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第2話 マスター フィガロ

 2年後、17歳になった俺は故郷を出た。

 悲劇の日、俺以外の住民は皆等しく殺害されてしまった。 俺は住民の遺体を埋葬し後片付けをし、そこから一人暮らしをした。

 

 自給自足の生活は決して楽なものではなかったが慣れれば楽しいものだった。

 

 2年間気楽に生活をしていた訳ではなく、厳しい修行をしていた。精霊使いになる為。そして、あの日見た『空を飛ぶ道化師クラウン魔物モンスター』を見つけ出すこと。

 襲撃はこの魔物によるためと確信している。


 故郷を出て暫くして魔物を見つけた。虎型の魔物『ウォータイガー』である。


 父との5年間、自身の2年間、計7年間の修行の賜物で俺は並大抵の魔物は一撃で葬れる程の実力を身につけていた。


 「スキル!斬撃強化!」


  斬撃強化とはその名の通り斬撃を強化するスキルである。皮膚の硬い魔物に有効である。

 

  ウォータイガーの隙を突き裏に回り込み、毛並みの美しい首筋目掛け短剣を突きつけ、切り裂いた。辺りに新鮮な血飛沫が飛び散り草木を染める。


  あれから2年経った今でも精霊を召喚出来てはいない。精霊使いを目指してはいるが精霊が使えない精霊使いなどいるのか?と日々自問自答を繰り返している。


  「…はぁ、とりあえず早くアルムス帝国に行かないと。」


  アルムス帝国は俺の故郷より12キロ程離れた場所にある世界最大規模の帝国である。

  俺はそこでパーティに加入しようと考えている。精霊王になるためにまずは仕事をし、名声を高めなければならない。しかし、パーティに加入しなければ依頼が来ることはないのだ。

 

  しかし12キロ歩くのは容易ではなくすぐに日は暮れる。

  仕方が無いので簡単な結界を貼り野宿をすることになった。

 

  俺は毎晩精霊召喚契約の儀を単身で行っている。この7年間欠かさずに。1度も精霊が召喚出来た試しはなかったが夢を諦めることなど出来ず精霊を召喚できる日を夢見て毎日祈りを捧げているのだ。


  朝日が昇り、簡単な食事を済ませると結界を解き出発をした。


  道中出現した魔物はどれも弱く予定していた時間よりも早くアルムス帝国に到着をした。


  世界最大規模とだけあり日が暮れかかっているのにも関わらず、街は賑わいを見せていた。


  道中手に入れた魔物の素材を売り払い手に入れた金貨を使い、粗悪な宿を取った。

 

  「…パーティ入れるかな…。」


  身体能力に関しては並大抵の冒険者よりは秀でているとは自負していたが、精霊を使えない精霊使いが本職の剣士、魔法使いと対等に戦えるとは思えなかった。

  遠路はるばる来たのが無駄になるのではと一抹の不安が頭をよぎる。


  歴史の重みを感じる俺の背丈の3倍はある門を叩き、中に入っていった。


  「いらっしゃいませ〜!」


  眼鏡を掛けた受付の女性が元気よく声を掛けてきた。


  「あの、パーティに入りたいのだが。」


  「それでは、まずは冒険者登録をしていただく必要があります!貴方様のお名前、年齢、職業などを教えてください!」


  「名前はフィガロ・フォト。年齢は17。……職業は…精霊使い。」


  「フィガロさん。職業は精霊使いですね!ご自身が契約されている精霊のランクとお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


  「…まだ、精霊と契約できていない。それではパーティに入れないだろうか…?」

 

  「…入れない。ということは無いとは思いますが…少し探してみますね。」


  やはり、精霊を使えない精霊使いなどいてはならないのだ。


  「あっ!ここなんかどうでしょう!パーティメンバーは3人。剣士1名、魔法使い1名、僧侶1名です!」


  王道なパーティだ。だが、"精霊使えない"が入ってもいいのだろうか。


  「あ、あの。そんなとこに俺なんかが入ってもいいのか?」


  「えぇ!パーティの皆さんもまだスキル1つも使えませんから!」


  なるほど。俺のような余り物が集まる場所か。


  「わかった。パーティメンバーに逢いに行く。」


  受付の女性から教えてもらった場所はギルドから少しばかり離れた酒場だった。


  「ここみたいだな。」


  正直、入れてもらえるとは思っていない。魔法使いが魔法を使えないということはよくある事なのだ。だが、精霊使いが精霊を使えないことは極めて稀である。精霊使いという職業は遺伝性が強いためである。

 


  「…スキル1つでも使えるようになったー?」


  長髪の杖を手にした若い女性が、剣を携えた面のいい男に問いかける。


  「それが…全然!ほんっとダメダメだよー!」


  「私も僧侶であるのにも関わらず回復魔法も初級レベルのものしか使えません。」


  修道僧のような見た目の華奢な女性がボヤく。


  「あ、あの。」


  「ん?」


  「パーティ参加希望のフィガロだ。」


  「…。なんでうちなんかに?」


  「…それは、俺精霊使いなんだが精霊を召喚すらできていないんだ。」


  「なるほど!それでうちに!」


  「だが、わりいな。俺らはもう冒険者を辞めるんだ。」


  「え?」


  「ずっと前から話していたのです。3人ともそれぞれの職業のスキルを全くと言っていいほど使えません。この先進歩が無かったら3人とも別々の道を進もう…と。」


  「あたしはまぁ家の美容室でも継ぐかなー。」


  「すまねぇな。俺らなりに頑張って来たつもりではいたが、現実は甘くねぇんだ。」


  3人とも自信に言い聞かせるようにそう言った。


  「そうか…。すまなかったな。」


  そう言い残し、俺は店を出た。


  リーダーと見られる男の言葉が目まぐるしく頭を駆け巡る。


  「現実は甘くねぇ。か。」


  「キャァァァァァアッ!!!!」


  近くで女性の悲鳴が響き渡る。

  声のする方に目をやると強盗と見られる男が女物のバッグを手にこちらに向かい走ってきた。

  俺は咄嗟に男を止めようとしたが、男はスキル "影縫い"を使い俺を攻撃してきた。


  「どけぇ!!ガキがぁ!」


  腹部に強烈な刺激が加わり、俺は崩れ落ちた。

  呼吸が出来ない。血が止まらない。死ぬのか?こんなところで。


  【マスター フィガロの危険を確認。直ちに回復魔法を施します。】


  目の前に神々しく輝く女神のような美しさの女性が現れた。


  「…俺も…幻覚が…見えてしまったのか…。」


  【幻覚ではありません。私はマスターの契約精霊。名はイリス。】


  契約精霊?俺は精霊を召喚すら出来なかったんだぞ。


  【私の存在は大多数の人間には知覚できません。マスターが私と契約した際のマスターの精神力では私を顕現させるには至らなかったのです。しかし、今のマスターの精神力は昔とは比べられない程に強大なものです。】


  強盗により切り裂かれた血肉が再生していき、痛みが引いていく。


  「俺は…精霊使いの才能なんてないと…」


  【なるのでしょ?精霊王。マスター フィガロ。私と目指しましょう。】


フィガロ ・・・契約精霊 イリス

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