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お説教します

 ネメアの耳にクレタの密かな呟きは届いておらず、今度は彼が、彼女にされたのと同じ質問をした。


「あの、クレタさんはどうして冒険者になったんですか?」


「私は、そうね……」


 彼女は口ごもり、顎に手を当てて思案し始めた。彼はどんな答えが返ってくるのだろうかと、ドキドキして待った。


 クレタさんとパーティーを組んでからしばらく経つけれど、まだまだ知らないことが多い。全てのステータスがマックスで、身体能力については200もあるし、元仲間の人達もとても強い。どうしてそんなに強くなれたのか、どんな人生を送ってきたのか、気になることが沢山ある。


 クレタが再び口を開く事を期待して、ネメアは胸を高鳴らせていた。しかしその時、寝ていた双子が同じタイミングで起き上がったので、話は切り上げられてしまった。


「あら、双子ちゃんが起きたわ。この話はまた今度にしましょう」


「えっ……分かりました」


 クレタが冒険者になった理由を知りたくてワクワクしていたので、話が中断されてしまい、ネメアは内心とても残念に思った。だが、彼女の話を聞くことはいつでもできる。今の最優先事項は、このやんちゃが過ぎる双子に、二度とこんなことをしないようお説教することだ。


 意識を浮上させた双子は、辺りをキョロキョロと見回し、ネメアとクレタを見つけると、サァァと顔を青くした。


「どうしよう! 護衛の人達に見つかっちゃった!」


「どうしよう! 怒られちゃうかも!」


「えぇ。これからたっぷりとお説教してあげるわ。貴方達、自分がどれだけ大変な事をしたか分かってる?」


 怯える双子に、クレタは問いかけた。彼女達はプルプル震えながら顔を見合わせているが、何が悪かったのか理解していないようだ。ネメアは、彼女達にそれを気付かせるため、セイレーンに操られていた時の状況を話した。


「君達はセイレーンの歌声を聞いた後、海に飛び込んで意識を失っていたんだ。そして、セイレーンに海の底へ連れていかれそうになっていたんだよ。人間が海の底へ行ったら、どうなるか分かるよね」


「「死んじゃうってこと?」」


「そうだよ。君達はまだ、死にたくないだろう? それに、君達が死んだら家族が悲しむよ。家族を失うことは、とても辛いことなんだ。だから、自分からわざわざ魔物に近づくなんてこと、もう二度としちゃだめだ」


「そうよ。もしもネメアちゃんが貴方達を助けられなかったら、何もかも失うことになっていたわ。死んだ人間が行き着くのは、真っ暗で何もない、楽しいことなんて一つもない冥界よ。そんなところに行きたくないわよね」


「昼間にもいったけどね、どれたけ綺麗な見た目をしていても、魔物は魔物なんだ。君達はセイレーンと仲良くしたいと思っていても、セイレーンは君達のことを食べ物だとしか思っていないんだよ」


 二人の話を聞いている内に、自分達のやってしまったことの恐ろしさを知って、双子は背筋が凍りついた。目に涙を浮かべて、二人に謝罪する。


「「ごめんなさい……」」


「今度からは絶対に、魔物に近づかないでね」


 忠告を聞き入れ、双子は大きく頷いた。彼女達が改心したようすを見て、クレタは立ち上がり、彼女達に手を差し出した。


「さあ立って。今度はお母さんへ謝りにいくわよ」


 双子は大人しく手を取って立ち上がった。


「じゃあ私は、この子達と一緒に母親の元へ行ってくるわ。ネメアちゃんはここで待機してていわよ


「はい、お願いします」


 ネメアが返事をすると、クレタは双子を連れて客室へと入っていった。十分後、彼女は泣き腫らして目を赤くした双子と、その母親を連れて戻ってきた。母親は、ネメアに謝罪と感謝を述べた。


「私の子供達がご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございませんでした。そして、子供達を助けていただいて、本当にありがとうございました」


「いえいえ、これが俺達の仕事ですから。助けられて本当に良かったです。大変な事だと思いますが、どうかその子達から目を離さないよう、お願いします」


「はい、これからはもっと気を配るようにします」


 母親の謝罪と感謝が終わった後は、双子が彼に感謝の言葉を送った。


「「お兄さん、助けてくれてありがとう」」


「君達が無事なら何よりだよ」


 ネメアはにこりと微笑んだ。双子と母親は再度お礼を言って、客室に戻っていった。

一編につき10話ぐらいで終わるようにしていましたが、大海原編はまだ続きます。続きもお楽しみください。

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