表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/180

一人でどうにかしないといけません

 左手と両足をクラーケンの脚に回して、全身でしがみつくと、ネメアは右腕を伸ばしてクレタに呼びかけた。


「クレタさん、如意棒をこちらに投げてください」


「えぇ、分かったわ。私もクラーケンの体に飛び移るから、一緒に攻めましょう」


 彼女は大きく頷くと、甲板に取り残された如意棒を拾い上げ、槍投げのように投げて彼に渡し、再びクラーケンの頭上へ飛び乗った。


 如意棒を受け取ったネメアは、掴んでいる脚をめくり上げて、顔の大きさほどもある吸盤に貼り付けた。それがパタンと倒れて、クラーケンの頭上に立て掛かる。


 彼は脚をよじ登り、如意棒へ腕と足首を絡めると、芋虫のように腰を曲げ伸ばして頭上へ進んだ。


 彼の移動が邪魔されないよう、甲板にいるルーゴと船員達は、途切れること無く矢を射ち続け、クラーケンの意識を反らした。クレタもまた、下手に刺激を与えないよう、何もせずに座って待っていた。


 クラーケンの頭の天辺に辿り着くと、彼は吸盤から如意棒を引き剥がし、「縮め如意棒」と唱えて、160センチの長さに変えた。それからクレタの方を見て、作戦を聞いた。


「どうやってクラーケンに攻撃しますか?」


「ネメアちゃんは、頭を如意棒で突いて。私は、暴れるクラーケンの足を押さえつけるわ」


「了解です!」


 ネメアはさっそく、縦向きで如意棒を持ち上げて、先端を強く叩きつけた。だが、クラーケンの皮膚は分厚く、そして弾力性があり、ボヨンと攻撃を跳ね返されてしまった。その衝撃で、彼は尻餅をついてしまう。


 頭を突かれたクラーケンは苛立ち、脚を海面にバシャンバシャンと打ち付け始めた。クレタは暴れている脚の一本に飛び膝蹴りを喰らわせて、動きを鎮めると、その隣の脚目掛けて跳躍し、また飛び膝蹴りを食らわせた。


 彼女は左側から順に脚の動きを止めていったが、一番右の脚が持ち上げられ、甲板目掛けてパンチが繰り出された。彼女は船員達を助けようと飛び上がるが、右から二番目の脚が彼女の背後からニュルッと現れ、腹に巻き付けられてしまい、身動きが取れなくなる。


 船員達を狙ったパンチの威力は凄まじく、ネメアが四方に召喚した盾は全て木っ端微塵になり、彼らは2メートル後ろへ吹き飛ばされてしまった。


 この間、ネメアはクラーケンの頭上から振り落とされないようにするので精一杯であり、船員達を助けに行くことも、クレタの援護をすることもできなかった。頭上で這いつくばりながら、ただ状況が悪くなっていくのを見届けることしかできなかった彼は、自分の無力さを嘆いた。

 

 今度こそは、仲間の足を引っ張らないようにしようと決めたのに! ネメアは拳を握って唇を噛んだ。口の中に苦さが広がっていく。


 だが、悔やんでいても仕方がない。なんとかして、この状況を打破しなければならない。まずは何をするべきか、彼は頭の中で整理した。


 クラーケンがいつ、また船にパンチを繰り出すか分からないので、船員達の周りに盾を召喚し直す必要がある。呪文を唱える際には時間がかかるので、誰かに時間稼ぎをしてもらわなければならない。


 主戦力であり、時間稼ぎをしてくれそうなクレタは、拘束されている。彼女の拘束を解くために攻撃を仕掛けたら、クラーケンが暴れだしてしまうだろう。


 ならばクレタの手を借りずに、自分で時間稼ぎをしながら、盾を召喚すれば良いのだ。クラーケンの意識が自分に向けられていれば、その内に彼女が自力で拘束を解くこともできる。


 心の内から、「俺なんかにそんな器用な事ができるのか?」と問いかける声が聞こえてきた。それに対して、「できるできないじゃなくて、やるしかないんだ」と返し、ネメアは決心を固めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ