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奈落の果ての異譚集  作者: 黒瀬雷牙
権能:チート 無敵のクロス
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奈落の正体

【奈落 第五層 火山エリア】

 激闘の城塞決戦から、数日が過ぎた。クロスはただ一人、奈落第五層・灼熱の火山エリアを黙々と歩いていた。

 仲間のエリスとフローレンスは、さらなる力を求めて二〜三層で修行と素材集めに励んでいる。彼女たちが「まだ早い」と判断したこの深度を、クロスは迷うことなく踏み込んでいた。


 轟々とマグマが吹き上がる火山の中心、層主・インフェルノ・バハムートが牙を剥く。

 クロスは叫びもせず、ただ一閃。その巨躯を両断した瞬間、手にしていた粗末な剣は悲鳴をあげるように折れた。


「……もう、要らないか」


 ぽつりと呟き、柄だけとなった剣を放ると、クロスは素手のまま第六層へと足を踏み入れた。


【奈落 第六層 深海エリア】


 水圧と闇が支配する世界。本来ならば魔法使いの支援なしでは呼吸すらままならないはずの空間を、クロスは平然と歩く。

 敵も罠も無視し、ただ真っすぐ最奥を目指す彼の前に、深層を統べる海竜・レヴィアトルが立ちはだかる。その巨体を相手に、クロスは拳と蹴りだけで挑み、そして勝った。


 こうして彼はついに、第七層へと辿り着く。


【奈落 第七層 樹海エリア】


 枝葉を裂きながら歩を進めるクロスの胸を、言いようのない違和感が満たしていた。

 自分の強さが、もはや人の理から外れ始めている。

 それは、誇りでもあり、恐怖でもあった。


 その時だった。


 森の奥で、黄金の木漏れ日に照らされながら、神々しい白い獣が姿を現す。

 まるで大地そのものの化身のような威厳と、世界を包み込むような圧力。


 獣神・白王。


 その存在は、奈落が生まれるより前から世界に君臨する原初の守護者だと伝えられている。


 白王は静かに、だが確かな声で言葉を紡いだ。


「…来たか、ジークの息子よ。()()()の権能に選ばれし勇者、クロス=ユグフォルティス」


 その眼差しは、まるで長い時を超えて“運命”を見据えているかのようだった。



 森の中心に鎮座する獣神・白王は、静かにクロスの瞳を覗き込んだ。

 その眼差しは、あらゆる虚飾を焼き尽くすような光を宿し、言葉を発するたびに、周囲の大気すら震える。


「お前が手にした権能:チートは、本来なら人間が持ってはならぬ力だ」


 白王の声が、森の奥深くまで響き渡る。


「それは万象を操り、世界の理を捻じ曲げ、ひとつの意思で宇宙すら再構築できる。使い方次第では、神々さえも屈服させられよう」


 クロスは黙して白王の言葉を受け止める。

 その力が、ただの強さではないことは、自身が誰よりも知っていた。


「だからこそ、我は問う。その力を振るうお前の心は…世界を照らす光か、全てを呑み込む闇か」


 沈黙が、二人の間を支配した。

 クロスの瞳には、迷いも驕りもなかった。ただ、戦いの果てに守りたいものがあるという、純粋な意志だけが宿っていた。


 白王はやがて目を細め、静かに頷く。


「……よかろう。ならば、真実を語ろう」


 白王の声が低く響き、奈落の原罪がゆっくりと紐解かれていく。


「数百年前、地球に()()は落ちた。宇宙の理では決して有り得ぬこと。全てを呑み込むはずの“ブラックホール”から、逆に吐き出されたひとつの漆黒の隕石」


 空間が歪み、クロスの脳裏に起源の光景が映し出される。


「それは死後の魂に紛れ込む、負の感情の集合体。憎悪、嫉妬、絶望、怨念、怒り、悲嘆……。この世のあらゆる悪意が凝縮された塊だった」


 漆黒の隕石はグランドリオンの地に落ち、異世界の法則と混ざり合い、やがて()()と呼ばれる歪んだ空間を生んだ。


「そして、六体の意志が生まれた。怒り、憎しみ、悲しみ、恨み、妬み、不安…そう、奈落六大将だ。奴らは隕石の核を守るために存在している」


 白王は静かに立ち上がり、クロスを見据える。


「クロス=ユグフォルティスよ。お前が進むべき道はただひとつだ。残る六大将をすべて討ち滅ぼし、奈落そのものを生み出した元凶・漆黒の隕石を破壊せよ」


 それが、世界を蝕み続けた絶望の終焉への、唯一の道だった。


ーーーー

【奈落 第十層 神殿エリア】

 一方、奈落が生まれて数百年。かつて無敗を誇った六大将の一角が倒されたことで、残る六大将は顔を揃えていた。


「人間などに負ける者が悪い」と憤る、

 嫉妬の獣姫・妬みのジェラシア。


「仇を必ず討つ」と怒り狂う、

 憤怒の赤鬼・怒りのアンガレド。


 同じく、憎しみに燃える、

 憎悪の羅刹・憎しみのヘティリド。


 あまり興味を示さない、

 怨恨の黒薔薇・恨みのグラージャ。


「今こそ六大将が心を一つにすべきだ」と主張する、

 懸念の蜘蛛・不安のシャスエティ。


 リーダー格のシャスエティは、仲間たちをまとめようとするものの、ヘティリドとアンガレドは耳を貸さなかった。

 状況のまずさを痛感したシャスエティは、ある覚悟を決める。

キャラクター紹介 No.27

【獣神・白王】

 奈落の深層に存在する神獣にして、世界の均衡を司る存在。千年以上生き続け、選ばれし者の心を測り、権能の適性を判断する。

 クロスに「チート」と称される権能を見出し、奈落の真実と六大将の起源を告げ、残る大将たちとの決戦を託した存在。

 その力は神話級であり、戦闘において直接的に争うことは稀だが、世界の根幹に影響を与える存在として絶大な威光を誇る。

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