危険な香り
小さな商店に入ると、店員はスレンダーな女の子で、少し恥ずかしそうに微笑む。
リリスは迷いなく声をかけた。
「安くて丈夫なシャツをちょうだい。それと、魔物の素材を入れる袋も」
ユウキはリリスの後ろで手を差し伸べつつ、内心で小さくため息をつく。
(この人、なんて堂々としてるんだろう…僕なんか、ただ横に立ってるだけで精一杯なのに…)
「袋はありますよ。こんなのでよければ」
ユウキが答えると、リリスは少し考えてから笑った。
「この際だから新調しなさい」
ユウキの頭の中は瞬時に妄想モードに突入する。
(新しいシャツ…え、これってもしかしてリリスさんに選んでもらえるってこと…!?いや、でもお金も出してくれるって…やばい…なんて幸運…いやでも、冷静に…でも、触れる機会も…!)
リリスもまた、ユウキをちらりと見て、心の中で思う。
(本当に、なんて慌て者なのかしら…ちょっと背筋を伸ばして、堂々と歩いてるつもりでも、手元や顔の赤みが可愛い…!)
心の奥で「この子、ちょっと守ってあげたいかも」と密かに感じる。
支払いを済ませ、店を出ると、店員が外まで見送ってくれた。
そのとき、ふと風が吹き、店員のスカートがひらりとめくれる。
ユウキは思わず声を上げる。
「おぉ…」
(水色か…見ちゃった…でも…いや、見てはいけない…!でも、うわっ…なんて綺麗なんだ…!)
思わず目を逸らすが、心臓は跳ねるように鼓動する。
その光景を見たリリスの胸に、突然嫉妬の炎が灯る。
(なにあの子…!風で見えるくらいで、ユウキがこんなに喜ぶなんて…許せない…!)
心臓が高鳴り、ほんの少し、手を伸ばしてユウキを押さえ込みたくなる衝動に駆られる。
(あんなふうに、他の女の子に意識を向けさせるなんて…絶対に許さない…!)
ユウキはその視線に気づかず、必死に顔をそむける。
(いや、いや、冷静に…いやでも、あんなふうに風で揺れるのを見るなんて…もう…頭が…)
体は緊張で固まり、呼吸も少し荒くなる。
リリスは内心でくすりと笑いながらも、ヤンデレ気味に嫉妬心を抑える。
(ふふ…でも、今の反応、面白いかも…ちょっと意地悪して、独占したいくらい…)
「にやけてんじゃないわよ!」
リリスの声に、ユウキは飛び上がるように驚く。
(わっ…見抜かれてる…!恥ずかしい…でも、なんだか嬉しい…!)
「は、はい…すみません…」
赤面したまま必死で答えるユウキ。
リリスは少し笑みを浮かべつつ、心の中で再び思う。
(ほんと、可愛い子だわ…でも、あの店員みたいな子に目を向けさせるなんて、許さない…私だけを見ててほしい…!)
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