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奈落の果ての異譚集  作者: 黒瀬雷牙
権能:チート 無敵のクロス
21/31

奈落二度目の挑戦

 数日後。クロスは再び奈落への挑戦を考えていた。


(よし、今日はもう少し奥まで行ってみるか…)


 単独で向かおうと準備をしていたところ、ギルドマスター代理のロズベルが現れた。


「クロス君、先日の件、よくやってくれたね。そこでお願いがあるんだが…」


 ロズベルは手元の紙を差し出す。そこには、一人の少女の名前が書かれていた。


「この子、初心者で奈落に入るのはまだ早い。だからクロス君、彼女を連れて行ってくれないか?」


 紙には「マリー=トワイライト」と書かれている。


「え…俺ですか?」


「クロス君なら大丈夫。あの時のように、危険な場面でも必ず助けてくれるはずだから」


 クロスは少し考え、うなずいた。


「わかった…俺が面倒を見る」


 その日、奈落の入り口で、クロスはマリーと初めて顔を合わせる。


「はじめましてやで、マリーや。あんたが噂のクロスさんか?」


 彼女は元気よく挨拶した。肩には小さな治癒用の魔法書がぶら下がっている。


「うん、クロスだ。今日は一緒に探索するんだな」


「せや、ほなよろしく頼むで!」


 奈落に一歩足を踏み入れると、前回よりも奥へ進むにつれ、空気がひんやりと重くなる。


「気をつけてや…この辺、モンスターもそうやけど、罠が多いんや」


 マリーは小声で忠告しつつ、クロスの後ろをついてくる。


 しばらく歩くと、ゴブリンが襲いかかってきた。クロスは無意識に剣を振り、ゴブリンは一瞬で倒れ、消滅する。マリーは驚きの声を上げた。


「え…?うそやろ、もう倒したん?」


「うん…大したことなかったけど…」


 クロスは笑顔で答えるが、全く自覚はなかった。

 さらに進むと、罠にかかって動けなくなった冒険者がいた。クロスは一瞬で罠を解除し、怪我人を抱き上げた。マリーは即座に回復魔法を唱える。


「よし、これで大丈夫や。クロスさん、あんたって強いんやな!」


「いや…偶然だと思うけど」


 クロスは照れくさそうに答えた。


 マリーは慎重に周囲を警戒し、回復と補助に徹する。クロスは前回同様、全く苦戦せずにモンスターや盗賊の攻撃を避け、瞬時に排除する。


 探索の途中、クロスはふと考える。


(奈落って、案外ちょろい…?いや、第一層だからか?)


 マリーにとっても、このペアリングは学びの場となった。クロスの超人的な行動を目の当たりにしつつも、自分の回復魔法が仲間を守る力になることを実感する。


 奈落の第一層の奥まで進み、無事に探索を終えた二人は、帰路につく。


「今日は助けてもろてありがとうやで、クロスさん」


 マリーは微笑む。


「いや…こちらこそ。君がいてくれたから安心だった」


 二人の間に、初めて芽生えた信頼のようなものが、静かに生まれた。その背後では、クロスの権能が静かに目覚めつつある。しかし本人はまだ、それに気づくことはなかった。


 奈落の深淵は、今日もまた、少年の冒険を静かに見守っている。


 奈落の第一層を抜け、街の明かりが見えてきた。二人の足取りは、さほど疲れている様子もない。


「クロスくん、あんたはなんで奈落に挑むんや?」


 マリーがふと尋ねる。好奇心を隠さずに聞いてきた。


「俺の両親が奈落に行ったまま帰ってこないんだ。伝説の冒険者だったから…遺体でも、せめて何か残っていればって思って」


 クロスは少し俯きながらも、言葉を続ける。


「なるほどなぁ…そりゃ、えらい決意やな」


 マリーは小さく息をつき、肩の魔法書を握る。


「で、あんたは?」


 クロスは問い返す。


「うちの村で、謎の病が流行ってるんや。家族も友達も…せやから、奈落にあるっていう万能の秘薬、『百薬の水』を探しに来たんやで」


 マリーの瞳は真剣だった。


「そっか…大事な人のために来たんだな」


 クロスは小さく頷く。


「うん、せやから、お互い頑張ろうな。次に来るときも、一緒に攻略しよ」


 クロスも笑顔で答えた。


「もちろんだ。俺も負けてられないし、君の力も頼りにしてる」


 二人は軽く拳を合わせ、再び奈落に挑む約束を交わした。


 まだ気づいていない権能・無敵のチートは、彼の中で静かに眠っている。

 しかし、それは次の冒険で、少しずつ姿を現すことになるのだった。


 街の夜風に混ざる、遠くの冒険者たちの声が、今日もまた二人の背中を押していた。

キャラクター紹介 No.20

【ギルドマスター代理 ロズベル】

 サンライズシティ冒険者ギルドのギルドマスター不在時にその代理を務める中年の女性。冷静沈着で物腰柔らかく、ギルド内外の人望は厚い。経験豊富な冒険者としての知識を持ち、危険な奈落探索においても初心者や未熟者の安全を第一に考える。

 原作での出番は非常に少なく、本作でも冒険者達に指示を出す役割に徹しているが、その判断力と洞察力は確かであり、奈落探索の手引き役として重要な存在。


 「もしこの人物を知っていたなら、あなたは『奈落の果てのマニア』認定」

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