添い寝はさすがに早すぎます!
夜になり、二人は適当な場所で焚き火を行っていた。湿っぽい地面へ直に腰を下ろしているので、少々お尻が冷たいものの、ネメアは疲労してあまり気にならなかった。
ようやく一息つく事ができると、今度は空腹に襲われた。パチパチと音を立てる炎を見ている内に、ネメアの腹の音がギュル~と鳴る。彼は頬を赤らめ、クレタは優しく微笑んだ。
「そろそろ、ご飯にしましょう。ネメアちゃん、アイテムボックスの中に、何かある?」
言われるがまま、ネメアは首にかけてある四つ葉のペンダントを握りしめ、呪文を唱えた。すると、大きなカバンが彼の横に召喚された。これがアイテムボックスである。アイテムボックスは、中に入れたものを腐らせずに保存しておける便利アイテムだ。
冒険者になり、ある程度依頼を達成できると、国から無料で支給される。ただし普通に持って歩くとかさばるので、魔法でどこか別の場所に封印しておくのが主流だ。
ネメアはアイテムボックスを開き、中身を確認した。しかし、中には食料は入っていなかった。
「すみませんクレタさん。俺は食べ物持ってないです。いきなりこんな事になったから、何も準備してなくて」
「ふーん。ネメアちゃんもしかして、依頼を受けたら買い出しに行く派? 簡単な依頼の時は、食べ物とかあんまり用意していかないんでしょ」
「まぁ、はい」
「駄目よ~、道中何が起こるか分からないんだから、アイテムボックスの中は常にパンパンにしておかないと!」
クレタに軽く叱られて、ネメアは苦笑を返した。
「ははは、できれば俺もそうしておきたかったんですが、俺を追放した人達、ガンガン依頼を受けて、早く最高ランクのSランクパーティーになりたいって感じで、事前に沢山の物を買いに行く暇がなかったんですよ」
「それは大変だったわね。今日はひとまず、私のアイテムボックスから食料を分けてあげる。薬草を見つけてこの森を出たら、買い出しにいきましょ」
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げて、ネメアはペンダントの中にアイテムボックスを封印し直した。今度はクレタが、右耳につけた真珠のピアスからアイテムボックスを召喚し、串に刺さった肉を二つ取り出した。
「鳥の胸肉よ。しっかりたんぱく質を取って、強い体を作らなくちゃね。食べ物もステータスに関わってくるんだから」
「うわー、ちゃんとした肉を食べるの久しぶりです。最近缶詰めばっかりだったんで」
二人は焚き火の火を使って、じっくりと胸肉を炙った。表面がこんがりしてきたら、肉を裂いて、中までしっかり焼けている事を確認する。赤い部分がなくなり、白く湯気が立っていたため、ネメアはそれにかぶりついた。
塩と胡椒の下味がしっかりとついており、ピリッとした辛みがある。弾力のある歯応えで満腹中枢が刺激され、お腹がいっぱいになった。油分も少なくさっぱりしていたため、胃がもたれない。
「ごちそうさまです、クレタさん」
「どういたしまして。ネメアちゃん、寝袋はある?」
「あー、ボロボロになっちゃって、最近廃棄したんです。新しいの買わなきゃなぁって思ってたんですけど、つい忘れてました」
「ウフフ、それなら私の寝袋に、二人で入るしかないかしら」
嬉しそうにクレタがそう言うと、ネメアは顔を真っ赤にし、首をブンブン横に振った。
「そ、それはまだ早いです!!」
「えー、残念ね。でも、実は私も寝袋を持ってないのよ。いつも立って寝てるから。ネメアちゃんも、立って寝れるように、今日は練習してみなさい」
「はい」
内心残念だなぁと思いながら、ネメアは頷いた。
夜も深まり、クレタは火の番を、ネメアは立って寝る練習を始めた。ネメアは木に寄りかかって目を閉じたが、背が地面についていないと落ち着かず、そわそわして寝付けなかった。だが、しばらくすると、彼は小さくイビキをたて始めた。長時間ぶっ通しで歩き続けた事による疲労が、眠気を呼んだのだ。
火の番をしているクレタは、寝ているネメアの様子を時々確認した。彼は見るたびに体勢が崩れ、最終的には地面に仰向けで倒れていたので、面白くて仕方がなかった。




