新しい武器を買います
ネメアのステータスを確認したエリュマは、本題に移り、彼に適切な武器は何か考え始めた。
「ネメアさんは今、身体能力のステータスは伸びしろがあって、素早さのステータスが一番高い。そうなると、重い武器はまず除外ね。素早さを殺してしまうし、変に体を痛めて、身体能力のステータスが上がりにくくなる可能性がある。
遠距離系の武器もなし。魔力のステータスがこれだけあれば必要ないわ。前にネメアさんが使っていた短剣と同じく、近距離系の武器が良さそうね。
また短剣を使ってもいいだろうけど、ステータスを上昇させるには、扱いに技術が必要な武器の方がいいかも。鎌、槍、トライデント、鞭……そうだ!」
彼女は何かを思いつき、店内の武器が陳列するコーナーへと走っていった。そして5秒も経たない内に戻ってきて、ネメアに武器を差し出した。
「これなんてどうかしら? 東方の国から仕入れた、如意棒っていう武器なんだけど」
如意棒は、両端が金色に塗られた、30センチほどの長さの赤い棒だった。ネメアは狐につままれたような気分でそれを受け取り、しげしげと眺めた。
「これでどうやって戦うんですか? ただの棒のように見えるんですが……」
「一旦その棒を持って、外に出ましょう。使い方を教えるわ」
エリュマはネメアの手を引いて、店の外へ出た。
「ネメアさん、『伸びろ、如意棒!』って唱えてみて」
「分かりました。伸びろ、如意棒!」
ネメアが叫ぶと、右手に持っていた如意棒がビシッと長くなり、一瞬で160センチもの長さになった。それを見て、彼は飛び跳ねた。
「わっ、長くなった! ケネイアさんに貸してもらった剣と同じだ!」
彼の言葉を聞いて、今度はエリュマが驚いた。
「ケネイアに会ったの!? 彼女、元気にしてた?」
「はい。俺達、ゴーレムの討伐に行ったんですけど、その時共闘したんです」
「ゴーレム討伐!? クレタは随分と無茶なことをさせるのね。大変だったでしょう?」
心配そうな顔で彼女に尋ねられると、彼は下を向いて「うーん」と考えた後、首を横に振った。
「確かに大変でしたが、クレタさんとケネイアさんがサポートしてくれたので、無事に討伐できました。それに、クレタさんは確かに無茶ばかり言いますが、俺の力を信じてくれているんです。俺はそれが嬉しいです」
彼の返答を聞いて、彼女は息を呑んだ。数秒間、時が止まったかのような沈黙が流れる。そして唐突に、彼女は破顔した。
「アハッ、フフフ、ネメアさんって、何だか私と似てるわね。私も、クレタのそういう所に救われたの。私が冒険者をしていた頃に就いてた司令塔っていう役職は、直接魔物と戦えないから、必要としてくれる人がいなかった。そんな時、クレタが私を拾ってくれたの」
「へー。エリュマさんも、クレタさんに拾われたんですね」
「そうなの。あっ、如意棒の使い方を教えるつもりだったのに、話が逸れちゃったわね」
ネメアに親近感を抱き、つい自分語りをしてしまった事を恥ずかしがって、エリュマは頬を赤くした。ゴホンと咳払いし、如意棒の使い方を教え始める。
「如意棒は、槍のように先端で敵を突いたり、振り回して周囲の敵を薙ぎ払ったりできるわ。しなりがあるから、高跳び棒みたいに軽い谷間を飛び越えることもできるのよ。縮めたい時は、『縮め、如意棒!』って唱えればいいわ」
「なるほど。一つの武器で色々なことができるなんて、面白いですね。俺、これ買います」
「了解よ。お買い上げ、ありがとうございます。代金の支払いは、クレタと同じタイミングでいいかしら?」
「はい、いいですよ」
ネメアが如意棒を縮めると、二人は店内へ戻った。




