グランドホーン登場
二人は街の外れの森に足を踏み入れ、グランドホーンディアの匂いを追いながら進む。
ユウキはリリスの後ろ姿を見つめ、戦闘モードの彼女の凛々しさに心を奪われる。
(なんだろう……あんなに強くて美しいのに、隣にいる僕は、ただ見てるだけ…本当に足手まといだ…)
森の奥へ進む二人。
リリスは警戒を怠らず、周囲を見渡しながら言った。
「なかなか姿を現さないわね」
その瞬間――轟音のような咆哮が森に響き渡る。
木々が震え、葉がざわめく。
「リリスさん、こっちです!」
ユウキは必死で声を張り上げ、咄嗟に見つけたグランドホーンディアの姿を指差す。
(やばい…戦闘だ……僕はただの荷物持ちなのに……でも、リリスさんがいるなら…いや、でも何もできない……)
思わず頭を抱え、森の茂みに身を潜めながら、戦闘を遠巻きに見守るしかなかった。
リリスは槍を握り、鋭い目で獲物を見据える。
(あの子……また顔が赤くなって……必死で後ろに隠れてる。かわいいけど、少しもどかしい…でも守ってあげたい気持ちが出てきちゃった)
そう思いながらも、敵の動きに集中する。
グランドホーンディアは巨体を揺らし、鋭い角を振り回して襲いかかる。
ユウキは茂みの陰で息を呑む。
「リリスさん、気をつけて!」
声が震えるのを必死で抑える。
(やっぱり僕なんて…何もできないのに……でも、すごい……かっこいい……)
リリスは軽やかに槍を構え、角をかわしながら的確に突きを入れる。
だが、その際、グランドホーンディアの後ろ脚がリリスの太ももにかすかに当たり、軽く怪我をしてしまう。
「っ……!」
リリスは一瞬顔をしかめるも、すぐに笑みを取り戻す。
「ちょっと痛いけど、大丈夫。まだやれるわ」
(でも、あの必死そうな子を見たら、もっと守ってあげたくなる……いや、今は戦いに集中しなくちゃ……)
ユウキは胸が締め付けられる。
(や、やっぱり僕なんて……でも、そんな姿でも、リリスさんの隣にいられるだけで嬉しい……)
わずかに誇らしさを感じつつも、手が震える自分を恥ずかしく思う。
そして最後、リリスは見事な一突きでグランドホーンディアを仕留めた。
「終わったわね」
汗をぬぐいながら、凛とした笑みを浮かべるリリス。
ユウキはその姿を見て、心臓が高鳴り、思わず目を逸らす。
(やっぱり……完璧すぎる……僕、隣にいるだけで精一杯だ……でも、かっこいい……)
リリスはふと後ろを振り返り、茂みから顔を出すユウキを見つける。
(あら、ちゃんと見てるのね……かわいい……でも、ちょっと意地悪しちゃおうかしら)
少し意地悪な笑みを浮かべ、彼に歩み寄る。