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エッセイは実話だと知ったお話。

作者: ソウ マチ

子どもだった頃に星新一のエッセイを読んでいて、へえぇ!と思うことがありました。


おサルが大好きな人の話です。お名前はサル吉さんだったと思います。

おサルを愛してやまないサル吉さんは、サルのグッズなら何でもほしい! サルのお人形、サルのおもちゃ、サルの絵やお皿、とにかくおサルを見つけるとすぐ買ってしまう! そのうちお店の前を通っただけで、おサルグッズがあるかわかるようになった。お店の人が「サルなんて置いてない!」と言っても、サル吉さんは見つけだす! お店の人はビックリ仰天! そういうことが何度もあったそうです。


子ども心に「星新一はSFだけじゃなく、エッセイも上手だなぁ! 上手にウソを書くなぁ!」そう思っていました。サル吉さんの話は作り話で、エッセイと称して上手に書かれた物語だと思ったのです。


時は流れて、疑い深いこましゃくれた子どもは大人になりました。そしてなぜだかアヒルグッズを集めはじめました。なかでも「ガーコちゃん」というアヒルが大好きで、アレコレ買っては大切に家へ持ち帰っていました。ガーコちゃんのシール、ノート、歯ブラシ、歯ブラシホルダー、タオル、小さなソフビ人形……見つけたらすぐ買う! ぜんぶほしい! 世の中にあるすべてのガーコちゃんがほしい!!


ある日わたしは店先で大きなカエルのソフビ人形を見つけました。高さ50cmほどのカエル君です。彼を見た瞬間、身体に電流が走りました! このカエル、ガーコちゃんと似ている! いま思えばまったく似ていません(苦笑)。黄色のガーコちゃんとちがってミドリ色だし、アヒルとカエルは似てません。いて似ているところを挙げるとすれば両方とも語尾に「……ル」が付くくらいです。他はぜんぜん似てない。


それなのにカエル君を見たわたしは確信しました。「ぜったいに同じ大きさのガーコちゃんがあるはず! デカいガーコちゃんがほしい!」あの確信はなんだったのでしょう? 謎です。

ある日わたしは海辺のお洒落スポットへ遊びに行きました。きれいな海を見ながら食事をして、いろいろなお店をひやかして歩く。これと言ってほしいモノはなかったので、ブラブラと歩いていました。


すると急に頭のアンテナが立った! なんだかあっちにガーコちゃんがいる気がする! フラフラ歩いてゆくとヴィレッジバンガードがありました。そして雑多なお店の中で、デカいガーコちゃんが仁王立ちしていた!! ほんとにあった! ガーコちゃんは長い間そこにいたようで、ちょっと変色していました。付けられたPOPには「だれかこの子を家族にしてください!」そう書いてあった。どうやらデカすぎて売れ残っているらしい。わたしが家族になります! 


嬉々としてレジへ持っていくと若い男性スタッフが独り言のように「おぉ! ついに!」そうつぶやきました。彼なりに売れないガーコちゃんを心配していたらしい。安心してください! わたしが大事にします!


この一件でどうやらサル吉さんの話は本当だったんじゃないかと思うようになりました。でも単なる偶然かも……。


ガーコちゃんを愛するのと同じくらい、黄色が大好きな時期がありました。自分のテーマカラーを黄色にして、持ち物は何でも黄色だった。黄色の食器棚がどうしてもほしくて、家具屋さんに特注で作ってもらうくらい黄色が大好きでした☆ そんな中、黄色の長靴が欲しくなった。子どもサイズはあるけれど、大人サイズはありません。でもほしい……。あちこち靴屋さんを探してみても、大人サイズは売っていない。


そんなある日、わたしはロープウェイに乗って山へ遊びに行きました。目的はロープウェイと山頂から見る景色です。ご機嫌でロープウェイに乗ってきれいな景色を楽しんで山頂に到着したとき、頭のアンテナがピピピと立った! ぜったいにある! 近くに黄色い長靴がある!! そうは言っても山の頂上にたくさんお店があるはずもありません。あるのはお土産屋さんだけです。こんなところで長靴が売っているとは思えない。でも……。




ありました……! 大人用の黄色い長靴がお土産の帽子やTシャツにまぎれて一足だけ売っていました。お土産屋さんに長靴て……。あまりにも不思議だったのでお店の方に尋ねました。


ソウ:どうして長靴が売ってるんですか?

店員:え? 長靴なんて置いてありましたっけ?

ソウ:ここに……。

店員:あらぁ! 知りませんでした!ww


首をかしげる店員さんとわたし。でも欲しかったので、ください。ずっと探していたんです。


どうやら本気で欲しいと願うと、アンテナが立つらしい……。サル吉さんも同じだったのかも。


しばらくして急にコーヒー豆をどうにかするマシンが欲しくなった。ハンドルを手動で回してコーヒー豆を粉にするヤツです。色はぜったい赤がいい。頭の中では具体的な映像が浮かぶのですけれど、名前は知らない。そもそもわたし、そんなにコーヒー好きではありません。それなのにどうしても欲しくなった。


いまネットで調べてみたらコーヒーミルという名称でした。調べてわかったのですけれど、コーヒーミルって赤色だけでなくたくさん種類があるのですね……。知らなかった……。


頭の中に一軒のリサイクルショップが浮かびました。電車の高架橋の下にあるお店です。あそこにならある気がする……。ちょっと遠いけど、行ってみよう。

どうしてそのお店を思いついたのか、自分でもわかりません。お店の前は何度も通っていましたけれど、中に入ったことは一度もありませんでしたから。3日後に行ってみるとそこは大型の事務機を扱うお店でした。中古の机やロッカーやイスなどの事務用品が並んでいる。なあんだ! ぜんぜん違うお店だった! でもせっかく来たから、聞くだけ聞いてみよう。


お店へ入るとご店主らしき男性が事務机を運んでいました。お店の中は灰色の事務用の机やロッカーが並んでいます。やっぱりコーヒーのモノはないか……。でも……。


ソウ:すみません。コーヒー豆をゴリゴリするヤツは置いてないですか?

店主:ゴリゴリ??????

ソウ:豆を粉にするゴリゴリ……。色は赤がほしいのですけれど……。


ご店主の顔色が変わりました! 一瞬で目が吊り上がった! そして大きな声で叫びました!













店主:なんで知ってるっっっ!?

ソウ:え!?

店主:店に出してない物をアンタがなんで知ってるんだ!?

ソウ:えええ!?

店主:3日前に入ってきたばかりだ! まだ動作確認もしてない! なんで知ってる!?

ソウ:えええ!? あるんですか!? ほんとに!?


どうやらそのお店は、遺品整理もしているらしい。遺品を整理して故人の荷物を一括で買い取って、磨いたり修理して他のリサイクルショップへ売るらしい。だからそのミルは動作確認をして磨いたら、ほかの生活用品のリサイクルショップへ売る予定だった。つまりこのお店の店頭に出るはずのないお品だったのです。


わたしは知らないです! 単なる偶然です! なんとか誤解が解けてご店主が出してくれたのは、真新しいカリタの赤いコーヒーミルでした。


ソウ:コレです! これが欲しかったんです!

店主:かなり新しいね……。見なさい、粉が落ちる引き出しに油が少ししか付いてない。


無垢の木製の引き出しの底には、コーヒー豆の油がほんの少し付いているだけでした。これって数回しか使ってないと思う。ピカピカだし、まだ木の香りがするもの……。


ソウ:これが欲しかったんです! これをください!


するとご店主の顔が急に商売人の顔になった。欲しがってる客がいるなら、なるべく高値で売ってやろう! 顔にデカデカと書いてあります(苦笑)。


店主:……8千円! これは8千円!


でもご店主も、このミルの定価はご存じなかったみたいです。いま調べてみたら定価は1万8千円でした。いくら中古とはいえ新品同様ですから、もう少しふっかけても良かったかもしれない。ところがわたし、ほしいと言ったクセに急に言い出しました。


ソウ:ごめんなさい。やっぱりいいです。

店主:なんで? どうしたん?

ソウ:じつは3千円しか持ってないんです……。


そんなに高いと思わなかったから、ちょっとしかお金を持ってきてなかった。ほしいけど、買えない。言ってることが本当だと証明するために、わたしはお財布の中をご店主に見せました。ほんとに3千円しか持ってないんです。ほしいけど、銀行へ行けばお金はあるけど(当時は裕福だった)、3千円以上は出したくない。だからあきらめます。


ご店主はしばらく黙っていましたけれど、ちょっと面白そうな顔になって言いました。


店主:いいよ。

ソウ:え?

店主:3千円でいいよ。ww 持っていきなさい。

ソウ:でも……(およそ3分の1……。値切り交渉としてはエグすぎる……。それに値切る気はなかった……)。

店主:きっとそれがアンタに買ってほしかったんやろ。だからアンタは呼ばれたんや。いいから持っていきなさい。

ソウ:あり……がとうございます……。それではご好意に甘えて……。


キツネにつままれたような顔でわたしは店を後にしました。なんだかよくわからないけど、ほしかったヤツが手に入った。でもなんで??


じつはこの数年後、このミルは人様へあげてしまいました。それがどうしたことか、また舞い戻ってきた。ww これを書いているすぐそばに今日も出戻ってきたミルがあります。そしてデカいガーコちゃんもいます。ww 黄色い長靴だけはどこかへ行ってしまいました。どこへ行ったのかは不明です。誰かにはいてほしくて勝手に出ていったのかなぁ? どうしても思い出せない。そしてけっきょく1回しか履かなかった……。


どうということのないお話ですけれど、不思議なお話です。そしてすべて実話です♪ わたしがエッセイを好きなのは、実際にあったお話だからです。物語ならいくらでもホラを書けるけれど、エッセイは違います。だからエッセイを読むのも書くのも大好きなのです☆


今日の結論:星新一のエッセイも実話だった☆ 疑ってごめんなさいでした! 


・・・・・・・・・・・・・・・・


ここまで書いた時に来訪者が。他のお部屋で水漏れ(ボロアパートなので日常茶飯事)したので排水管を変えるため、うちの台所のお水が夕方まで使えないらしい。お風呂やトイレは使えると言われたのでにこやかに「わかりました♪」ってお返事したのだけれど、ご飯作りはどうすんのよ? 風呂場でやんのか?? ムリだろ!! トイレで作るのか? イヤやし!!


急におなかがすいてきました……。おなかペコペコ……!!

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― 新着の感想 ―
[一言]  作品との出会いに、キュピーンと来るときはあります。  ウェブで一話目読んでて「あ、これ絶対好きなやつ、コミックス全巻買おう」ってなったり。  CD屋さんでかかってて、そのアルバムだけでなく…
[一言] 大阪まで来てくれるなら、吉野家やマクドくらいなら奢りますよw
[良い点] 面白かったです!第6感!
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