討伐依頼
翌日、朝日が街を照らす中、ユウキは今日の依頼に向かう準備をしていた。
依頼内容は――グランドホーンディアの討伐。鋭く大きな角を持つ鹿型のモンスターで、体長は約3メートルほどの中型。聞くだけで圧倒されそうな相手だ。
「……僕で本当に大丈夫なのかな…」
ユウキは自分の装備を見下ろす。戦闘力は平凡、魔法もほとんど使えない自分。
(昨日、リリスと過ごした夜のドキドキがまだ残ってるのに……こんな僕で、今日も役に立てるのかな…)
思わず頭を抱える。
胸の奥には、まだリリスの視線や仕草を思い出して顔が熱くなる自分もいた。
(あぁ、なんで僕は意気地なしなんだ…隣にいるだけで手も足も震える…)
一方、リリスは昨日の軽装とは打って変わり、戦闘用の鎧に身を包んでいた。
鎧の光を浴び、赤い髪はきっちりまとめられ、手には鋭い槍。まるで戦場の女神そのものだ。
「今日は、本気でやるわよ。速攻で終わらせるんだから!」
ユウキはその姿に圧倒され、思わず目をそらす。
(……なんだ、この存在感……戦うためだけに生まれてきたみたいだ……僕なんか、完全に足手まといだよな…)
リリスもまた、心の中でユウキを観察していた。
(昨日の夜はあんなに赤くなって……まだあのドキドキは残ってるのかしら。かわいい、ほんとに可愛いんだから…でも、甘やかしすぎたら調子に乗りそうね)
少し意地悪な笑みを浮かべ、ユウキの動きを目で追う。
ユウキは昨日の夜の記憶がフラッシュバックし、胸がざわつく。
布団の中で赤面しながら見たリリスの姿、あの小さな仕草、あの笑み……思い出すたびに、体が熱を帯び、呼吸も早くなる。
(あぁ、また妄想が止まらない……仕事どころじゃないじゃん、俺……)
そんなユウキに気づいたかのように、リリスは軽く手で合図し、にっこりと笑った。
「ユウキ、無理はしないで。できることをしっかりやりなさい」
その声に、少しだけ安心する。
でも心の中では、相変わらずネガティブモード全開だ。
(できることって、荷物運びくらいしかないんだよな……あぁ、また失敗したらどうしよう……リリスに迷惑かけたら、もう……)
リリスは内心で笑みを引き締める。
(でも、あの必死そうな姿を見るのも悪くないかも……守ってあげたい気持ちが出てきちゃった。困ったな、私までドキドキしてる)
小さな不安と、昨日の甘いドキドキが入り混じる心臓。ユウキは深く息を吸い込み、重い足を前に出した。
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