俺はお断りです!
二人が受付カウンターまでくると、係員は糸のように目を細めて、彼らにしか聞こえないような小さな声で話を始めた。
「お二方は、ファイヤースネークという魔物を知っていますか? 名前の通り、火を吹く蛇なんですけど、倒せたと思ったら脱皮して生き返ってしまう、厄介なやつなんです。
それで、通常はAランクパーティーの方にしか、依頼を提供していないんですよ。でもお二方なら、討伐できると思うんです。どうですか、受けてみませんか? 報酬は良いんですよ」
話を聞いて、クレタはフムフムと頷いた。しかしネメアは青ざめて、首を激しく横に振った。
「ムリムリムリムリ!! 無理ですよ!! ファイヤースネークなんて、俺じゃ絶対に敵わないです!! さ、この話はお断りしましょうクレタさん」
「あら、どうして?」
全力で依頼を拒否しているネメアに、クレタはそのわけを尋ねた。
「俺、前にアレスさん達とファイヤースネークの討伐に行ったことがあるんです。他のAランクパーティー向けの魔物に比べて体が小さいから、手始めにそいつを倒そうってことになって。
そしたら、こてんぱんにされたんですよ! みんな大火傷を負って、俺が回復魔法をかけても、しばらく歩けませんでした」
「へー、それは大変だったわね。じゃあリベンジマッチといきましょう。係員さん、私たち、ファイヤースネークの討伐依頼を受けます」
「ちょっと! 話聞いてました!?」
必死の形相で依頼を受けたくない理由を説明したネメアを無視して、クレタは話を進めてしまった。係員は、よりいっそう笑みを深める。
「良かった! それで、ここからが本題なんですけど、ファイヤースネークが脱皮した後の皮を、一枚でもいいので俺にいただけないでしょうか」
係員の要求に、クレタは首を傾げた。
「脱皮した後の皮? それは何に使うんですか? ギルドに提出するのは、ファイヤースネークの牙ですよね」
「あぁ、よく知ってますね。もちろん、それも提出してほしいんですけど、皮は秘薬の材料になるんですよ」
「つまり、薬屋に売るって事ですね」
「…………まあ、そんな所ですかね」
クレタが係員の目的を代弁すると、彼から一瞬笑みが消えた。それからお茶を濁すように頷いた。その態度を怪しく思ったネメアは、まだ何か隠しているのではないかと疑った。だが、問い詰めても係員は答えないだろうと予測して、問いかけの言葉を呑んだ。
ファイヤースネークの討伐依頼を受ける事が決定し、二人は受け付けから立ち去ろうとした。その時、係員が声をかけてきた。
「あ、待ってくださいお二方! 俺の名前を名乗っていませんでした。俺は、ヘス・クレピスです。次にギルドに来た時、名前を呼んでいただけたら、すぐに出てくるんで」
ヘスはペコリと頭を下げた。クレタは彼に向かって微笑み、「分かったわ」と答え、ネメアは何も言わずにぎろりと睨んだ。
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