遭遇しちゃいました 1
翌日。宿屋を出たクレタとネメアは、ケネイアに別れを告げた。
「それじゃあ、私達は冒険者ギルドへ行くから、ここでお別れね、ケネイア」
「色々と助けていただいて、ありがとうございました。あの、勝手な勘違いしちゃってごめんなさい」
「ハハッ、気にしてないからいいよ。こちらこそ、私の住んでいる町を、ゴーレムの危機から救ってくれてありがとう。二人の協力がなければ、あいつを倒す事はできなかった」
ケネイアは、二人に満面の笑みを向けた。
「また機会があれば共闘しよう。私はいつでも、この町の港で絵を描いているから、気軽に訪ねてくれ」
「えぇ」「はい」
二人は声を揃えて返事をした。それから手を振ってケネイアと別れた。
馬車に乗って、ネメアとクレタは冒険者ギルドまで移動した。ギルドに入ると、何やらざわざわとした不穏な空気が流れていた。
「おい! なんでゴーレム討伐の依頼を受けられないんだよ!! 俺達はAランクパーティーだぞ!?」
「そうよそうよ!!」
「ですから、先ほどから何度もお伝えしているように、先にゴーレム討伐へ行かれた方々がいるんですよ。その方々の安否が分かるまで、依頼を提供することはできません」
どうやら、受け付け係と冒険者パーティーとの間で、言い合いになっているようだ。受け付け係の顔を見て、ネメアはハッとする。彼はクレタが交渉して、ゴーレム討伐の報酬の半分を貰うことを約束している係員だ。
さらに、冒険者パーティーの方を見て、ネメアはクレタの背後に隠れた。
長剣を腰に下げた男性に、ローブを着た女性と猫耳の女性。ピンク色の髪を二つ結びにした知らない女性もいるけど、あれは間違いなく、俺を追放したアレスさん達だ…………!
できれば二度と会いたくなかった。お互い冒険者をしているのだから、ギルドに来ればいずれ遭遇してしまう事は分かっていたけれど、いざ目の前に現れると、鳥肌が立ってしまう。無能扱いされた悲しみと怒りを思い出して、ハラワタが煮えくり返りそうだ。
クレタのドレスをちょいちょいと引っ張り、振り向いた彼女にネメアは耳打ちした。
「一度、ギルドを出ましょう。取り込み中みたいですし」
しかし、彼女は首を横に振った。
「出ていく必要なんてないじゃない。私達がゴーレムの心臓を提出すれば、あの冒険者達は大人しくなるわよ」
「そうですけど……」
顔を青くして、ネメアは俯いた。今、受け付けに行ってしまえば、絶対アレスさん達に絡まれる。もう口を聞きたくないし、目も合わせたくない。
一歩一歩後ろに下がり、彼は冒険者ギルドを出ていこうと扉に近づいた。クレタは彼の右腕を掴み、それを引き留める。彼は顔を上げて、じとっと彼女を睨み付けた。
「離してください! クレタさんは気づいてないんですか? あの騒いでいる冒険者パーティーは、俺を追放したアレスさん達ですよ」
「気づいてるわよ。だからこそ、ゴーレムの心臓を提出して、目にもの見せてやるの。あいつらに馬鹿にされたままでいいの?」
「嫌ですけど……今の俺のステータスじゃ、まだまだあの人達を見返せないんです。
剣士のアレスさんは、攻撃力と武器を扱う技術のステータスが80、魔女のアテネさんは、防御力が80、魔力が75で、バーサーカーのセレーネさんは、素早さと身体能力のステータスが80あるんです」
しょんぼりと眉を下げながら、ネメアは彼らの特に高いステータスについてクレタに伝えた。彼女は顎の下に手を当てて、「ふーん」と声を漏らしたかと思えば、にんまりと笑った。
「ねえ貴方達、ゴーレム討伐に行こうとしてるの? 残念だけど、そいつは私達が倒してしまったわ」
大声でそう言いながら、クレタは堂々と前に進み出た。ネメアは頭が真っ白になった。




