起こっていることを悟り、華菜子は教室から逃げ出したい衝動に駆られた。
授業が始まり、小休憩を挟んで二限目が始まっても、華菜子は一度も席から動けなかった。とにかく、亀のように身動きせず、じっと息をひそめていた。これ以上、余計な注目を浴びたくなかった。
二限目の授業が始まってすぐに、前方のドアが開き、担任の男性教師が姿を見せた。教室内に無言のざわめきが広がった。
深刻そうな表情を浮かべた担任教師は、教鞭を執っていた数学教師を呼び寄せると耳打ちをした。数学教師は小さくうなずき、一歩下がって担任教師に道を空けた。
ドア付近に立ったまま、担任教師が華菜子に視線を向けた。
「原口、ちょっといいか?」
その言葉に、教室内が大きくどよめいた。「やっぱりあの噂、本当みたいだな」と低い声で発せられた男子生徒の言葉が華菜子の耳に届いてきた。
華菜子は周囲の痛い視線に耐えながら教師のもとへ向かった。まるで、自分が犯罪者にでもなったような気分がした。
「原口、いっしょに来てくれ」
華菜子は小さくうなずくと、重い足取りで教師のあとに続いた。
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