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奈落の果ての異譚集  作者: 黒瀬雷牙
権能:チート 無敵のクロス
24/31

第一層踏破

【キキモラ村 墓地】


 ネクロマンサーは漆黒の杖を掲げ、無数の死霊を呼び出した。骸骨兵、ゾンビ、怨念の亡霊…闇の軍勢が墓地を覆い尽くす。


「コレデオマエモ、コノムラモ…ナラクノソコヘトオチルノダ!」


 クロスは動じず、目を閉じて一瞬の静寂を味わった。心の中で戦場をイメージする。

 死霊の群れを一閃の剣で一掃するイメージ。その軌跡には雷が宿り、漆黒の力と融合する。


 振り下ろした刃が空気を裂くと、雷光が辺りを覆い尽くし、死霊もネクロマンサーも、墓石も棺も、すべてが一瞬にして吹き飛んだ。


「……終わったか」


 クロスは荒れた墓地を見下ろす。だが、そこで気づくことはなかった。

 実は、墓石に潜んでいた真の元凶、瘴気の根源は、すでに彼の剣の一撃で粉砕されていたのだ。ネクロマンサーと呼ばれた者は、ただの操り人形に過ぎなかった。


【キキモラ村 村内】


 翌朝、村に漂っていた黒い瘴気は跡形もなく消え、朝日が差し込むと、キキモラ村は元の長閑な街並みに戻っていた。


 村人たちは少しずつ外へ出て、平和な日常を取り戻していく。

 マリーはクロスの前に立ち、涙を浮かべながら深く頭を下げた。


「クロスさん……本当にありがとうな。あんたが来てくれへんかったら、村は……」


「気にしなくていいよ、もう大丈夫」


 微笑むクロスに、マリーは力なく笑み返した。


「うち…もう、冒険者は引退するわ。村で……みんなと、平穏に暮らしたいんや」


「そうか、幸せになれよ」


 マリーはうなずき、村人たちとともに新しい日常を歩み始めた。


【キキモラ村 教会前】


 教会の庭で、少女がクロスを見つめていた。彼女の名はシルカ。まだ幼いが、目には深い知性と不思議な落ち着きが宿っている。


「……あんた、クロスさんやな?」


 クロスは少女の瞳にふと目を奪われる。


「あんたも、()()()()()ね」


 直感が告げる。この子は、未来の天気を知る()()の持ち主だ。そして、その力に触れた瞬間、クロス自身も自分に何か特殊な力、権能が宿っていることを自覚した。


 だが、その力が何なのか、まだクロスにはわからなかった。


 村は再び穏やかさを取り戻し、風がそよぐ。

 クロスは、まだ知らぬ自分の権能とともに、次なる冒険の予感を胸に秘めるのだった。


【サンライズシティ 冒険者ギルド】


 数日後、クロスはジャン、エリスと共にギルドの掲示板前に立っていた。

 掲示板には依頼情報が所狭しと貼られているが、ふと目に留まったのは、一人でじっと掲示板を見つめる若い女性の姿だった。


「……あの人、気になるな」


 クロスが声をひそめると、ジャンも同意するように頷いた。


 彼女はフローレンス。若き王国騎士でありながら、冒険者としても活動しているという噂のある女性だった。剣と盾を携え、気高い雰囲気を漂わせている。


「君は、王国騎士のフローレンスさん?」


 クロスが声をかけると、女性はゆっくりと顔を上げ、落ち着いた瞳で応えた。


「ええ、あなたがクロスね。噂は聞いているわ」


 クロスは軽く笑みを返すと、仲間の二人を振り返った。


「一緒に奈落に挑まないか? 目的は違っても、目指す場所は同じだろ」


 フローレンスは少し考えた後、頷いた。


「……わかった。二人より四人の方が、危険も分散できるものね」


 こうして、新たな仲間を迎えた一行は、四人組として再び奈落への挑戦を始めた。


【奈落 第一層 遺跡エリア】


 クロスの圧倒的な力の前では、奈落の怪物たちもただの障害物にすぎなかった。

 ジャンは斧を振り、エリスは薬効を見極めながら素材を収集し、フローレンスは盾と剣で攻撃を受け止める。


 一歩一歩、奈落の闇を踏みしめるたび、冒険者たちは確実に深層へと進んでいった。


 そして、四人のチームワークとクロスの力により、ついに奈落第一層を踏破することに成功する。


【奈落 第二層 砂漠エリア】


 第一層を抜けた先に広がるのは、果てしない砂の海だった。灼熱の陽光が地面を照らし、砂煙が舞い上がる。遠くには、不気味にそびえる岩山や魔力の渦がちらつく。


「……ここが第二層か」


 ジャンが砂煙を払いながら呟く。エリスは小瓶に素材を詰め直し、フローレンスは周囲を警戒して剣を構える。

 クロスは一歩前に踏み出し、目を細めて砂漠の先を見据えた。


「よし……行くぞ」


 こうして、四人は新たな奈落の深淵へと足を踏み入れた。


【奈落 第二層 砂漠エリア オアシスの街・サンティア】


 しばらく進んだ一行は、灼熱の砂漠の中に忽然と現れた街にたどり着いた。


 街の名はサンティア。想像以上に整備されたオアシスの街で、石造りの家々が並び、道には水が撒かれ、砂の舞い上がりを抑える工夫まで施されている。中央には広大なオアシス湖が広がり、子供たちは水遊びに興じ、大人たちは木陰で談笑していた。


「店……?」


 ジャンが目を丸くして指をさす。


 露店の屋台が軒を連ね、香ばしい香りが街を満たしている。焼いた肉の串、カラフルな果実、異国風の香辛料…砂漠の荒野を抜けた先に、まるで別世界のような光景が広がっていた。


 クロスは視線を巡らせ、静かに息をつく。

 奈落は層を跨ぐたびに異世界と繋がっている。今いる第二層は、砂漠の異界…独自の法則を持つ世界なのだと理解した。


【サンティア 冒険者ギルド】


 街には独自の通貨・リルが流通しており、サンライズシティのゴールドは使えない。冒険者ギルドも存在し、依頼の報酬はすべてリルで支払われる。


 掲示板にはさまざまな依頼が貼られていた。四人の目を引いたのは、手頃な難易度の依頼だった。


ーーーー


【Fランク依頼】

依頼名:奈落バイソンの肉 納品

内容:奈落第二層に生息するバイソンの肉(3kg以上)の回収と持ち込み

報酬:1200リル(品質評価次第で最大3000リルまで)

依頼主:アニサ=ウィルキンス(酒場《カラクの盃》経営)

備考:焼き用・煮込み用で分けて渡してくれると助かります♡


ーーーー


 ジャンは依頼内容を確認して笑みを浮かべる。


「これはちょうどいいな。手頃だし、報酬も悪くない」


 エリスも頷きながら小さく笑った。


「奈落の素材も集められるし、効率はいいね」


 クロスは掲示板を見上げ、淡々と答えた。


「……よし、これを片付けて報酬も確保しよう」


 フローレンスも剣の鞘に手をかけ、力強く頷く。


「準備はいいわ。行きましょう」


 こうして四人は、サンティアでの初めての依頼、奈落バイソンの肉回収へと足を踏み出した。

キャラクター紹介 No.23

【エリス=マギア】

 奈落病を治す薬を作るため、奈落の探索に挑む若き女性冒険者。薬学と素材の知識に長け、奈落特有の植物や魔力を帯びた素材を正確に採取する技術を持つ。

 妹・ミリスの権能を生かし、素材の薬効を見極めて新しい薬を生み出すことを目指している。強い意志と冷静な判断力で、危険な奈落でも冷静に行動する。

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