表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺戮のケモミミヒーラー  作者: 西院玲璽
48/101

予期せぬ再会

 大砲の照準を定め、《炸裂エクスプロード》を足元に接地した瞬間。たったの二歩で一気に至近距離まで詰められた。


(速―――)


 思わず尻もちを搗く。振り上げられる爪。起爆。振り上げた靴の防御障壁で緊急脱出。

 地面を転がりながら移動し、勢いが緩んだ所で制動を掛けて立ち上がる。

錬功(スピンドル)》にしてはかなりの練度。やはり、実力は達人の域に片脚を突っ込んでいる。


疾風ゲイル》で風を舞い上げ『気』砲身に装填―――

 突如、大気が震える。塵埃じんあいが晴れると敵は無傷。更に、周囲で風が舞い上がる。


「これは………っ」


《天地合一》。あまねく《アニマ》の収斂しゅうれん、その極致ともいえる技。膨大な『気』が彼の魔力によって両腕の手甲へ収束していく。手甲は後ろの煙突から黄金の光を放出していた。

 それは月明かりのない暗夜にあって、まばゆい輝きを放っていた。


「ハアッ!」


 気合一閃。巨大な斬撃の光輝がビルギットを襲う。

斬閃(スラッシュ)》と《切磋シェイヴ》、そして膨大な『気』。三位一体の攻撃に対し砲弾を五連、纏めてぶっ放した。


 相殺。爆発が閃き轟く。余波の風圧に晒され左腕の大砲で庇った。その間、再び足元に《炸裂エクスプロード》を設置。次の奇襲に備えた。

 眼前の爆煙が薄れていく。人影が――――無い。


(どこに行ったの?)


 前後左右、辺りを見渡す。そして影が、降って来た。


「おおおおおおおおっっ!」


 一気呵成いっきかせいに三本爪で斬撃を繰り出してくる。バレットブレードを上空に向かって振り抜き撃発トリガ。爆発が炸裂し、衝撃で後退。着地し駈け出そうとするヴィンセント。そうはさせじと術式を起爆。


 土煙が舞い上がり互いに視界がふさがる。そこを見逃さず大砲を構えて放射。

 褐色の紗幕しゃまくを貫いて弾丸が相手に襲い掛かる。


「くっ」


 顔を顰めながら回避。防戦一方になるヴィンセント。このまま『絶技イクシード』を――


「おおああっ」


 敵は手甲で地面を殴り。《地穿衝ディグドリル》。衝撃がほとばしって一直線にビルギットの足元へ。足が取られそうになるのをバックステップでギリギリ回避。その隙に相手が立て直し、再び斬撃の乱舞。砲口から弾を吐いて迎撃。このままでは膠着こうちゃくするのは必至。

 ならば――


(近付いてやるの)


 術式を設置し起爆。相手に向かって突貫(とっかんn)。禍々(まがまが)しい斬閃(スラッシュ)は砲弾で相殺そうさい。脇構えのバレットブレードを肩口から袈裟懸けさがけ。相手の爪撃そうげきと激突。爆炎が燃え盛り二人は弾き飛ばされた。


 後ろに突き出した義足で無理矢理制動。更に砲身で地面を抉りながら制止を掛ける。

そのまま砲射して吶喊とっかん。しかし跳躍でかわされた。頭上を取るや、虚空を殴って遠当て。


「がっ――」


 《尖楔突ウェッジショット》。首を捻ったが、却ってこめかみに食らってしまう。意識が刈り取られそうになるのを、足で踏ん張り気合で踏み止まる。だが、相手が着地した場所は大砲の内側。ブレードで斬り付けるも、足蹴にされ阻害。疾風の魔眼では間に合わない。

 この時点で、ビルギットに攻め手はない。接近は悪手だった。


(終わっ――――)


 ズン、周囲の空気が軋む。城塞都市の方から、なにかが近付いて来る。二人はその事に気を取られて戦闘を中断していた。

 遠望で目視できたのは、闇夜に浮かび上がる純白の狩衣かりぎぬ。ビルギットには見覚えがあった。


「まさか―――」


 そんな、有り得ない。雲鳥(モア)でどんなに急いでも、二日は掛かる。

 誘拐ゆうかいの決行予定時刻からしても、一時間は経ってない。猛然と跳躍を繰り返して近付いてくる彼は単身だった。


 人質や、それを盾にする魔道士(メイジ)も忍者も居ない。疑問は深まるばかり。

 やがて、シャルディムは二人の前に降り立つ。大人びた風貌ふうぼうから、『精霊化(アストライズ)』を果たしているのが分かる。しかし、大きな尻尾が九つなんて。こんな『精霊化(アストライズ)』は知らない。


「ビルギット。簡単な質問だから即答しろ。お前は、僕の敵か?」


 答えは一つしかない。


「違うの。人質取ってお前と対峙たいじなんて、する訳がない。降ろさせてもらったの」


 そうか、分かった。敵対の意志がないことは理解してもらえたようだ。


(それにしても)


 以前と雰囲気がまるで違う。まとう魔風より放たれる清冽せいれつな空気が異様。どこか霊妙さを感じ、神々しさすら覚えた。


「ほう? この前とは随分と見違えたな『血霧(ブラッドヘイズ)』」

「シェムヘドはどこだ?」


 ヴィンセントを無視してビルギットに質問を重ねるシャルディム。

 そうなると彼が面白くない。不快に顔を歪めた。


「森の中に居るの」


 教えない約束だったが、襲い掛かって反故にしたのは向こう。黙秘してやる義理はない。


「そうか、ありがとう」


 ヴィンセントを気に留める様子もない。異様な雰囲気を醸しているとはいえ、決して侮ってはならない実力者の筈だ。


「俺を無視してんじゃねえよ」


《天地合一》で気を収斂しゅうれんし、臨戦態勢を執るヴィンセント。この時、ビルギットに対し完全に背を向けた。しかし、警戒しているのが分かっているので迂闊うかつに手を出せない。


(さっさと逃げるの)


 敵の興味はシャルディムへと移った。後は乗り捨ててある他の雲鳥(モア)に乗ってこの場を離れるだけ。

 吶喊とっかん。《風迅ブリーズ》で風を舞い上げ、瞬時に抜刀したシャルディムがヴィンセントに肉薄。白刃が大爪と鬩ぎ合い火花が散った。今しかない。ビルギットは駆け出した。


 決して後ろは振り返らず、手綱の付いた一羽に跨るとそれを引き足を駆けさせ、一目散にその場から離脱した。



 シャルは靴に仕込んだ《飛翔(ソアラ)》の術式で間合いを潰すと、飾太刀かざたちで斬り付けた。

 神気に加え《錬功(スピンドル)》で身体能力を引き上げているから、その一撃はかなり重い。

 ヴィンセントが受け止めたそばから苦悶くもんの表情を浮かべていた。


 手元を引き戻して体を切り返し、正面横蹴りで吹き飛ばす。再び《飛翔(ソアラ)》で間詰め。

相手が反撃に転じ爪を振りかざす。魔眼発動、《加速アクセル》。

 その瞬間、思考速度が急加速し時間感覚が引き延ばされ、敵の動きがゆっくりと遅滞しているように見えた。


 中段から脇構えに変化して急制動、避けられた爪が深々と地面に刺さる。大きく円を描く刀身に体重を預け、攻撃を透かしてガラ空きになった頭部目掛けて一閃。当たる寸前、横合いから飾太刀かざたちを殴られて逸らされた。


 脇構えでその余勢を流し旋回してから相手に迫る。前蹴りの奇襲を察知して再び急制動。

 肩に迫るそれを横にズレて逸出。この時、半身になった相手の背後に回った。上段から振り下ろすと相手が急旋回。その際に再び《加速アクセル》で思考の爆発的加速。


 裏拳の《破砕拳パウンドナックル》が側頭部に迫る。腰を落とし身を屈め胴薙ぎを仕掛けた。三本爪で絡め取ろうとするのを回避して振り抜く。シャルの脇腹を蹴りで強襲して来た。

 事前に察知して手元を引き戻す。鍔で迎撃しようとすると膝で受ける算段を見せた。


 片脚になった所で捕縛縄(ホールドロープ)。相手が爪で切り捨てることで起爆。シャルは手袋の《反射(リフレクション)》。で迫り来る爆発を相手に浴びせた。

飛翔(ソアラ)》で跳躍。超至近距離での起爆にも拘らず、致命的な損害は見られない。


 靴に仕込んだ空間固定式の《遮蔽(プリヴェント)》で即席の足場を作り、《隠蔽(カムフラージュ)》の外套で姿を隠し状況を俯瞰ふかん。相手はこちらが頭上に居ることに気付いていない。

 れる。万全を期すために左手に釣り針の付いた手袋をはめ、一足飛びで距離を詰めた。


 斬り上げ。受け止めた方と反対側へ手袋から伸びる釣り針の付いた極細の鋼糸こうしを伸ばし、巻きつけて拘束。再び《加速アクセル》。引き合って膠着こうちゃくしていたのを、力を抜いて引き揚げられながら苦無を袖の下から取り出し、爪を引き戻し蹴りを繰り出そうとする相手の足元に投擲(とうてき)


《影縫い(シャドウバインド)》の術式が発動し敵が硬直。飾太刀かざたちを引いて相手の腹に宛がい、平突きで一気に突き刺した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ