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やるっきゃありません

 外に出ている蔓が、真っ直ぐネメアの方へ向かっている。彼はそれに気がつき、短剣の柄を握りしめた。


 ファイヤースネークが彼の目の前に飛び出て、口から硫酸を吹き付ける。前方の盾は溶かされたが、今度は攻撃に怯まず、すぐさま別の方向の盾を前に出し、そいつの喉元目掛けて刃を振るった。


 攻撃に即座に反応して、ファイヤースネークは身を横に反らし、急所である喉に刃が当たるのを回避した。しかし、僅かながら切り傷がついたため、そこから小さな火が点いた。ビクッと身体を跳ねさせ、勢いよく砂に潜り込み、鎮火する。


 ファイヤースネークに巻き付けられた蔓は、ネメアもクレタもいない方向へ進み出した。それを見て、クレタが走り出す。


「ネメアちゃん、ファイヤースネークが逃げるわ! 追いかけないと!」


「は、はい!」


 クレタの後に続いて、ネメアも走り出した。ファイヤースネークの動きの速さと、砂に足をとられるせいで、二人が全力疾走しても、なかなか追い付くことができない。3分ほど追いかけていると、直径15センチほどの穴がまばらに空いている場所で、蔓がピタッと止まった。


 ファイヤースネークが砂の中でジタバタと暴れた。不審な行動に身構え、ネメアは先ほど溶かされた盾を再び召喚する。案の定、直径15センチの穴から、続々とファイヤースネークが顔を覗かせた。応援を呼ばれてしまったようだ。


 前方に3匹、後方に5匹、計8匹のファイヤースネークが、砂の中から現れた。ネメアは全身鳥肌が立ち、クレタは姿勢を低くしてファイティングポーズをとった。


「逃げましょうよクレタさん、こんなの絶対勝てませんよ……」


 ネメアは絶望して、か細い声でそう言った。だが、クレタは首を横に振った。


「あいつら全匹倒さなきゃいけない訳じゃないんだから、諦めちゃ駄目よ。私が7匹惹き付けるから、ネメアちゃんは蔓を巻き付けた1匹を倒して」


 指示を伝えると、クレタは助走をつけて飛び上がり、八匹のファイヤースネークがいるど真ん中へ着地した。砂ぼこりが巻き上がり、ファイヤースネーク達が一斉に彼女へ注目を向ける。


 そいつらは、四方八方から彼女に硫酸の炎を浴びせた。だが、彼女の盾はネメアのものより耐久性が高く、なかなか壊れない。


 前方の3匹が硫酸攻撃をやめて飛びかかり、両腕と左足に巻き付いて締め付け攻撃をした。彼女は竜巻のようなスピンジャンプをして、3匹を振り払う。払われた3匹は、ビタンッと地面に叩きつけられた。


 彼女の見事な戦いぶりに勇気付けられ、怯えていたネメアも短剣を構えて戦いの場に入ることを決めた。先ほど彼女が振り飛ばした奴らの中に、蔓を巻き付けた奴がいた。攻撃するなら、今がチャンスだ。


 彼は狙いを定めたファイヤースネークと、バッチリ目が合った。そいつは身体を起こして砂に潜り、彼の方へ向かってくる。その時、別のファイヤースネーク2匹も彼に気がついてしまったが、クレタが両足で尻尾を踏みつけ、足止めした。


「大丈夫、他のファイヤースネークがネメアちゃんの所へ行こうとしたら、私が絶対食い止めるから。ネメアちゃんは、そいつとの戦いに集中して」


 声をかけられ、ネメアは大きく頷いた。


 彼と一歩離れた所から、蔓を巻き付けたファイヤースネークが現れる。今まではいきなり攻撃を仕掛けてきたが、彼に反撃された事により、警戒して距離を取ったようだ。


 前にアレスさん達と4人がかりで戦った時は勝てなかった相手に、俺一人で敵うのかは分からない。正直、怖くて堪らない。それでも、クレタさんが俺を信じて、このファイヤースネークの相手を任せたんだから、やるしかない!


 ネメアは片手で頬を叩き、気合いを入れた。

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