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フライフィッシュと戦います

 乗客を避難させ終わると、ネメアはクレタのいる船首へ向かった。


「クレタさん、乗客を避難させ終わりました! フライフィッシュは来てますか!?」


 そう言いながら、ネメアはズボンのポケットにしまっていた如意棒を取り出す。


「えぇ、こっちに迫ってきているわ」


 クレタは真っ直ぐ指を指した。西日に照らされてキラリと光る何かが、水飛沫を上げて船に向かってきている。30匹はいるだろうか。


 フライフィッシュが迫り来る中、二人の元に武器を持った船員達が駆けつけた。真っ白な長い髭をたくわえた、老人の船員が二人に尋ねる。


「何があったんだね!? 魔物が来たのか?」


「えぇ、フライフィッシュが来てるわ。誰か、船長に船の進行方向をずらすよう伝えてきて」


 クレタが問いに答えると、テストの時、最初に彼女に的を割られた一番若い船員が、操舵室に向かった。残った三人の船員達は、各々が持つ武器を構えた。


 バシャバシャと音を立てて、飛び上がったフライフィッシュの群れが、一斉に船へ飛び込んできた。


 ネメアは、如意棒を160センチまで伸ばして、横向きに大きく振った。五匹のフライフィッシュに命中し、そいつらの鋭く尖った刃が、如意棒に突き刺さる。彼は縦に如意棒を振って、そいつらを床に叩きつけた。


 大きなダメージを受けた五匹のフライフィッシュは、甲板で力無く跳ねている。彼は如意棒で素早く腹を突き、絶命させていった。


 船員達は、槍やトライデントを投げ、一匹ずつ的確に仕留めた。だが、投げた武器を回収しにいく間、大きな隙ができてしまう。しかし、武器を回収しに行く間、誰もフライフィッシュの刃に当たらなかった。


 それは、クレタが風のように飛び回り、船員を狙うフライフィッシュに蹴りや手刀を食らわせていたおかげである。彼女はほんの二秒で七匹も倒した。

 

 ネメア達の攻撃から逃れたフライフィッシュは、甲板に着地した後、ヒレで身をよじって方向転換し、再び跳び跳ねて攻撃してきた。彼らからすると、背後から攻撃されているのである。


 それにいち早く気づいたネメアは、如意棒を後ろに回して、グルグル回転させた。彼に攻撃を仕掛けようとしていた六匹のフライフィッシュが、回転に巻き込まれて撥ね飛ばされる。


 ノールックで攻撃したので、きちんと倒せているか不安になり、彼は辺りを見渡した。撥ね飛ばされたフライフィッシュは微かに身を震わせているが、絶命するのは時間の問題だろう。彼はホッと一息吐いた。


 船員達も、背後からフライフィッシュに狙われたことに気づいたが、ネメアやクレタほど魔物との戦いに慣れていないため、反応が遅れてしまった。

九匹のフライフィッシュが、三人の船員に襲いかかる。


 船長に要件を伝え終わった一番若い船員が、その様子を見て慌てて駆けつけ、手に持っていた槍を投げた。一匹仕留めることができたが、残りの八匹へ攻撃するには到底間に合わない。


 咄嗟にネメアが呪文を唱え、三人の船員達の後ろに盾を召喚した。他人に対して、しかも複数人同時に盾を召喚するのは初めてなので、できるかどうか分からなかったが、無事成功した。魔法のコントロールが得意な彼だからこそ、ぶっつけ本番でできたのだ。


 盾に当たって勢いを失い、甲板に倒れたフライフィッシュを、船員達は槍やトライデントで突き刺した。30匹のフライフィッシュを全て倒しきり、ネメア達は歓声を上げる。


 だが、クレタの顔に笑みは浮かんでいなかった。


「まずいわ、第二陣が来てる」


 彼女の一言に、歓声はピタリと止んだ。みな、慌てて武器を構え直す。


 そのとき、地面がぐらりと揺れて、皆の体がよろけた。船が動いているのだ。アール号は、フライフィッシュの群れの第二陣を回避した。甲板は、再び歓声に沸いたのだった。

 

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