武器を失くしました
自分自身も視界が悪くなってしまうが、まずは魔法で風を起こし、砂を舞い上がらせよう。ネメアは頭の中で、小さな竜巻を発生させる呪文を唱え始めた。この魔法の詠唱には20秒かかる。それまで、ファイヤースネークの攻撃から身を守らなければならない。
ファイヤースネークがネメアの背後に回って、硫酸の炎を吹き付けた。彼は体を横に反らして回避するも、盾の右半分が溶けてしまう。空いた穴目掛けてそいつは飛び込み、彼の左腕に巻き付こうとした。
振り返って、彼は短剣でそいつを振り払った。地面にボトンと落ちたそいつは、砂の中へ潜り込む。脱皮した時、クレタが巻き付けた蔓が外れてしまったので、どこにいるのか分からない。奇襲するつもりだろうか。
ネメアはその場から走り出した。こちらから地中にいるファイヤースネークの姿は見えないが、あちらもまた、地上にいるこちらの姿を見ることはできないだろう。今まで奇襲された時は、その場にとどまっていたから、攻撃が当たってしまったのだ。
ファイヤースネークが、彼のいない明後日の方向から飛び出てきた。戸惑って、辺りを見回している。ちょうど呪文が唱え終わって、彼はそいつの真下で竜巻を発生させた。
竜巻によってそいつの体が打ち上げられる事を期待したが、さすがに体が重くて無理だった。ただ、激しく砂ぼこりが舞う中、動きを止めているのが微かに確認できる。
砂嵐が弱まってきた頃を見計らい、ネメアは短剣を投げた。ファイヤースネークは攻撃を回避できず、腹に深々と短剣が突き刺さる。切り口から炎が上がって、鎮火しようと暴れ出したが、短剣が抜けないため、それは叶わなかった。
そいつに駆け寄り、腹に刺さったナイフを一度抜くと、手早く喉元を切り裂いた。目を見開き、カアッと口を開ける。絶命したかに思えたが、脱皮して炎から逃れると、彼の右腕に巻き付いた。ボキッと嫌な音がして、激痛が走る。
「アガッ!!」
右手から力が抜けて、短剣が抜け落ちた。ファイヤースネークは短剣の柄を咥えると、砂の中に潜り込んでしまった。
ひとまず、回復魔法で右腕の骨折を治す。武器を失ったのは大きな痛手だ。背筋につぅと冷たい汗が流れる。だが、すぐに首を横に振って焦りを搔き消した。
大丈夫、自分は短剣以外にも攻撃手段がある。それに、喉を切り裂いたから、ファイヤースネークは硫酸の炎を吐けなくなった。魔法は呪文を唱えている間に攻撃を受けてしまうから、武術で戦うことにしよう。
腰を低く落とし、注意深く砂地に目を凝らして、ネメアはファイヤースネークが出てくるのを待った。数秒後、足元がボコッと浮き上がり、即座にジャンプした。砂から出てきたそいつは、締め付け攻撃をしようとしていたようだが、彼に届かず落下する。
砂地に落ちたファイヤースネークに、ネメアの体重がのし掛かった。ビチビチと跳ねて彼を退かそうともがき始めるが、身体を蹴り上げられ、とどめの膝蹴りをくらい、とうとうそいつは絶命した。
追記:竜巻を発生させる魔法の詠唱にかかる時間を、5秒から20秒に変えました。




