善行 ①
【闇堕ち少女、怨霊と化す!】
憎悪の炎は死んでも消えない!
呪い系バッドエンドサイコホラー。
「どう? あれから何もない感じ?」
真由美が箸を休めて近況を聞いてきた。
大学の食堂は、多くの学生たちでにぎわっていた。
「うん、まったく何も」
「それはよかった。一週間何もないなら、もうだいじょうぶかもね」
「だといいけどね」
奈央はそう答えたが、内心ではかなり楽観的だった。正直、例の問題から解放された気がしていた。
真由美が声を弾ませながら続ける。
「でも、ほんとすごいよね、あの岩国さんって人。見た目チャラい感じだったけど、できる人だったんだね」
「うん、だね」
確かに、岩国は期待をはるかに超えた働きをしてくれた。一分もかからずに張り終えた結界が、しっかり効果を発揮したのだから。
でもさ、と奈央はお茶を一口飲んでから続けた。
「あの変な現象も、今思えば夢だったんじゃないかなって」
そう言うと、真由美は同意するようにうなずき、神妙な顔で口を開いた。
「その可能性はあるよね。だってあたしも高校のときさ、寝てる間に何度もからだが宙に浮いたことがあるんだ。でも、きっとあれも夢だったんだと思うし」
「からだが浮くって……怖いね」
「うん。高校時代は変なストレスが多かったから、そのせいでおかしくなってたのかも」
「そうだね。きっとストレスが原因かもね」
「だから奈央もさ、知らないうちにストレス溜めてたんじゃない?」
「そうかも」
「本当は結界なんて嘘っぱちで、ただ張ってもらったっていう安心感が、いい結果に結びついたってだけかもしれないし」
「確かにそうかもね」
「きっとそうだよ。とにかく、元の生活に戻れてよかったね」
「うん、ありがと」
奈央は平穏な日常が訪れた喜びを改めて噛みしめた。
すると真由美が話題を変えた。
「ところで、彼氏とはその後どう?」
その言葉に、奈央の気分はとたんに沈み込んでいく。
「相変わらず……。最近じゃ、電話しても折り返しもなくて」
「マジで? それはきついなぁ……」
恋人の雅は、ある日突然奈央から気持ちが離れていったように感じられた。急に笑顔を見せなくなり、浮かべたとしてもそれは引きつったような作り笑いだった。他に女ができた可能性もある。だが、彼は気が弱いほうだったから、別れ話を切り出す勇気がないのかもしれない
「彼、もしかしたら浮気してるのかも……」
否定の言葉を期待しての発言だったが、真由美は奈央の意に反して大きくうなずいた。
「まあ、大学行ってたら、出会いなんて腐るほどあるしね」
友人の言葉に、奈央の胸がずきりと痛んだ。
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