卒業記念に壁ドンでコクってみた
相川さんのことが好きで好きでたまらないッ。
もう朝から晩まで考えてて、頭の中は相川さんのことばかり。そんなまま、とうとう卒業式を迎えてしまう。そんな俺の気持ちを知っているのは親友の高木だけ。
「もうさぁ、そんな好きならコクっちゃえよ」
高木が面倒くさそうに煽る。
「でもそれができるなら、こんな風に悩んでない!」
「だって今日卒業式だぜ、他にいつコクるんだよ」
思わず黙り込む。高木の言うことはわかる。けど、俺は普通の人間じゃない。
「それができないから困ってんだろ!」
「やー、そんなん気にしても仕方ないじゃん。好きなら好き、嫌いなら……しゃぁないってだけ。だから勢いだって。あれ、壁ドンっての? 最近流行ってるらしいしさ。やってみたら? お前結構かっこいいんだしよ?」
高木は本当につまらなさそうだ。何度も聞かされてうんざりしている。
けど自分でいうのもなんだが、見た目はちょっと自信がない、こともない。いや、それ以前の問題があってさ。
「こー、萌えるシーンっての? 卒業式のあとに呼び出して?」
俺はとうとう高木の悪魔のささやきに耳を傾けてしまった。
というか、高木が勝手に呼び出しのラブレターを相川さんの靴箱に忍ばせたのを後から知った。
そんなことされたら、後に引けないじゃないか!
糞っ高木め! けれど確かに、これが最後のチャンス。
バクバクと高鳴るを気持ちに震えながら、オレンジ色の夕日差し込む校舎の裏に足を向けた。卒業式後だ。誰もいない。いないはず。
えいやと校舎を回れば……相川さんがもじもじしながら待っていた。
まじで? 本当に?
足が震える、肩があがる、俺がもし汗かきなら汗だくだくだ。汗なんてちっともかいてないけど。
相川さんの前に立つ。
顔を上げた相川さんと目が合う。
心なしか、照れているように、みえなくもない。
夕日で赤く染まった顔がとてもきれいだ。
よ、よし、壁ドンだな!
勢いだな!?
ドンッ!
その勢いで、俺の目玉が零れ落ちた。
相川さんは気絶して倒れた。
「あ……」
俺はその日、教訓を得た。
ゾンビは壁ドンをしてはならない。やっぱり付き合う以前の問題。




