表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/13

11


「死ねぇぇぇ! 」


 下級天使の1人が憎悪むき出しの表情を浮かべて、武器を振り回しながら私に向かってきた。


「やはり下級だと碌に魔法も使えないようだな。そんな雑魚のくせに、我々人類よりも偉いってか? 」


 私がそれを言い終えた時、1人の天使は炎に包まれて悶え苦しんでいた。

 奴に向けて、≪中級火炎系魔法≫を発動したからである。複数の火の玉が、彼を襲ったのだ。


 他の下級天使たちは何もできずに、ただその場で突っ立っていた。その中には、恐怖のためか震えている者もいる。


 仮に中級天使以上になれば、魔法攻撃から身を守る魔法を使うことができるであろうから、このように楽には倒せない。


「どうした。かかって来ないのか? 」


 私は残りの連中に、そう声をかける。


「だ、だまれっ! 絶対にお前だけは許さない。お前が全ての元凶だ」


 挑発に耐えられず、また1人向かってきた。

 今度は、≪中級風系魔法≫を放った。突風がその天使を襲い、付近に生えていた細い木なども折れている。


 突風を受けた天使は、吹き飛ばされて運悪く木に頭をぶつけた。首がありえない角度で曲がっているため、絶命したはずだ。


「それで、誰の指示だ? まさかお前らだけで動いているわけではないだろう」


 残りの、ぶるぶると震え続けている連中にそう問いただした。


 今ここにいる下級天使たちだけでは、私を襲おうとは思わなかったはずだ。背後には必ず黒幕がいるに違いないからな。


「うるさい! お前を殺したいだけだ。俺たちは、その同志である」

「そもそも魔法すら使えない下級天使だけて、ここまでやって来ることは出来ないはずだ。背後に一体誰がいるんだ? 」


 私たち人類や魔族が住む世界と天使ども住む世界は、それぞれ物理的に別空間にあるのだ。2つの世界間を行き来するには、特殊な魔法を使わなければならないのだ。


 つまり、魔法を一切使えない下級天使たちだけで徒党を組んでも、ここへ来ることは出来ないわけである。


「黙れ! 」


「お前らな。仮に私を殺したとして、どうやって帰るんだ? 」


 私がそう訊ねると、天使たちに動揺が走った。ようやく連中も、事の重大さに気が付いたようだ。


「畜生! 俺たちは使い捨てにされたのか! 」


「あの野郎、騙しやがったんだ」


「自分だけは安全なところで、指示を出すだけか。汚い奴だ」


 などと、急に天使たちが叫び始めたのだった。

 連中の背後にいる何者かに対しての怒りであることは、明白である。


「でも、こいつを殺せばきっとエレドス様が迎えに来てくださるはずだ」


 しかし1人の天使がそう言ったため、残りの連中も我に返ったかのように、再び私に対して敵意を向けてきた。


「あくまでも、私を殺したいわけか。なら貴様らこそ、ここで死ね」


 私はそう言って≪中級火炎魔法≫を連発した。

 天使たちはろくな抵抗も出来ずに、次から次へと燃えていくのである。炎に焼かれ死にゆく者の断末魔は気分を害するものだが、やむを得ない。


 しかしながら、あえて1人は生かした。

 生かした1人は尻もちをつきながらも、尚逃げようとする。


「く、くそぉぉぉぉぉ! み、みんな殺しやがって! お前ぇぇぇ」


 必死の形相を浮かべて、そう叫ぶ。


 生かした理由は、むろん指示を出した者が誰なのかを聞き出すためである。私は問答無用で、その天使を地面に抑えつけた。


「誰の指示なのか答えろ。返答が早ければ早いほど、お前がこれから失うものは少なく済む」


「黙れ! 」


「答えなければ、毎分ごとに手足を一本ずつ切断してやる。手足がなくなれば、今度はお前の、その綺麗な白い翼をもぎ取ってやろうではないか」


 拷問だ。

 しかし、こちらも命がかかっているので仕方がない。


 今回は下級天使であったから良かったものの、これが上級天使以上となると本当に厄介だからな。特に大天使と呼ばれるレベルが襲いかかって来ようものなら、呆気なく瞬殺されてしまう可能性がある。


「わ……わかった。答える、答えるよ。俺たちに指示を出したのは、エレドスと言う上級天使だ。彼が俺たちを集めてお前を殺せと命じたんだ。もちろん、俺はお前を心の底から憎んでいるからな! だから快く応じたんだよ! 」


 エレドス…………。

 先程、誰かが口にした名前だ。


「他には? そのエレドスとやら以外に、もっと上の奴とかは居ないのか? 大天使とか」


「いや、これ以上は俺は知らない。少なくとも俺たちはエレドスに指示されて動いたまでだ」


 なるほど。


 とりあえず、まずはエレドスという名前は覚えておくことにしよう。

 そして私は彼を解放した。殺しても良かったのだが、下級天使1人くらい脅威にはならないし、泳がせておくのもありだと判断したからだ。


「さて、宿屋へ戻るとするかね」


 事件の全貌が全く判らないが、この一件で次にやるべき事は決まった。

 それは当然、上級天使エレドスとやらについての調査である。しかし私は直ぐに調査を行える状況にはないので、誰かに頼むとしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ