25・夢を見た令嬢、困惑する(後)
舞踏会で着るドレスはフェローが用意してくれた。
臨時で雇った侍女に手伝ってもらい、着替える。真っ白なドレスは金色の刺繍が細かく入れられていて、肌の露出は腕くらいだ。更にその上から薄いストールを羽織る。
髪型は三つ編みを緩く巻いてもらい、ドレスと一緒に入っていたモクレンの花を模した飾りを付けた。
支度を終えて再び玄関へ戻ると、すでに着替え終わった両親とハルモニが待っていた。
着飾ったフィーネの姿を見て、三人とも誉めてくれる。
「おお……よく似合っているよ、フィーネ」
「とてもお美しいです」
「本当……天使様みたい!」
喜ばなければならなかったのに、母の言葉で夢の事が頭を過って硬直してしまう。
フィーネの様子がおかしい事に気付き、三人とも怪訝な顔をする。
「流石の貴方でも、その執着心まみれのドレスは引きましたか……」
「ハルモニ君! 違うわよね、フィーネ? 緊張しているの?」
「大丈夫だよ。私達も付いているからね」
「……教えてほしいの。前世の私とフェローは……結ばれたのよね? 幸せに、暮らしたのよね?」
本当はフェローに直接聞きたかったが、この場で誤魔化すのも違う気がする。
フィーネが恐る恐る尋ねると、両親は全く同じタイミングで笑いだした。
「ははは、何を言っているんだ、フィーネ。そうでなければ私達はここにはいないんだぞ」
「確かに一時期大変だった事もあったらしいけど、その後すぐに結婚したって聞いているわ」
「……本当?」
「ええ。天使の一族で圧倒的に多いのが貴方とフェロー様の血族なんですよ。つまり、それだけの子を成したという訳ですね」
「子供……」
「は、ハルモニ君! そんな身も蓋もない……っ」
三人が嘘を吐いているようには見えない。それにハルモニの言う通りなら、前世のフェローと何度も会って子作りをしたということだ。
一度ならまだしも、あの彼が無責任な事をするとは思えない。母の言うように皇太子との問題は解決したのだろう。
ホッとして肩から力が抜けた。フィーネの手を父が取り、玄関の扉を開ける。
「ほら行こう、フィーネ。フェロー様が待ちくたびれてしまうよ」
父と共に邸を出たフィーネは知らない。
扉が閉まった瞬間、ハルモニと母が顔を曇らせたことなど。
「──間一髪、でいいのかしら。まさかこのタイミングで思い出すなんて」
「今日中に決着をつけるつもりですが……どうにも嫌な予感がします。杞憂であればよいのですが」




