赤面禁止令、発動中!
着替えが終わり、二人は夕食の時間になった。
食堂に入ると、木の香りと温かい明かりが漂い、ほっとした空気が流れる。
リリスは席に座ると、待ちきれない様子でソーセージを頬張った。
「んー、美味しい…!」
その表情は無邪気そのもので、ユウキは思わず目を奪われる。
(……俺のも、頬張ってくれないかな)
思わず顔が赤くなる。口元を隠そうと手をかざすが、心臓はドキドキして収まらない。
しかも目の前で満足そうに食べられると、つい変な妄想まで浮かんでしまう。
(ああ…このあとお願いしてみようか、いや、でも… もし…その…口元を…あぁっ、考えるだけで…)
「……何見てんのよ」
突然リリスが眉をひそめ、でもすぐに笑みを浮かべる。
「変な事考えてないで、あなたもしっかり食べなさい」
そう言うと、リリスはユウキの口元に食べかけのソーセージを差し出し、アーンをしてきた。
「えっ、あ、あの…!」
ユウキは真っ赤になり、目をそらしながらも、抗えず口を開ける。
(な、なんで僕ばっかりこんな目に…でも…いや、うれしいかも…)
リリスは楽しげに、少し意地悪そうにユウキに食べさせる。
その仕草に、ユウキの心は恥ずかしさと嬉しさでいっぱいになり、ますます赤面してしまった。
「…ほんと元気だな」
照れ隠しに小さな声でつぶやくユウキに、リリスはちらりと微笑み、ソーセージをもうひと口口に運ぶ。
(ほんと、赤面して必死になる姿…可愛い…でも、ちょっと独占したくなる…)
ユウキは緊張しながらもリリスの隣で座っていた。
ふとした拍子に、手元のフォークを床に落としてしまう。
「あっ…!」
思わず声を上げ、慌てて手を伸ばすユウキ。
リリスは足を組み直しており、その隙間から――
床に落ちたフォークを拾おうとするユウキの頭が、自然と視線の角度に重なった。
「っ……!」
思わず声を呑み込み、顔を真っ赤にする。
(や、やばい…見ちゃった…いや、見えるわけない…いや、見える…!)
頭の中でパニックになりつつも、足を組んでいるリリスの体に触れないよう、必死で注意しながらフォークを拾う。
リリスは顔に薄い笑みを浮かべ、内心で小さくくすりと笑う。
(にやけてる…かわいい…ほんと、無防備で…どうしよう…ちょっと興奮しちゃう…でも、誰にも触れさせたくない…)
その思いを胸に、リリスは軽くユウキの肩に触れ、意地悪く小さく押してみる。
ユウキが赤面し、必死にフォークを拾う姿を見て、リリスはほんの少し興奮を覚えつつ、でもそんな自分を押さえ込む。
「……大丈夫?」
リリスが淡い声で尋ねると、ユウキは顔をさらに真っ赤にして、うなずくだけだった。
リリスはユウキの目をじっと見つめて小さく笑った。
「見たわね?変態」
ユウキは慌てて首を振る。
「見てません!」
顔は真っ赤。自分でも、なぜここまで赤くなるのか分からない。
「そっ、なら、そのズボンの膨らんでいるのは何かしら?」
リリスは意地悪な笑顔でユウキを見つめる
「あっ、こ、これは違うんです!」
必死に隠そうと手で押さえても、膨らみはどうしても治らず、完全にバレているも同然だった。
(や、やばい…見られてる…いや、見えてる…!)
頭の中は真っ白になり、顔は真っ赤に熱くなる。
リリスは胸を寄せ、谷間を見せつけながら薄く笑みを浮かべ、意地悪そうにじっと見つめる。
「それ、どうして欲しいのかしら?」
声は柔らかいのに、どこか挑発的で、ユウキの胸をギュッと締め付ける。
「か、からかわないでください!しょうがないじゃないですか!リリスさんが悪いんです!」
ユウキは必死に抗議するが、声は裏返り、動揺は隠せない。
(もう、どうしよう…でも、目をそらせない…)
リリスは楽しそうに、そしてほんの少し嫉妬と独占欲を滲ませて微笑む。
「食べ終わったら部屋に戻るわよ、変態さん」
その一言に、ユウキの胸はドキドキと跳ね、羞恥と甘い緊張が入り混じる。
そうして二人は、互いに意識を残しながら、宿の部屋へ戻った。
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