学校の先生になる人が減った!
この物語はフィクションです。
実在の団体、人物には一切関係がありません。
学校現場を一言で表すならば、多忙という言葉が一番適当だろう。
そう思うのは、県教育委員会事務局に勤務する平木谷凡という青年である。
京王大学を卒業後、地方公務員試験に合格し、最初に配属された部署がここだった。
この部署は県の教員事情がよく分かる。
不祥事はもちろんのこと、ダークサイドな部分も。
平木谷はこの部署に配属されて三年間、上司の言うままに事務的にかつ忠実に仕事をこなしてきた。それが現場の教員にどれだけ負担をかけているかを分かりながら。どれだけ現場を壊すかを分かりながら。
しばらくして、SNSで教員のブラックぶりが詳らかになり、マスメディアもこれを取り上げ始めた。
安い月給に休憩時間は五分。
無給で月百時間の残業。
過労死に心身を病んでの休職、退職。
話題には事欠かない。
しかし、それでも教育委員会はこれを放置し続けた。これまで使い倒してきた臨時講師(一年間の期限付き雇用の教員のこと)を使えば、何とか現場は回る。そういう思い込みがあった。そういう奢りがあった。
事実、四十を超えた臨時講師は他の業界では働くことができないだろう。そういう計算をした上で教育委員会は彼らを最大限利用してきたつもりであった。
だが、その計算は誤りであったことがすぐに露呈する。
「校長先生、臨時講師の登録が昨年の四分の一なんです。はい、英語と国語はいません。ええ、数学と理科はあと三人です」
問い合わせを受けている教育委員会事務局の職員は何の危機感もなく、危機感しかない校長に返事している。
「欠員が出ても仕方ありません。現場の創意工夫で何とかやってもらうしか……教頭先生に担任してもらってはいかがですか?」
軽い調子でそう言って、電話を切った。
「いやあ、最近本当に学校の先生、人気ないねえ」
と他人事のように言う。
人気がない理由は明らかなはずだが、彼だけでなく、その周囲の職員は誰一人気にすることはない。これが公務員の仕事はお役所仕事と言われるゆえんだ。
成果を出さなくても良い。利益を出さなくても良い。
その甘えがこの事態を悪化させている。
平木谷が三十になる前、この事態がシャレにならなくなり、急遽対策チームが作られることとなった。
こんばんは。
初めての方は初めまして。そうでない方はご無沙汰しております。
星見という物書きです。
近年は研究活動に精を出しておりましたが、再びこちらに戻ってきました。
色んな意味で”面白い”作品にしていきますので、お付き合いくださいませ。