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【呪い系ホラー】こはるちゃん、いっしょに。  作者: てっぺーさま
第一章 心霊現象

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10/19

善行

【奈央に迫る怨霊の正体とは!?】


心霊現象に怯える奈央は、霊能者・岩国啓一郎に助けを求めるが——。

「どう? あれから何もない感じ?」

 真由美が箸を休めて近況を聞いてきた。

 大学の食堂は、多くの学生たちでにぎわっていた。

「うん、まったく何も」

「それはよかった。一週間何もないなら、もうだいじょうぶかもね」

「だといいけどね」

 奈央はそう答えたが、内心ではかなり楽観的だった。正直、例の問題から解放された気がしていた。

 真由美が声を弾ませながら続ける。

「でも、ほんとすごいよね、あの岩国さんって人。見た目チャラい感じだったけど、できる人だったんだね」

「うん、だね」

 確かに、岩国は期待をはるかに超えた働きをしてくれた。一分もかからずに張り終えた結界が、しっかり効果を発揮したのだから。

 でもさ、と奈央はお茶を一口飲んでから続けた。

「あの変な現象も、今思えば夢だったんじゃないかなって」

 そう言うと、真由美は同意するようにうなずき、神妙な顔で口を開いた。

「その可能性はあるよね。だってあたしも高校のときさ、寝てる間に何度もからだが宙に浮いたことがあるんだ。でも、きっとあれも夢だったんだと思うし」

「からだが浮くって……怖いね」

「うん。高校時代は変なストレスが多かったから、そのせいでおかしくなってたのかも」

「そうだね。きっとストレスが原因かもね」

「だから奈央もさ、知らないうちにストレス溜めてたんじゃない?」

「そうかも」

「本当は結界なんて嘘っぱちで、ただ張ってもらったっていう安心感が、いい結果に結びついたってだけかもしれないし」

「確かにそうかもね」

「きっとそうだよ。とにかく、元の生活に戻れてよかったね」

「うん、ありがと」

 奈央は平穏な日常が訪れた喜びを改めて噛みしめた。

 すると真由美が話題を変えた。

「ところで、彼氏とはその後どう?」

 その言葉に、奈央の気分はとたんに沈み込んでいく。

「相変わらず……。最近じゃ、電話しても折り返しもなくて」

「マジで? それはきついなぁ……」

 恋人の(みやび)は、ある日突然奈央から気持ちが離れていったように感じられた。急に笑顔を見せなくなり、浮かべたとしてもそれは引きつったような作り笑いだった。他に女ができた可能性もある。だが、彼は気が弱いほうだったから、別れ話を切り出す勇気がないのかもしれない

「彼、もしかしたら浮気してるのかも……」

 否定の言葉を期待しての発言だったが、真由美は奈央の意に反して大きくうなずいた。

「まあ、大学行ってたら、出会いなんて腐るほどあるしね」 

 友人の言葉に、奈央の胸がずきりと痛んだ。


    *  *  *


 午後の講義を終えた奈央は、真由美と連れ立って最寄駅へ向かった。

 駅に着くと、募金活動が行われていた。貧困世帯の子どもたちを支援するためらしい。同世代と思われる五人ほどの男女が、笑顔で通行人たちに援助を呼びかけている。

 奈央は迷わず財布を取り出すと、黒髪の女性が持つ募金箱に千円札を差し込んだ。

「ご協力ありがとうございます!」

 女性の元気な声が広場に響き渡る。

 隣に立つ真由美が、えらく感心したように目を細めた。

「奈央、えらいね。進んで募金するなんて」

「だって、いいことすると気持ちがいいじゃん。真由美もやってみたら?」

「じゃあ、少しだけ」

 真由美は財布から百円玉を一枚ぎこちなく取り出すと、硬貨をそっと募金箱に落とした。

「ご協力ありがとうございます!」

 再び明るい声が響く。

「ね、気持ちいいでしょ?」

「まあ、悪くないかもね」

「一日一善だよ」

 奈央はそう言うと、軽い足取りで改札口へと向かった。

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