19 クリスマス(挿絵あり⭐️)
12月25日。
クリスマスの時短営業が終わって、片づけが済んだ21時過ぎ。
「後はもう良いから、二人で行ってらっしゃいな」
クリスマスツリーを見に散歩に行く。
女将さんには杏奈が話してくれていたらしい。
「杏奈、寒いからマフラーして行きなさいね」
「え? あ⋯⋯はい」
確かに、今日は夜、特に気温が下がる予報だった。
有楽町駅近くの、日比谷ミッドタウンのあたりで、今夜まで、イルミネーションに彩られた大きなツリーが設置されている。23時までらしいから、まだ間に合う。
外は、今年一番の冷え込み。
首筋もだいぶ寒いので、コートの襟を立てた。
杏奈は、白に近い、淡いピンクのコート姿。ワインレッドのマフラーが確かに暖かそうだし、なんだかクリスマスっぽい。
そのクリスマスも、残り3時間を切って、街は心なしか、昨日よりも静かだった。
「雪でも降りそうですね」
杏奈の言葉は、冷たい空気に白く輝いた。
有楽町駅から、日比谷公園の方向へ。
「わぁ……!」
日比谷ミッドタウンとゴジラ像の間の広場は、宝石箱をひっくり返したように、オレンジ、赤、黄色、緑、たくさんの光が散りばめられていた。 その中央に、柔らかな光をまとって、クリスマスツリーが輝いている。
「これは穴場ですねー! 綺麗! 見てください! クリスマスツリー!」
ツリーを指さすと、杏奈が足取り軽く、イルミネーションの海に駆け寄っていく。
たくさんの美しい電飾も、光り輝くクリスマスツリーも、今日は全部引き立て役だった。
こんな美しい光景は、見たことがない。
ツリーの前で手を振る杏奈に、ゆっくり近づいた。
「これ、プレゼント」
斜めがけのバッグから、小箱を取り出して、杏奈に差し出す。
「え! 私に?」
「そりゃ、他にいないだろ。ちょっと、つまんないものだけど……」
「開けていいですか?」
「まぁ……」
中に入っていたのは……銀色の箸。
「弁当に使ってる箸、ぼろぼろだったろ。これ、すげぇ耐久性があるやつだから」
我ながら、色気のないプレゼントだなぁ。
やっぱり、ネックレスとか、何か貴金属でも……。
「う……うれしすぎます! もう最高です! 本当にいいんですか?!」
満面の笑みで、飛び上がる勢いで喜んでいるので、これで良かったのかも。
「見ててくれたんですね……。ありがとうございます……あれ? これ……」
K to A
え?
刻印入ってる……。
「これ……」
「え?! なんだこれ! あの店……確かに、送る相手の名前聞かれたけど……」
一樹 to 杏奈 !
こ、これじゃ指輪か何かの刻印みたいじゃないか!
「わ、悪ぃ。これじゃ使いにくいよな……ちょっと直してもらうから……」
「だ、ダメです!」
杏奈が箸を抱きしめるように抱え込んだ。
「これが良いです」
ほんとかよ……。
「橋本さん、その……私も、今日渡そうと思ってた物があるんです」
杏奈は手提げのトートバッグから、赤いラッピング紙で包まれた物を取り出した。
「俺に?」
「はい、その……開けてください」
慎重に包みを開けると、柔らかい、さわり心地の良い濃紺のマフラー。触っているだけでも暖かい。
「……これ、手編みか?」
「はい……。あの、高いものとかじゃないですけど……。一ヶ月、頑張ったんですよ!」
まさか、手作りをしてもらえるとは。
遅くまで、これを作ってたのか。
「これより高い物は、ないよ。ずっと、大事にする」
マフラーを首に巻いてみた、そのとき。
「なんだー、すげー美人さんがいるじゃん」
「おー、ほんとだー」
サラリーマン風のおっさん二人。
明らかに泥酔している。
ほんの少し歩いた駅のガード下は飲み屋街。そこから流れてきたのだろう。
「なに? なんかの撮影? モデルさん? 俺たちとも写真とってくれないですかー?」
「その……」
困り顔の杏奈の前に、俺はすっと立った。
読んでいただいてありがとうございます!
次で最終回になります!
すっと出たかっこいい橋本さんは、かっこよく告白できるのか、、、
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