最終話 終わりの始まり
轟音が奈落の最深部を震わせる。
ヒルダ、イグニス、マチルダ、最強クラスの三人の冒険者は、全力を振り絞って怨恨の黒薔薇・グラージャと、狂愛のアルカトラに挑む。
だが、絶対の力の前に、三人の攻撃はことごとくはじき返される。神速の剣撃と魔力の奔流が襲いかかり、応戦する間もなく三人は地に伏した。
六大将二体との戦力差は、あまりにも圧倒的だった。
その光景を背に、クロスとフローレンスは互いの刃を交える。かつて冒険者として奈落に挑んだ二人。だが、今や片方は悪魔と化した男。
刃が交わるたび、空間は裂け、轟音が奈落の底まで響く。フローレンスの全力の剣撃も、クロスには一切通じない。
敵意と怒りが全てを支配するその姿は、かつての仲間の面影すら残さない。
「……終わりだ、フローレンス」
冷たい声と共に、クロスの一閃がフローレンスを貫く。彼女は力なく崩れ落ち、奈落の闇に呑まれた。
戦場には、クロスの静かな呼吸だけが響く。
「お見事でございます、クロス様」
「当然だ」
アルカトラは、クロスに抱擁をした。そんな姿をよそ目に、グラージャが口を開く。
「やれやれ、まさか人間がここまでやるとはね。これじゃ、私達は三人衆ね」
「…一つ、作はある」
クロスは、倒れたアルガードの元へと歩み寄る。
「最強の男…あなたまさか」
「そのまさかだ」
奈落の奥底に横たわる漆黒の隕石。クロスはアルガードの遺体をそばに置く。
瘴気がアルガードの身体を包み込み、彼に膨大な力が注ぎ込まれる。
破滅のアルガード
かつての雷槍の英雄は、新たな奈落六大将として覚醒する。その強さは、紛うことなき過去最強。
もし、破滅のアルガード以上の強さがあるとするならば、この隕石に眠るとされる、災厄の魔王が真の力をもって目覚めた時のみ。
クロス、アルガード、グラージャ、アルカトラ。
戦いを生き残った四人は、奈落六大将改め、奈落四天王として名を轟かせた。
以後、誰一人として彼らに挑むことは叶わなかった。
冒険者も王国軍も、かつての英雄も、すべては奈落の闇に沈み、四天王の畏怖だけが世界に残る。
赤黒い瘴気の中、奈落の最深部に立つ四つの影。
その瞳には冷徹な決意と圧倒的な力しか映らない。
そして、地上は次々と瘴気による奈落化に満たされ、世界に光は戻らなかった。
──終焉。
奈落の支配者、四天王。
絶対に抗えぬ力の象徴として、永遠に君臨した。
ーーー 完 ーーー
キャラクター紹介 No.16
【破壊のアルガード】
かつて雷槍の英雄として名を馳せた王国最強の冒険者。奈落最深部で命を落としかけた後、漆黒の隕石の瘴気により新たな力を得て覚醒した存在。以後、奈落四天王の一角として恐怖と破壊の象徴となる。
膨大な魔力と肉体能力を得た彼の力は、かつての英雄の比ではなく、戦術や連携を無力化するほど圧倒的。雷槍に加え、瘴気を纏った攻撃はあらゆる障壁を貫き、戦場に立つ者全てを蹂躙する。
その冷徹な瞳の奥には、もはや人間らしい情はなく、破壊そのものを体現する意志のみが宿る。




