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気づきたくなかったこと

 ファイヤースネークの群れに突撃していったアレスとセレーネは、さっそく硫酸の炎の餌食になった。アレスは左腕を焼かれ、セレーネは右足を焼かれてしまう。二人の甲高い悲鳴が上がった。魔法で水をかけて、硫酸を中和しなければ、皮膚がただれてしまうだろう。


 しかし、魔女のアテネは呪文を唱えることに集中していて、二人を治療しようという気配がない。無数の矢を降らせる魔法は、強力な攻撃であるものの、呪文の詠唱に非常に時間がかかる。ファイヤースネークのように素早い身のこなしができる魔物相手に、詠唱に時間のかかる魔法で戦うのは悪手だ。


 アテネの代わりにキャンサが呪文を唱え、二人の燃えている部位に狙いを定め、ゆっくりと水を流しかけた。エフェクトの炎が消える。少しは痛みがマシになったようで、アレスは二体のファイヤースネークの胴体目掛けて剣を振るい、セレーネは飛びかかってきたそいつの顔を引っかいた。


 二人は反撃することができたものの、戦況は好転していない。ファイヤースネーク達は、砂に潜ったり身をよじったりして、続けざまに食らわせようとした攻撃を軽々かわしている。アレスの長剣の振りは、動作が遅いためなかなか当たらず、セレーネの引っかきや蹴りも、体をかすめることしかできていない。


 戦いながらアレスとセレーネは、誰かがファイヤースネークを惹きつけている必要があると感じた。お互い、どちらかが囮をやってくれるだろうと期待していたが、どちらもその役は買って出なかった。なぜなら、いつもはネメアが囮をやっていたため、二人ともやり方を知らないのだ。


 そして二人は、ネメアがパーティーにいた頃の方が、ファイヤースネークに攻撃を当てられていたと気づいてしまった。だが、役立たずだと言って追放した手前、その事実を認めたくなく、考えを心の奥深くに沈めた。


 キャンサは支援として、彼らの背後に忍び寄ったファイヤースネークに火の玉を当てたり、二人の死角から放たれた硫酸の炎を、盾を召喚して防いでやったりした。そして密かに、自分とアテネに認識阻害の魔法をかけて、そいつらに狙われないようにしていた。


 認識阻害の魔法は、魔法をかけた者が魔物の視界から消える魔法だ。気配や音を消すことはできない。しかし、それでも強力な魔法であることに変わりないだろう。習得するのは非常に難しくて、魔力のステータスが80以上なければ、呪文を唱えても発動できないのだ。


 だが、せっかくのキャンサの認識阻害の魔法も、アテネが呪文を唱え終えた事によって、台無しになった。アレスとセレーネが、ファイヤースネークの群れから急いで離れていき、キャンサが何事だろうと思っていると、空から無数の矢が、群れ目掛けて降り注いだ。


 キャンサは即座にまずいと感じ、走ってアテネから距離を取った。アテネが彼女の不審な行動を目にして首を傾げていると、十体のファイヤースネークは、矢に当たる前に砂へ潜り込んで、一斉にアテネのいるところへ移動を始めた。


 強力な魔法を使うと、術者は体から魔力を発する。それでファイヤースネーク達は、アテネの存在を察知してしまったのだ。砂から飛び出した十体が、彼女に襲い掛かる。巨大な炎が彼女の身を焦がした。


 ファイヤースネークが攻撃する前に、キャンサがアテネの周囲に盾を召喚していたため、硫酸で体がドロドロに溶けることは回避できた。アテネは恐怖で甲高い悲鳴を上げながら、ファイヤースネークの群れから逃げ出す。


 アレス達は、こんな状況でファイヤースネーク討伐の依頼は達成できないだろうと感じ、一時撤退した。

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