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言い回しが最低です!

 クラーケンに止めを刺したネメアは、倒れていくそいつの身体ごと、海に落ちそうになった。彼は左目を突いている如意棒にぶら下がると、グルングルン回転し、十分に勢いがついた所で飛び上がった。


 木の根を召喚する魔法の呪文を唱え、自分の腹部にそれを巻き付けると、先端を船の手すりと繋げた。木の根を掴んで船の胴体を蹴り上げながら、彼は甲板に戻った。


 一方クレタは、ネメアを投げ飛ばした後、クラーケンの目の下の皮膚にしがみついていた。ヌルヌル滑って下に落ちてしまいそうだが、爪を立てて食い込ませ、握りつぶしそうなほど強く皮膚を掴んでいた。


 ネメアがクラーケンを倒し、甲板に戻ったのを確認すると、クレタはジャンプして如意棒にぶら下がり、後ろ向きに回転した。足が宙へ浮くと、手で如意棒を強く押し、弾みを着けて起き上がると、如意棒を蹴ってそいつの頭の上に飛び乗った。


 頭上で如意棒を引き抜き、「縮め如意棒」と唱えて30センチの長さにすると、彼女はそれを胸の谷間に挟んで、そこから飛び上がった。甲板に着地すると、ネメアに話しかけた。


「ネメアちゃんお疲れ様! 見事な一撃だったわよ。はいこれ、如意棒を回収してきたわ」


「ありがとうございます。って、なんて所から取り出してるんですか!?」


 クレタが大きな胸の隙間から如意棒を取り出したのを見て、ネメアはギョッ目を見開き後ずさった。クラーケンの体表にしがみついてヌルヌルのツヤツヤになっていたため、余計に如何わしい。


「ほら、受け取って。貴方の如意棒」


「ギャー!! 最低!! 最低ですよクレタさん!!」


 世界一最悪な言い回しで如意棒を腕にグイグイ押し付けられ、彼は顔を真っ赤に噴火させて悲鳴を上げた。彼女の手から早急に如意棒を取り上げると、ズボンのポケットに突っ込んだ。


「クレタさんはどうしてそう、恥ずかしいことを軽々と言えるんですか? 聞かされるこっちの身にもなってください!」


「ウフフ、ネメアちゃんって本当にからかいがいがあるわね」


 眉を吊り上げて抗議する彼に対し、彼女は悪びれる様子を見せず、楽しそうに笑った。


 茶番はここまでにして、二人は四人の船員とルーゴの様子を見に行った。ルーゴと老人の船員は無傷だったものの、クラーケンのパンチを食らってしまった三人の船員は、腕にかすり傷を負っていた。


 ネメアが彼らに回復魔法をかけて傷を治すと、その内のテストで帆柱に登っていた船員が、代表して礼を伝えてきた。


「傷が綺麗さっぱりなくなったし、体が軽くなった気がして最高だよ。それから、君が召喚してくれた盾のおかげで、わしらは重症を負わずに済んだ。本当にありがとう、ネメアくん」


「いえいえ。こちらこそ、皆さんが弓矢でクラーケンの気を反らしてくれたおかげで、とても助かりました。ありがとうございます」


 逆にお礼を返してきたネメアの真摯な対応に、船員達は顔を綻ばせる。


 空高く昇った太陽が、クラーケンに勝利したことを称えるように、明るく皆を照らした。この日はもう、魔物が現れる事はなかった。

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