序章・令嬢は懺悔室で告白をする
新連載です。
よろしくお願いします。
大地の半分をも占める大国・アンダンティー帝国。
皇都にある学園内に建つ教会の懺悔室。
そこに、一人の少女がいた。
ふわふわとした長い金髪を一つにまとめ、緩い三つ編みにして前に垂らしており、髪と同じ色を宿した瞳は少し垂れていて、おっとりとした印象を与える。
制服を身に着けており、ボタンの色は銀。貴族の色だ。彼女の胸の膨らみは大きく、今にも弾けてしまいそうである。
「──さて。今日は、どういったご用ですか?」
木製の細かい格子の奥から聞こえてくる声は低く、大地のような揺るぎない自信と、どこまでも受け止めてくれる包容力を感じる。
少女は頬を赤らめた。彼女が恋をしているのは火を見るよりも明らかだった。
「……お聞きしたい事があります」
「なんでしょう?」
「その……」
言いにくいのか視線を逸らし、膝の上に置いていた両手をモジモジと動かす。声の主は静かに見守る。
長い沈黙を破り、少女は意を決したように口を開いた。
「……あ……」
「あ?」
「赤ちゃんは恋愛対象に入りますか?!」
少女にとってはもはや愛の告白に等しかったが、相手からの返答はない。
とはいえノーと答えてもいないのだ。もしかしたら良く聞こえなかったのかもしれない。
大人しそうな外見の割りに、少女はかなり前向きだった。
「赤ちゃんは──」
「いや、聞こえている。聞こえているから言わなくていい。──すまないが、質問を変えてほしい」
「質問を……?」
「私は恋愛に年齢は関係ないと思っているが、その質問にイエスとは答えられない」
その声には先程までの揺るぎのなさなど欠片もなくなっていたが、彼女は全く気付いていない。
誤解しないようゆっくりと考えて、前向きな少女はしっかりと理解した。
「分かりました。ありがとうございます、神父様」
「……本当に?」
「はい。貴方様のようなお年の方でも、赤ちゃんに恋をして頂けると分かってホッとしました」
「だからその言い方はあらぬ誤解を招くと言っているんだ、フィーネ嬢」
少女の名はフィーネ。
神父の名はフェロー。
今回は、この二人の昔と今を繋ぐ物語。