ムパリさんに驚きました
テーブルの上には、フワフワと湯気の立つグラタン四つと、柔らかそうな白いパンが入ったバスケットが置かれていた。それらはダイヤのように輝いて見えて、目線が吸い寄せられる。ネメアは口の中でよだれが溢れだし、それをごくりと飲み込んで席に着いた。
向かいに座るムパリは、ネメアとクレタが着席すると、食事をするよう促した。
「二人とも、どうぞ召し上がれ」
「はい! いただきます!」
元気よく返事をして、ネメアはスプーンを手に取り、グラタンを掬った。上にたっぷりとかかったチーズが伸びて、皿の端から落ちそうになる。慌ててそれを絡めとると、彼は息を吹き掛けることも忘れてぱくりと頬張った。
濃厚なチーズの旨味とホワイトソースの優しい甘味がほどけて、口内が幸せで満ちていく。舌を火傷してしまいそうなほどアツアツだったが、そんなことは気にならないぐらい美味しい。噛み締めると、柔らかいマカロニと共に何かがほぐれた。鮭が入っていたようだ。鮭の身はホクホクしていて食べ応えがあり、噛めば噛むほど塩気をまとった旨い汁が滲み出てくる。
ムパリの料理に感動し、彼は大きな声で彼女を褒め称えた。
「このグラタンすっごく美味しい!! 毎日でも食べたいぐらいです。ムパリさんはめちゃくちゃ料理が上手ですね」
「ウフフ、ありがとうネメアさん! そうやって素直に誉めてもらえるの、とっても嬉しいな」
称賛を受けた彼女は、花が咲き誇ったような笑みを浮かべた。その顔があまりにも可愛らしくて、ネメアは思わずポッと顔が赤くなってしまう。その様子を見て、彼女の隣に座るパトスは、密かに眉を潜めた。彼も一口グラタンを食べて、感想を告げる。
「今日もムパリの手料理は美味しいな」
パトスが喋った事にムパリは驚いた。
「えっ、突然どうしたの? いつも食事中は黙々と食べてるのに」
最初は驚きの感情が勝っていたが、いつもは何も言わない旦那に褒められたのがじわじわと嬉しくなってムパリは桃色に頬を染めた。
「んふふ、パトスもありがと」
夫婦の馴れ合いを間近で見せられたネメアは、ムパリさんは絶対に他の男を好きにならないだろうなと、少し落胆した。二人には末長く幸せでいてもらおうと気持ちを改め、邪心を振り払う。
夕食の時間が終わると、パトスは傷が付いた鍋を直しに行き、ネメアとクレタとムパリは、明日から始める稽古のことについて話し合った。
その結果、早朝にこの町をランニングで一周し、休憩を挟んだらムパリと戦って、昼食の後はクレタに武術を習い、その後は自主学習する、という内容に決まった。
ムパリと戦うと言うことで、ネメアは彼女のステータスについて聞いてみた。
「ムパリさんのステータスってどんな感じなんですか?」
「あたしのステータス? えっと、どうだったっけ? あたし、ステータスカードができてすぐの頃に冒険者をやめちゃったから、覚えてないんだよね」
「ステータスカードができてすぐの頃? 前はステータスカードがなかったんですか?」
「うん。昔はステータスとか関係なしに、手当たり次第に魔物を倒しにいってたんだよ。でも、それは危険じゃないかってことになって、ステータスカードが作られたんだ」
「へー、そうだったんですね。でもきっと、全てのステータスがマックスで、どれか一つは200までいってたんじゃないですか?」
「アハハ、そうかも。もしかしてネメアさん、あたしと戦う事が不安なの?」
「はい。だってムパリさんはクレタさんの元仲間ですし、絶対強いじゃないですか」
「大丈夫。あたしからはネメアさんに一切攻撃しないよ。ネメアさんが、飛び回るあたしに攻撃して」
「飛び回る?」
ネメアは大きく首を傾げた。逃げ回るなら分かるが、飛び回るとはどういうことだろうか?
「あ、そういえば言ってなかったね。あたし、鳥の獣人なの」
「えーーーーーー!?」
ムパリの衝撃の告白に、ネメアは思わず叫んだ。彼の声は家中に響き渡った。
今回から、主な更新日を火曜日から木曜日に変更します。




