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呪詛返死  作者: HasumiChouji
第1章:国会
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 国会内で事故死したのは、保守系野党の国会議員である芳本ミエと、LGBTQ関連の法案審議の参考人として呼ばれた小説家の内海冬美だった。

「事故死ですが、規則で確認させていただきます」

 愛知県から東京まで呼び出された内海の夫は、警察で事情聴取を受ける事になった。

 担当の警官は、途中、何度も、

「すいません、馬鹿馬鹿しいかも知れませんが、不審死扱いなので記録を取る必要が有りまして……」

 と言いながら、すまなそうな表情(かお)になっていた。

 2人の馴初めなどの、どう考えても、今回の事故と関係ない事や、内海が国会議事堂に居た理由など、わざわざ訊かなくても判る事まで訊かれた。

 一方で、内海が死亡した状況に関しては……曖昧にしか教えてもらえなかった。

 警察での事情聴取を終え、気付いたのは……ホテルも予約せずに、東京まで来てしまった事。

 幸か不幸か、スマホで調べてみると、結婚する前……三〇年近く前になるが……に良く使っていた新大久保駅近くの宿泊可能なサウナは、まだ有った。

 とりあえず、今晩は、そこに泊まる事にする。

 これから、葬式の手配その他、妻の死を悲しんでいる余裕すら無い事が、次々と降り掛る。

 妻の親類とは疎遠だったせいで……こんな時に手伝ってくれる人物にも心当りが無い。

 SNSで妻の死を告知しようにも……どう書けばいいか判らない。

 SNS上で内海の夫である事を明かしていない自分が、内海の死を告知しても、ネット・スラングで言う「嘘松」扱いされるのでは?……そんな考えも過るが……。

 電車内で、妻の死に関する報道を見ても……。

 いや、おかしい。

 内海の夫は、ある事に気付いた。

 どの報道を見ても、階段から落ちたように思える書き方だが……死の瞬間に具体的に何が起きたのか書かれている報道が無い。

 冗談じゃない。

 そんなモノとは無縁な人間だと思っていたのに……今、ほんの少しの事で陰謀論を信じてしまいそうな心理状態に有る事が自分でも判る。

 自分の妻の死の裏に何か有るんじゃないのか?……そんな妄想に心が支配されかけている。

 ふと、妻のSNSアカウントを見てみる。

『そんな訳ないでしょ。何なら試しにやってみましょうか?』

 別の投稿に対するコメントが最後から2つ目の投稿だった。

 そして、最後の投稿は……。

 馬鹿な……そんな筈は……。

 妻の死で心が麻痺している直後でなければ……馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばすような状況だった。

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