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奈落の果ての異譚集  作者: 黒瀬雷牙
主人公のジーナ
4/31

八年後

【奈落 第六層 深海エリア】


 暗黒に包まれた深海を、ジーナは必死に進む。周囲の水圧と静寂は、まるで世界そのものが自分だけを拒絶しているかのようだった。

 背後からは、ペシミスティとシャスエティの笑い声が遠ざかりつつも、耳に残り続ける。怒り、悲しみ、絶望――そのすべてがジーナの胸を締め付けた。


「……アルガード……マチルダ……」


 頬を伝う涙。自分たちの力不足で、仲間を守れなかった。守れなかったのだ。


 だが、深海の暗闇の中で、ジーナの胸に微かな炎が灯った。


「……絶対に……無駄にはしない……!」


 その瞳は、もはや涙で曇ることはなかった。怒りと悲しみが一つに絡み合い、鋭く、燃えるような決意へと変わる。

 ジーナは杖を握り直す。手の震えは、もはや恐怖ではなく、力への渇望を示していた。


「私……もっと強くなる……!」


 失った仲間の悔しさは、己を成長させる原動力になる。ジーナはその決意を胸に、深海の闇に一人立ち向かう覚悟を固めた。


 その瞬間、水流の隙間から微かな光が差し込む。深海の圧迫に抗いながらも、ジーナは光に向かって進む。

 光の先には、奈落の奥に待ち受けるさらなる試練と、仲間を取り戻すための道が――。


「……私は……必ず……」


 ジーナの声は水中にこだまするわけではない。しかし、己の心に刻まれた決意は、深海の暗黒よりも確かな光となった。


 深海エリアの闇は深く沈む。しかし、ジーナの決意という小さな光は、奈落に新たな希望の芽を宿す。


 次なる冒険の始まりを告げるのは、まだ見えぬ暗黒――だが、彼女はもう逃げない。

 仲間の命と、自らの未来のため、ジーナは歩みを止めない。


ーーーー

《八年後》


 血の滲む修行を積み、数えきれぬ戦場を駆け抜けたジーナは、今や冒険者ランキングの頂点に君臨していた。

 その眼差しは冷たく鋭く、かつての涙や絶望は力と化し、誰もが一目置く存在となっている。


 兄と義姉、そしてアルガードやマチルダ。愛する者たちを奈落に奪われた傷跡は深く、ジーナの奈落に対する憎しみは、誰よりも深い。

 しかしその憎しみは、無差別な破壊欲ではない。仲間を守り、二度と誰も失わせぬための鋼の意志となっていた。


 サンライズシティの広場に立つジーナの隣には、二人の新たな仲間がいた。


 一人は、若き天才剣士のヒルダ。冷静沈着でありながら剣術において誰も追いつけぬほどの技量を持つ。ジーナに続き、冒険者ランキング2位の実力者だ。

 もう一人は、ギャンブル狂いでありながら弓術の天才、イグニス。豪快で気まぐれだが、その矢は常に的確に標的を貫く。ランキング4位の実力者である。


「ジーナ、いよいよか……」


 ヒルダが静かに呟く。その声には戦士としての期待と、わずかな楽しげな光が宿っていた。


「久しぶりに、本気で遊べそうだな」


 イグニスは笑みを浮かべ、矢筒に手をかける。背中には、過去の敗北を忘れぬ覚悟が滲む。


 ジーナは二人に目を向け、力強く頷いた。


「……ああ。絶対に、奈落の奥底で待つ化け物たちを、この私たちの手で潰す。二度と誰も失わないために」


 その言葉に応えるように、ヒルダとイグニスも剣と弓を構えた。三人の視線は、奈落の深淵――第七層の無限樹海へと向けられる。


【奈落 第七層 樹海エリア】


 無限に広がる樹海の入り口は、まるで生きているかのようにざわめき、枝葉が暗黒の迷宮を覆っていた。

 その奥には、未知の敵、想像を絶する試練、そしてジーナが長年抱え続けてきた復讐の対象――奈落の奥に潜む六大将たちが待ち受けている。


「さあ、行こう――」


 ジーナの声が、無限樹海の闇に響く。

 怒りと覚悟を胸に、三人の冒険者は奈落の第七層へと足を踏み入れた。


 無限樹海は、生き物のように伸び、絡み、彼らを包み込む。

 だが、ジーナの胸に宿る光は、過去の悲しみも、失った仲間の命も、すべて力へと変えていた。


【奈落 第七層 樹海エリア 獣人の集落】


 無限樹海を進むジーナたちの前に、枝葉の隙間から微かな人影が見えた。

 茂みの奥、獣人たちが暮らす集落――その中心で、三人の冒険者が静かに立っていた。


 一人目は、大剣を背に背負う巨躯の男、グレン。力強い肩幅と凛々しい顔立ちで、冒険者ランキング3位の天才的剣士だ。


 二人目は、若き双剣使いのバッシュ。グレンの弟子で、鋭敏な動きと二刀の技巧は師匠に匹敵すると評される。獣人たちの前でも軽やかに剣を構え、目を光らせていた。


 三人目は、槍を手にしたソラール。冷静沈着な槍使いで、距離を問わず正確に標的を射抜く戦闘のプロフェッショナル。


 その三人の佇まいは、樹海の自然に溶け込みつつも、圧倒的な存在感を放つ。ジーナは目を細め、ヒルダとイグニスに視線を送った。


「……同じくらい強そうね」


 ヒルダの声に、ジーナは小さく頷く。

 グレンがゆっくりと近づき、低く落ち着いた声で言った。


「……お前たちも、この樹海を探索しているのか?」


「ええ。第七層の奥に進むつもりです」


 ジーナは真っ直ぐ答え、その瞳に揺らぎはない。


 バッシュが軽く笑う。


「ふん、なら道中、少し刺激をもらえそうだな」


 ソラールも槍を軽く揺らし、静かに目を細める。


「危険な森だ。お互いの力量を確認しておくのも悪くない」


 三人の気配は、まるで森そのものが呼吸しているかのように安定し、ジーナたちに同じくらいの緊張感をもたらす。


 ジーナは杖を握り直し、決意を新たにした。


「……なら、力を合わせる価値はありそうね」


 こうして、二つの精鋭パーティが無限樹海の獣人の集落で肩を並べることになった。

 互いに警戒しつつも、その目には同じ目的。奈落の深淵を制する覚悟が宿っている。


 樹海の風がざわめき、葉の隙間から差し込む光が、二つのパーティの影を揺らした。

 これから始まる冒険の舞台は、深く、果てしなく、そして誰も予測できぬ危険で満ちている…

キャラクター紹介 No.4

【ヒルダ=グランリオナ】

若き天才剣士にして、冷静沈着な戦場の切り込み役。

剣術においては非凡な才能を誇り、どんな状況でも的確に戦況を判断し、仲間を先導する。

その冷静な性格は時に厳しくも、仲間の信頼を集める支柱となる。

強さの本質は、己の技と判断力で仲間を守り抜くことにあり、いかなる困難も動じずに乗り越える覚悟を持つ。

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